「子の将来は親の育て方次第」という大誤解完璧な人間にも堕落した人間にもできない|マネブ

マネブNEWS:〔2017.09.22〕「相談役」「顧問」の居座りは社員全員の迷惑だこん 現在の記事数:248022件

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「子の将来は親の育て方次第」という大誤解完璧な人間にも堕落した人間にもできない


本の読み聞かせが子どもを勉強好きにさせるって本当?(写真:den-sen / PIXTA)乳幼児や小中学生の子どもを持つ親のみなさんは、今年の夏休みをどう過ごしただろうか?旅行に行ったりキャンプをしたりと、家族サービスに精を出した人もいれば、子どもと過ごす時間が十分に取れず、「子どもによい経験をさせられなかった」と考えている人もいるかもしれない。だが、過度の心配はご無用だ。2000年刊行のロングセラーで、この夏に新刊として改題・文庫化された『子育ての大誤解――重要なのは親じゃない』の著者にして、アメリカの教育研究者、ジュディス・リッチ・ハリス氏は、「子育てにおいて、親の努力はほとんど無駄になる」という。ハリス氏が、子どもがどんな大人に育つかはすべて親の責任であるという「子育て神話」を一刀両断する。子育て神話

まずは、私の実体験から。

学生時代、私は米国のマサチューセッツ州ケンブリッジで下宿をしていた。下宿の大家はロシア人夫妻で、3人の子どもたちとともに1階に住んでいた。夫妻はお互いに対しても、子どもたちに対してもロシア語で話した。彼らは英語が下手で、ロシア訛りが強かった。

ところが彼らの子どもたちはというと、まったく訛りのない、近所の子どもたちが話すのと同じボストン゠ケンブリッジ・アクセントの英語を流暢に話していた。外見も近所の子どもたちとそっくり。親のほうはその洋服のせいなのか、身ぶり顔つきのせいなのか、どこかに「外人くささ」が漂っていた。しかし子どもたちはまったく外国人には見えない。ごく普通のアメリカの子どもだった。

「愛情をこめて抱きしめると、優しい子どもになる」「寝る前に本を読み聞かせると、子どもは勉強好きになる」「体罰は子どもを攻撃的な性格にする」

世間でまことしやかにささやかれる、これらの言説。その裏にある考え方を、私は「子育て神話」と呼んでいる。それは、親の育て方が子どもの人生を決めるという考え方だ。子育て神話によれば、子どもに文化や知識を伝えるのも、将来、社会で一人前の大人として認められるよう準備を整えさせるのも、すべて親の役目となる。だから親は必死で「よい親」になろうとする。その心理的負担はとても大きい。

しかし、よく考えてみてほしい。私がかつて目の当たりにしたように、移民の家庭の子どもは、移民先の言葉や習慣を親から学ぶことができないにもかかわらず、すぐにそれらを身に付ける。ほかにも不思議なことがある。イギリスの裕福な家庭に生まれた男子は、8歳になると全寮制の寄宿学校へと送り出され、その後10年間を学校で過ごす。長期休暇で帰省するとき以外、親とは顔を合わせない。

それでも、寄宿学校を巣立つ頃には立派なイギリス紳士の行動様式を身に付ける。上流階級のアクセントや立ち居振る舞いは父親そのものである。父親は、息子の成長にちっともかかわっていないにもかかわらずだ。

実は、子どもの性格に決定的な影響を及ぼすのは、親ではない。重要なのは仲間集団だ。家庭から解き放たれた子どもは仲間集団とのかかわり合いの中で、社会のルールや自らのキャラクターを身に付けていく。

この「集団社会化」が人間の発達上いかに重要かを知っていただくために、逆にそのプロセスが欠けてしまうとどうなるのか、ウィリアムの事例を紹介したい。

社会不適合状態に陥った神童

ウィリアム・ジェイムズ・サイディスは、1898年4月1日、ボストンに生まれた。ゼロ歳の頃から両親による徹底的な英才教育を授けられ、11歳(当時最年少)でハーバード大学に入学。数カ月後には「4次元物体」と題した講演を行い、数学教授たちを驚かせたという。ウィリアムは、まさに神童だった。

しかし、この頃をピークに、ウィリアムの人生は暗転する。彼はやがて修士課程を中退。頭を使わない安月給の事務仕事を転々として過ごした。趣味は路面電車の乗り継ぎ切符の収集で、それについての本も書いたが、ある読者は「まさに本の歴史の中で最もつまらない本」と評した。結局、ウィリアムは46歳で心臓発作のため亡くなった。独身で無一文、完全な社会不適合状態に陥っていた。

ウィリアムのおかれた状況は、仲間との付き合いがないままに成長したサルの状況と似ている。霊長類学の研究によれば、そういうサルは、母親不在のサルと比べても明らかに異常行動が目立つという。ウィリアムもまた、同年代の子どもたちとの普通の関係を知らずに育ったため、社会に適応できず、高い知能をふいにしてしまった。

ウィリアムの例からもわかるように、私たちの思いどおりに子どもを育て上げることができるという考えは幻想にすぎない。あきらめるべきだ。子どもとは親が夢を描くための真っ白なキャンバスではない。子どもには愛情が必要だからと子どもを愛するのではなくて、いとおしいから愛するのだ。

彼らとともに過ごせることを楽しもう。自分が教えられることを教えてあげればいいのだ。気を楽にもって。彼らがどう育つかは、親の育て方を反映した結果ではない。彼らを完璧な人間に育て上げることもできなければ、逆に堕落させることもできない。それは親が決められることではない。

それでもなお、親が子どもにしてあげられることがひとつあるとすれば、住む場所や学校を選ぶことだ。次の事例は、どんな仲間に囲まれて育つかで子どもの人生が大きく変わることを、よく示している。

地域によって異なる仲間集団の規範

ラリー・アユソというバスケットボール選手がいる。プエルトリコ代表として2004年アテネ五輪や2006年世界選手権にも出場した彼は、16歳まで「ニューヨーク最悪のスラム」として知られるサウスブロンクスに住んでいた。成績不振でバスケットボール部への入部が認められず、ラリーは高校を中退。友人のうち3人は麻薬がらみの殺人事件に巻き込まれ、命を落とした。

犯罪の道に今にも足を踏み入れようとしていた彼を救ったのは、スラム街から子どもたちを連れ出し、遠く離れた別の土地に転居させるプログラムだった。転居先はニューメキシコ州の小さな町で、彼は中流階級の白人家族とともに暮らすことになった。

2年後、ラリーは転校先の高校のバスケットボールチームで、1試合平均28点を稼ぐエースとして活躍していた。成績もAとBばかりで、大学進学を目指していた。ラリーは南カリフォルニア大学に進学。卒業後、プエルトリコに渡ってからの活躍ぶりは、先に記したとおりである。

彼がサウスブロンクスの古巣を訪れたとき、かつての友人たちは彼の服装に驚き、話し方がおかしいと言ったそうだ。ラリーの変身は、ラリーを引き取った白人夫婦の功績ではない。ラリーの仲間集団が劇的に変わったからだ。

『子育ての大誤解――重要なのは親じゃない』(早川書房)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします(本書は上・下2巻の文庫版です)

地域によって、大人の行動様式も、子どもの育て方も違う。さらに地域によって、子どもたちの仲間集団が従うべき規範も異なる。ラリーが以前住んでいたような地域では、子どもたちの行動規範は攻撃的であること、反逆的であることだった。

サウスブロンクスに住むラリーの昔の友人たちは、「社会化されていない」わけではない。ほかの地域の子どもたちがするように、彼らは自分の属する集団に自分の行動様式と態度を順応させただけなのだ。ニューメキシコのラリーの新しい友人たちと行動様式、話し方、そして服装が違うからといって、サウスブロンクスの子どもたちが社会化を果たしていないことにはならない。昔の友人たちも新しい友人たちも、異なる規範を掲げるそれぞれの集団で社会化を果たしたというだけなのだ。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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