AIは就活生をどこまで「便利」にするのかレコメンドで補助、自己PRもしてくれる時代|マネブ

マネブNEWS:〔2017.10.17〕「今年の新卒は…」とのボヤキはなぜ多いのか20~ 現在の記事数:249446件

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AIは就活生をどこまで「便利」にするのかレコメンドで補助、自己PRもしてくれる時代


自己PRをAIが書いてくれる時代がやってくるかもしれない (写真:kikuo / PIXTA)

就職活動でAIはどのような役割をしているのでしょうか。

クラウドやビッグデータ解析、人工知能(AI)など最先端のIT関連技術を使って人事関連業務を行う、「HR Tech」への関心が高まっています(「HR Tech」は“HR〈Human Resource〉× Technology”を意味する造語)。この流れは、もちろん新卒採用領域にも及んでおり、AIを使ったエントリーシート分析などが、すでに実用化されています。

AIで検索などの作業を減らす

リクルートグループでも、2012年頃から、学生・企業双方に向けた、機械学習やビッグデータを活用した新卒採用や就職関連サービスの開発を、本格化させています。就職情報サイト「リクナビ」をはじめとした、学生向けのサービスのAI活用の歴史や今後の展開を紹介しつつ、AI時代の就職情報サービスの使いこなし方を解説していきます。

開発を始めた2012年頃はリーマンショックの影響で冷え込んだ企業の採用意欲が回復しつつあった時期。学生の就職に対する危機感はまだまだ高いものでした。しかし、いざ就職先を選ぼうと思っても、「企業を知らない」「どう探していいかわからない」という学生が圧倒的多数だったのです。

一方、われわれの中で大きく膨らんでいたのは、「就活の手間」に関する問題意識でした。就活は学生が「自分の未来を考える」機会でもあります。大切なテーマですから、それに費やす時間は、いくらあっても十分とは言えないのかもしれません。

しかし、その限られた時間の多くを、たとえばウェブサイトで企業を検索して、ブックマークもして……といった、作業的な部分に費やしている人が目立っていました。

学生のみなさんには、「自分の未来はどうありたいのか」に、とことん向き合って欲しい。そして、いかにして学生の手間を削減しつつ、1人ひとりの興味・関心に合った企業選択に注力する環境づくりをサポートできるかということが、「リクナビ」サービスを企画するうえでの大きな課題だと考えていました。

当時は学生に選択肢を提案するための手法として、「人との出会いが多い仕事」など、学生が興味・関心を持ちそうな切り口を編集部が考え、該当する企業を人手でピックアップして、「特集」として紹介していました。しかし、特集に注目させるためには大手・有名企業を前面に出す必要もあり、結果、それらの企業にプレエントリーが偏ってしまうという矛盾にジレンマを感じていました。

そうした課題の突破口として注力したのが、機械学習を活用した「企業のレコメンド(推薦)機能」と、「画面のパーソナライズ機能」です。

学生の行動ログを解析し、合う企業を表示

レコメンドにおいて私たちが着目したのは、学生の「まずは大手企業を一巡してから、徐々に中小企業を検討先に加えていく」という特性です。

これに着目し、これまで蓄積してきた学生のリクナビ上での企業閲覧を含めた行動ログから、「業種」「地域」「従業員規模」という3つの要素の傾向を特定。次に、学生が閲覧しそうな企業をおすすめする、というロジックを作りました。

「画面のパーソナライズ」については、学生個人のプレエントリー傾向をもとにした「おすすめ企業」を基本に、就活の時期に合わせ、「もうすぐ締め切りになる企業の中であなたに合った企業」「夏採用を開始した企業の中であなたに合った企業」などを、プレエントリーの件数や時期に応じて表示することを行いました。

これらの機能を取り入れた「リクナビ2014・2015」では、それまで大手・有名企業に偏りがちだったプレエントリーの傾向が大きく変わりました。求人倍率が上昇し、売り手市場となる中で、中小企業へのエントリーを拡大させることに成功したのです。

しかし、この仕組みだけでは、「社風」や「キャリアステップ」などの志向傾向までを網羅することはできませんでした。

この点を改善するために導入し、現在のリクナビで使用しているのが、「Word2Vec(ワードツーベック)」というロジックです。もともとは自然言語処理のロジックで、一人の人が書いた文章の「この人はXXという言葉と△△という言葉を同時に用いやすい」といった傾向を分析したりすることが可能な技術。これを「その人らしい企業リスト」を作ることに適用しました。

このロジックだと、理論上、無限大のバリエーションで、その人の次の行動を計算できますし、精度も9割くらいまで上げられています。さらに、就活を進める中で大手企業から中小企業へ、あるいは、当初の検討業種から別業種へなど、タイミングによって刻々と変化する個人の志向を追いながら、その時々に適切なレコメンドをすることも可能になりました。

一方で、本人が自分の志向に沿って企業を選んだ場合も、レコメンド結果に従って企業を選んだ場合も、応募する企業が本人の志向の範囲から外れることがないため、「実は興味を持つかもしれない志向の外にある企業」と出会う可能性を閉ざす懸念がありました。そこで、「こういう企業も見てみてはどうですか?」と本人が自覚する志向の範疇にない企業をあえて勧めることをときどき行い、学生の視野を広げる工夫もしています。

まさにこの「レコメンド」は「就活の作業を削減し、自分の未来に向き合う時間をつくってほしい」という志を結実したものでした。また大変うれしいことに、学生からの高い支持を得ることができました。

すると今度は、「学生の閲覧率が高い『レコメンド』の機能を活用して自社をPRしたい」、つまり「お金を払うからレコメンドリストに出してほしい」という新たな企業ニーズが生まれるに至りました。

“レコメンドの商品化”はしない

ただ、もしも「レコメンド」を商品化してしまえば、学生が「いずれたどりつくかも知れない選択肢」を先回りして提示する力より、「人を獲りたいという企業の願い」を届ける力が上回ってしまうリスクがあります。

利益獲得は企業の大切な使命の1つですが、他にもやり方はあります。レコメンドは、私たちが「学生にこうあってほしい」と強く願い、その思いを軸に何度も試行錯誤を繰り返した中でやっと実現できたもの。だからその思いを濁らせないためにも、「レコメンドは商品化しない」と決めているのです。

レコメンド機能の進化の過程では、失敗も経験しました。その一つが最初から個人にピタリと合う企業をレコメンドする方法です。

学生は、自分の選択軸や意向を自身でも確かめながら、たくさんの企業の情報に触れ、広め広めにプレエントリーを行います。これは、その後の応募へのつながりも含めた行動ログからもわかることなのですが、プレエントリーした企業の間でも、当然ながら志望度合いや選考への参加意向には幅があるのです。

仮に、学生がたくさんの企業にプレエントリーするプロセスが、学生自身を混乱させてしまっていたり、疲れさせてしまう原因になったりしているのであれば、その学生が最終的にプレエントリーしそうと思われる企業をピンポイントでレコメンドしたらどうか、と考えたのです。しかしこれは鮮やかなまでの空振り。まったくクリックされなかったのです。

今考えてみれば、それもそのはず。学生の多くは社会や企業を十分には知らない状態から就活を始めます。そして徐々に知識を広げていきます。なので最初から、「結果的にたどり着くだろう自身の“正解”」に近い選択肢を提示されても、腑に落ちなかったのでしょう。当然次の行動にも全く繋がりませんでした。

たくさんのデータを扱っていると、ついつい「私たちには見えている」という心境に陥りがちなのかも知れません。しかし、実際の人間の心情や行動のすべてを把握したり、予測したりができるわけではない。現時点で最高レベルと思える技術を駆使した「最適解」だけでは、人が動く「納得解」を上回ることはできません。

現在は、知っている企業から企業・業界への理解を広げ、徐々に知らなかった企業にも視野を広げられるようにレコメンドルートを構築しています。こうすることで納得感が高まるとともに、レコメンドの精度も高まり、最終的には入社したいと思える企業群にプレエントリーしてもらえるようになっています。

AIが自己PRを書く時代になるか

今、研究を進めているのは、「行動のレコメンド」。特に「迷っている人に対する行動の提示」です。就活しなきゃと思っているが、何からやればいいのかわからないし、気が進まない。そんな学生が、とりあえずリクナビにはアクセスするけれど、どのリンクも押さないといった行動が、よく見られました。

そこで、何もアクションがない状態が10秒ほど続くと、「お困りですか?」とポップアップが表示され、学生との対話をもとに、「あなたならまず自己分析からやるとよさそうですよ」「就活のスケジュールがわからないならこういうコンテンツを見てみてはどうですか」などと、次の行動を提案するような仕組みを考えています。

さらに先の課題として考えているのは、学生が自分の価値観や能力・よさを認識する際の補助となるツールとしてのAI活用です。現在、最重要課題に位置づけているのは、学生が十分に自己理解できていないことと、自己理解するきっかけとなる場や、その事前事後で起きた反省に対する支援体制が、まだまだ不十分な点です。

「卒業後の進路を決めた時期」について、国際比較した統計(リクルートワークス研究所「Global Career Survey」)によると、日本は「大学前期まで」が15%程度。ドイツの約7割、アメリカやベトナムの約6割などと比べると、圧倒的に遅い。もっと早い段階からの自己理解が進めば、「今後何を学ぶのか」「どんな仕事をするのか」について、より自律的に選択できるようになると思うのです。

AIとの対話型コミュニケーションを通して、AIが学生個人の能力や志向を示唆する形で可視化できたらどうでしょうか。究極には、AIが学生に代わって自己PRするようなところまで可能になってもいい、と考えています。

ただし、その自己PRをより深めていくのは、学生本人。AIは正確性や可視化を得意としますが、そこで導き出された情報を有効に活用できるかどうかは、本人の意志次第です。自分は一体どんな人なのか、今後どんなことがしたいのか。それを「見つけたい」という思いが強い人ほど、こうした新技術の恩恵を享受できるのだろうと思います。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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