子どもを極端に清潔な環境で育てていいのか微生物との付き合いは健康に影響する|マネブ

マネブNEWS:〔2017.12.14〕日テレ「先僕」が描く、学校のリアルな課題「HER 現在の記事数:252855件

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子どもを極端に清潔な環境で育てていいのか微生物との付き合いは健康に影響する


手洗いはもちろん大事ですが…(写真:Ushico / PIXTA)近年の研究で、人間の身体に棲みついている微生物の多くはわたしたちの健康に欠かせない存在であることがわかってきた。その大切なパートナーを「清潔すぎる」環境によって失っていることに警鐘を鳴らす科学者もいる。特に乳幼児の成育過程における過度な除菌や消毒は、子どもたちの生涯の健康に悪影響を及ぼすというから注意が必要だ。ぜんそく、アレルギー、うつ、そしてADHD(注意欠陥・多動性障害)までもが、そうした微生物、とりわけ腸内細菌の貧弱さによってもたらされうることもあることが明らかになっている。ではいったいどこまできれいにすればよいのか?『「きたない子育て」はいいことだらけ!』の著者が答える。

いまの子どもが屋外で過ごす時間は20年前の半分だ。そして8歳から18歳の子どもは、1日平均7時間38分を娯楽メディアで遊ぶか、スクリーンに向かって過ごしている。そして9歳から13歳の子どもで、自発的に外に遊びに行く子は6%しかいない。

イギリスで子どもがケガで救急病院に運ばれる理由としては、木から落ちるよりもベッドから落ちるほうが多いそうだ。わたしたちの体に棲みついている微生物、「マイクロバイオータ」は、わたしたちが接したものや、口にした食物の結果である。世界中のたくさんの子どもたちが、ゲームのコントローラや、コンピュータのキーボードの上で育っているような、屋内に棲む微生物とばかり接触しながら大きくなっていると考えると、本当に心配になってくる。

極端な無菌状態で育てるようになっている

今日の親が、子どもを屋外で自由に遊ばせることを嫌がる大きな理由として、1つには、子どもが土や汚いものを口の中に入れたり、長時間汚れた状態でいたりすると、病気になる可能性があると考えていることがある。

何世代ものあいだ、わたしたちは環境の中の有害な病原体を避け、世界をきれいにしてきた。衛生規範に従うことには子どもの死亡率の著しい減少など、いくつもの利点があることが確かめられている。

しかし西洋社会では、衛生習慣が極端に解釈されてしまっている。「清潔」という概念は「衛生」とは異なり、健康上の効果と必ずしも関連があるわけではなく、むしろ見た目の問題である。清潔であることが、病気の予防の点で、衛生的であることよりも優れているわけではない。

赤ちゃんの世話をする場合、たいていの人は、清潔さについてより神経質になる。これはよくわかる。しかし最近は、清潔にしなくてはと意識するあまり、赤ちゃんを極端な無菌状態で育てるようになっている。清潔にするための技術が発達したこともあって、おむつバッグには必ずといっていいほど除菌用ハンドジェルがぶら下がっているし、おもちゃやおしゃぶりが地面に落ちたら除菌ウェットティッシュで拭いたり、赤ちゃん用の哺乳びんや食器を毎回使う前に殺菌したりするのが普通になっている。

小さな子どもを土や砂で遊ばせないことも多いし、遊ばせたときには、親は土や砂をすぐにきれいにぬぐい取る。小さな子どもはどろんこになりたいという本能に従うことができず、そのせいで、発達には欠かせない微生物と接触できなくなっている。とはいえ、潜在的に健康への脅威となるものと、見た目が汚いだけのものを区別するのはなかなか難しいものだ。

子どもはいつ手を洗えばいいのか。また、どんな種類のせっけんを使ったらよいか。手洗いは間違いなく、感染症にかかったり、それを広げてしまったりするのを防ぐのにいちばんいい衛生習慣だ。手洗いの習慣が定着しているコミュニティがより健康であることはたびたび証明されているし、微生物と接する機会を増やすためだけに手洗いの習慣をやめるべきではない。

そうはいっても、子どもは朝から晩まで手を洗っていなくてもいい。手洗いをするべきタイミングは、食事の前、トイレの後、病気の人に接した後など。その子ども自身が病気であれば、ほかの人に触れる前にも手を洗ったほうがいいだろう。ゴミや、腐っている疑いのある食品、動物のふんや農場の動物に触れた後、多くの人が出入りする場所(公共交通機関やショッピングモール)に行った後にも手を洗わせたほうがいい。

逆に、子どもが手を洗う必要がないのは、外で遊んだ後(すぐに食事をする場合には洗う)、外から家に入ってきた直後、ほかの子どもと遊んだ後(その子が感染症で具合が悪いのでないかぎり)だ。子どもはよく外で遊び、はだしになったり、泥だらけになったりするのも許容できるようになるといい。そうやって遊んだ直後に手洗いは必ずしも必要ではない。ただ、ここに挙げた例がすべてではない。

日常生活で抗菌せっけんが必要になることはない

どんな種類のせっけんを使うかは個人の好み次第ながら、抗菌せっけんは避けることをおすすめしたい。アメリカ食品医薬品局の諮問委員会は、抗菌せっけんには、通常のせっけんと水の組み合わせを上回る効果がないことを明らかにしている。病院や、医療レベルの衛生状態が必要とされる場所を別とすれば、日常生活で抗菌せっけんが必要になることはない。

同じことは消毒液にもいえる。昔ながらの普通のせっけんと水で洗えば十分なので、その代わりとなるような消毒液は(除菌用ハンドジェルもそうだが)きれいな流水とせっけんがない場合にのみ使うほうが望ましい。

このアドバイスは、確かに常識に反しているように思えるし、抗菌成分を含まないせっけんを見つけるのは予想以上に大変だ(液体ハンドソープはほとんどが抗菌成分を含んでいる)。せっけんでよく使われている抗菌剤のトリクロサン(およびその誘導体のトリクロカルバン)は、デオドラントや歯磨き粉、洗剤、化粧品にも含まれる。

トリクロサンは60年ほど前から使われているが、最近の研究ではその副作用と環境有害性が指摘される。トリクロサンは、細菌を殺すばかりでなく、動物のホルモン調節機能を変化させることも明らかになっている。さらに耐性菌発生の一因になっている可能性もある。トリクロサンは、水生生物に対しては有害な化学薬品として分類されており、生物分解されにくいことも知られている。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのような大手メーカーは、2015年までに自社の全製品でトリクロサンの使用をやめると宣言した(この本を書いている時点では、同社はまだトリクロサンの使用中止を確認していない)。トリクロサンは、ヨーロッパでは2010年から使用が禁止されている。カナダ医師会はトリクロサンなどを使った消費者向け抗菌製品の販売禁止を提案しており、アメリカ食品医薬品局も、抗菌せっけんの長期使用に関連するリスクは、その効果を上回る可能性があるとしている。

とはいえ、多くの地域では現在でも、トリクロサンを含むせっけんなどは人間が使用しても安全な製品として扱われていて、その使用を控えるかどうかは人々の判断に任されている。

赤ちゃんをほかの人に触らせるのは不安?

「他人に自分の赤ちゃんを抱いてもらったり、触らせたりしてもいいか?」という質問も受けることがある。

そうするかどうかは完全に個人の選択の問題であり、自分の赤ちゃんをほかの人に触らせるのを不安と感じるかどうかによる。とはいうものの、これまでの研究では、身体的接触も含めた社会的交流が、微生物コミュニティの多様性を保つための1つの方法であることが明らかになっている。

ある研究で生物学者たちは、アフリカで隣り合って暮らす2つのヒヒの群れから長期にわたり微生物サンプルを採集した。2つの群れは同じ種類のエサを食べていたが、ある重要な行動に違いがあった。

一方の群れは社会的グルーミングを行っていたが、もう一方の群れは行っていなかった。面白いことに、2つの群れのあいだではマイクロバイオータに差があった。さらに、群れの中で微生物を比較すると、互いにグルーミングしていた群れのほうが、していない群れよりも、群れのメンバー同士の微生物コミュニティが似通っていた。

この研究が示しているのは、わたしたちの体で育つ微生物の種類は食事だけで決まるのではなく、身体的接触のような社会的交流にも重要な役割があるということだ。したがって、他人との身体的接触を制限することは、赤ちゃんと周囲の人間との微生物の交換を制限することになる可能性が高いといえる。

それでも赤ちゃんが病気になるのが心配で、他人に自分の赤ちゃんを抱かせたり、触らせたりするのは気が進まないのなら、病気のリスクを大幅に減らす方法がある。

1つ目は、感染症にかかっている人の近くに赤ちゃんを連れて行かないようにすること。そして2つ目は、生まれたばかりの赤ちゃんを抱いたり、触れたりする前には、手を洗うようにみんなに頼むことだ。感染症にかかるのを避けたい気持ちもわかるが、赤ちゃんを他人に触らせることは微生物と接する方法の1つなので、健康な人との身体的接触は、子どもにとって危険ではなく、むしろ有益な効果があるといってもいい。

「自分の子どもが風邪をひいているときには、ほかの子どもにうつさないように家から出さないほうがいいのか?」。これは間違いなく、イエスかノーかで答えられない質問の1つだ。

幼いころに微生物にさらされることで、ぜんそくやアレルギーのようなある種の免疫疾患から保護される可能性があるという説には、しっかりとした証拠がある。しかしながら、大きくなってから免疫疾患にかかるのを防ぐために、病原菌と接触したり、衛生的な習慣をやめたりする必要があることを示す証拠は存在しない。

とはいえ、感染症に一度もかからずに成長することは不可能だ。感染症にかかるのは、人間であること、そして何より子どもであることの証しである。子どもが病気になることを何としてでも防ごうとすれば、病原性のない、さまざまな有用な微生物と子どもが接触するのを妨げるような行動に行き着いてしまう。子どもが風邪だとか、何かほかの小児感染症にかかるのが心配だからといって、過保護にするのは望ましくない。

子どもが風邪をひいたり、感染症にかかったりしないかと何かにつけ心配しないことが重要だが、子どもを病気の運び屋にさせないことも大切だ。子どもの具合が悪い場合には、家で過ごさせ、病気を広げないのがいちばんだ。

鼻水が出ている子と一緒に公園で遊ぶくらいなら、それほどひどい影響はないだろうが、ひどい風邪をひいた子どもや、水疱瘡の子に誕生パーティへ来てもらいたい人などいない。それに、子どもの具合がよくないのなら、家で安静にさせて、素早い回復の機会を与えたほうがいい。

ただし、これらはワクチン接種を受けている前提での話『「きたない子育て」はいいことだらけ!』(プレジデント社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ここまでの話は、大半の人がワクチン接種を受けている西洋社会を前提にしている。

ワクチン接種は、ひどい病気にならない程度に、子どもを有害微生物にさらす人工的な方法だといえる。近ごろの子どもが、天然痘やポリオ、ジフテリアといった生死にかかわる重い感染症にかかるリスクが低いのは、ひとえにワクチンのおかげである。50年前に、子どもを熱のある友だちと遊ばせたら、風邪のウイルスだけでなく、髄膜炎や百日咳、はしかなどの重い感染症などの原因菌にさらしかねなかった。

もしわたしたちが生きているのが、人口の一部しかワクチン接種を受けていない世界だったら、ここでのアドバイスはまったく違っていただろう。もし自分の子どもにワクチン接種をさせないことにしたのなら、その子どもは、生死にかかわる重い感染症にかかる可能性が高くなるだけでなく、その病原体を体内に持ち、ほかの人に広げる可能性も高くなる。その場合、子どもの具合が悪いときは、ほかの子どもとの接触を制限するのが賢明だ。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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