芸人のために謝り続けて35年…吉本興業と刑務所で身につけた、「謝罪のプロ」が教えるコミュニケーション術|マネブ

マネブNEWS:〔2018.06.24〕自虐ネタにしてもダメ! 男の「ヤンチャ自慢」に女 現在の記事数:262009件

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芸人のために謝り続けて35年…吉本興業と刑務所で身につけた、「謝罪のプロ」が教えるコミュニケーション術


post_post_20522.jpg竹中功氏と著書の『よしもとで学んだ「お笑い」を刑務所で話す』(にんげん出版)

 竹中功氏は35年間吉本興業に勤め、百戦錬磨の広報マンとして活躍、芸人の育成に努め、芸人のトラブルやスキャンダルの「謝罪」を引き受けてきた。退社後、危機管理・コミュニティコンサルタント・謝罪マスターとして活躍、「謝罪」のキャリアを生かして記した『よい謝罪 仕事の危機を乗り切るための謝る技術』(日経BP社)を出版。続いて、吉本でのキャリアと受刑者に対する教育を通じてコミュニケーションを考える『よしもとで学んだ「お笑い」を刑務所で話す』(にんげん出版)を上梓した。そんな竹中氏に、本の内容について聞いた。

弱者の立場からはじまるコミュニケーション術

「“良い謝罪”について突き詰めて出てきた答えが、『危機管理をちゃんとしていれば、謝らなくてもいい』いうことでした。“危機”に陥るきっかけは、嘘や強欲、見栄から始まり、人間のダメな部分が大きくなることです。相手の気持ちを理解することができれば嘘や強欲、見栄は生まれず、良い人間関係が築くことができ、危機に陥らずに済みます。良いコミュニケーションによって、『悪さ』をする人を減らすことができるんです」

『よしもとで学んだ「お笑い」を刑務所で話す』では、吉本時代の慰問を経て山形刑務所で満期釈放(満期日より前に刑期を残したまま社会に戻る仮釈放に対し、刑期が満了してから釈放されることを指す)の前教育に携わるにいたった経緯について、そして吉本で学び、教えたお笑いやコミュニケーション、さらに刑務所で受刑者に伝えた「自分を愛するコミュニケーション」について、人間味のある言葉で語りかける。既視感のあるマニュアル的なコミュニケーション術ではない。いわば弱者の立場から始まるコミュニケーション術が特長だ。

「慰問は、短期間の刑期で出入りする累犯(犯罪を反覆して行う)の多い秋田刑務所でした。傷害や窃盗、薬物使用や売春幇助など、暴力団関係者が多いのではないかと思い、『みなさん喧嘩してませんか? ここで喧嘩して勝っても負けても、なんにもいいことはないでしょう』と呼びかけたんです。『男なら、シャバに出て勝ってください。 “漢”と書いてオトコと読むんです!“漢”とは勇敢さ、精神力の強さ、人から頼られる人物の器量のこと。男に惚れられる“漢”になってください」と。その後、1年間ほど喧嘩がなくなったそうです』

 その様子を知る刑務官が山形刑務所に転勤となったことがきっかけで、竹中氏は山形刑務所での満期釈放向け教育の指導を担当することになった。社会に戻る際に不安を抱える受刑者のための「不安をとりのぞくコミュニケーション」について展開したのだが、その土台になったのが、吉本での35年のキャリアだ。本書には吉本の歴史や、養成所NSCの立ち上げなど、「お笑い」に携わる竹中氏の奮闘、売れる芸人の秘訣などの興味深いエピソードが披露される。たとえば、コミュニケーションの天才というべき、明石家さんまは膨大な量の情報を毎日インプットし、アウトプットしているように見えたと竹中氏はいう。

「さんまさんの頭には中東の原油を運ぶパイプラインのような直径1メートル程のチューブがつながっているのではないかとずっと思っている。……毎日毎日テレビ番組を見倒し、自分の出演番組も見倒し、新聞や雑誌も読みまくり、多くのものをどんどん入力し、そして限りなく人と話す」(『よしもとで学んだ「お笑い」を刑務所で話す』より)

 芸人が売れる/売れない、についての法則はなく、最終的には客の「感性」に委ねられるという。客の「感性」に寄り添うには、芸人と客との「心のキャッチボール」が交わされる舞台に数多く立つことで第六感を磨き、コツを身につけていくことが必要だ。

自分をインタビュー、10歳の自分に会いにいく

「刑務所では社会復帰に際して、新たに人間関係を築くには課題が大きく、不安を抱える受刑者も多い。『誰かのせいで不安がっているんじゃなく、自分のせいで不安がってるんじゃないか? それを助けてもらうために、嫁はんや子ども、改めて家族との会話が始まります。それには、しっかりと“心のキャッチボール”ができるようになることが大事』と彼らに伝えます」

 竹中氏のコミュニケーション術の核心部分となる「心のキャッチボール」に必要なのは、ちょっとした優しさを思い出すこと。用件を伝えるだけではなく、ふと気付いたことを言葉にして投げ合うことが重要だという。

「一般社会でも同じです。事務所で横に座ってるのにカチャカチャとチャットで話しをする。それもええけど、『ちょっと茶いこか』と誘う、『そのシャツどこでこうたん?』と気にかける、そうしたささいなことがとても大事です。その一方、ノンバーバルコミュニケーション(非言語のコミュニケーション)についても話します。初対面で人は相手を理解する時間は、だいたい0.1秒くらいといわれています。受刑者には『みなさん0.1秒で芝居をせえ!というても難しいでしょ? そもそも人間の目は芝居ができない。目が本気やなかったらバレるから、なんでも本気でのぞみなさい。人と接するときには、本気感がないと、一緒に働こうとなりません』と話すと、さすがに受刑者たちの背筋もすっと伸びます」

 さらに山形刑務所では受刑者に「自分史を書く」授業を行う。自分で自分をインタビュー、自分とコミュニケーションする取り組みだ。記憶を辿るのではなく自分自身に問いかけてみるように指導する。

「受刑者に、10歳の自分に『どんな大人になりたいですか?』と職業や夢を聞いてもらいます。『ジェット機のパイロットになりたい』『小林旭に憧れていた』など答えが返ってくる。『死ぬ間際の自分に何を伝えたいですか?』と聞くと、多くは『謝罪』や『感謝』という言葉が返ってきます。そうするうちに『今までは反省するばかりの日々でしたが、自分にインタビューすることで、忘れていた自分に会えました』という受刑者も出てきます」

 本書は「自分を愛するコミュニケーション」というサブタイトルを冠している。「自分を愛する」という言葉は、容易に「自己肯定」という言葉に集約されがちだ。その意味をリアルな現場で深く掘り下げ、温かな視線で捉えたのが、竹中氏の「自分を愛するコミュニケーション」なのだ。

「自分を愛するには自分のことを知らないと……。自分のことをわかっていないかぎり、人には何も伝わらない。人に愛してもらえないし、人を愛する資格もない。『心のキャッチボール』によって自分を発見し、知ることができたら、自分を愛し、人にも興味が持て、優しくなったり好きになったりします」

 満期釈放は非常に再犯率が高いといわれている。しかし、竹中氏が担当した受刑者は、今のところ再犯率がゼロだったというから驚きだ。芸人という究極のコミュニケーターへの指導と、受刑者というコミュニケーション弱者の教育に取り組んだ竹中氏。その人間味に満ちた言葉に耳を傾けることで、理想のコミュニケーションのヒントが見えてくるのではないだろうか。(文=櫻井一哉)

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引用元:ビジネスジャーナル

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