「落ちこぼれ」「吹きこぼれ」がない学校の秘密1人の生徒が解く問題数は全国平均の4倍!|マネブ

マネブNEWS:〔2017.10.23〕あなたは説明できる? 「美しい」と「きれい」の意 現在の記事数:249803件

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「落ちこぼれ」「吹きこぼれ」がない学校の秘密1人の生徒が解く問題数は全国平均の4倍!


授業がすべてiPadを活用して行われるようになったら?(写真:未来教育会議)たとえば小学校で。授業がすべてiPadを活用して行われるようになったら、学校はどうなるだろう?たとえばテレビ局で。キャスター以外すべてロボットの無人スタジオでニュース番組を作ることは可能だろうか?たとえば公民館で。地域の人が集まり最先端のテクノロジーを使いこなすコミュニティ活動が繰り広げられたら、どんなものが生まれてくるだろうか?テクノロジーについて、「今後10~20年の間に、人間の仕事の約半分がAIやロボットに奪われる」といった危惧が喧伝される一方で、「働き方改革」などの文脈ではAIやロボットによって生産性が向上し、人手不足や長時間労働の問題を解決してくれるのではないかという期待も大きい。重要なことは、過度に恐れるのでも過剰に期待をかけるのでもなく、自分自身が主体的にテクロノジーにかかわり、活用していくことで、テクノロジーを「味方にする」ことではないだろうか。テクノロジーと人の幸せな関係性を、私たちはこれからどのようにして築いていくべきか。オランダとデンマークの現場から、そのヒントを探っていく。「落ちこぼれ」も「吹きこぼれ」も存在しない学校この連載の記事一覧はこちら

あるとき1人の保護者が、自分が小学生だった30年前と同じ教育が今も学校現場で行われていることにふと気がつく。

情報端末の使用も禁じられており、そのあまりのアナログさ、世の中の実情との乖離に、「これは未来へ向けた教育ではない。1990年に戻るための教育ではないか」と疑問を感じたことから、新しい学校が生まれた。それが2013年に発足したスティーブ・ジョブズ・スクール(De Steve JobsSchool)だ。

オランダでは教育の自由が憲法で保障されており、各学校が独自の教育プログラムを採用できる。また、200人以上の保護者の同意が得られれば学校の新設も認められている。

スティーブ・ジョブズ・スクール生みの親であるマウリス・デ・ホンド氏は、「学校に関する既成概念をなくし、学習する者にとって最もよい学校の形をつくりたい」として、最新のICT技術を取り入れた21世紀型の教育モデルを追求している。

ちなみにスティーブ・ジョブズの名は、“世界にイノベーションを起こした偉人”として冠したという(オランダでは、レオナルド・ダ・ヴィンチ・スクールなど、学校の理念に沿う偉人の名前を校名にすることがあるとのこと)。

カリキュラムはすべての生徒がiPadを使用することが前提。入学すると1人に1台ずつ支給され、学校内でも家でも、学習に欠かせないツールとなっている。

習熟度別にクラスや科目が自由に選べる(写真:未来教育会議)

徹底した情報端末の活用以上に特徴的なのは、習熟度別にクラスや科目が自由に選べることだ。オランダには日本のように細かい指導要領はなく、小学校卒業時の「到達目標」だけがある。その目標に向けて、スケジュール用の専門アプリを使って生徒自身が自分のカリキュラムをデザインするのだ。

1日の3分の1は自習時間

学習プランは教員のアドバイスを受けながら6週ごとに見直される。各自、それぞれのカリキュラムにのっとって授業を選択するため、年齢別に授業が組まれることはなく、異なる年齢の子どもたちが一緒に学ぶ光景が当たり前。1日の3分の1は自習時間に当てられ、各自で課題に取り組む。情報端末を使いながらの自習はゲーム感覚で楽しく学べ、進捗状況はログに残るため、親も教員もすぐにそれを把握できる。子どものちょっとした変化にも気づきやすく、周囲が効果的にサポートできるようになっている。

休み時間の教室移動シーン。端末で自分が次に行く教室を確認(写真:未来教育会議)

この体制が可能にしているのは、授業についていけずに学習意欲をなくす「落ちこぼれ」と、先に進みたいのにペースを落とさなければならず学習意欲をなくす「吹きこぼれ」をなくすことだ。自分のペースで楽しく学べるため、学習へのモチベーションが維持されやすい。結果的に、1人の生徒が解く問題の総数は全国平均の4倍に上り、高い成績水準が保たれているという。

自習室の様子。授業のない「空きコマ」は自習(写真:未来教育会議)

先端テクノロジーの利点を最大限に生かし、習熟度に応じて個人が柔軟に学習を進められるシステムは、子どもたちにとって間違いなく学校を居心地の良い、“学習しやすい環境”としているようだ。

個人の学習の進捗がデータで一覧できる(写真:未来教育会議)テクノロジーを専門家任せにしない市民が自由に出入りし、ものづくりができるスペースになっている(写真:未来教育会議)

オランダにはもうひとつ、先進的な教育拠点がある。アムステルダム市で活動を展開する「ワーグ・ソサエティ(Waag Society)」。アート、サイエンス、テクノロジーに関する研究、実験、教育を通し、市民を主役としたソーシャルイノベーションを目指す教育機関だ。

ラボの一室(写真:未来教育会議)

ワーグ・ソサエティが活動拠点としているのが、かつてレンブラントが名画「テュルプ博士の解剖学講義」を描いたことで知られる古い建物をリノベーションしたソーシャル・イノベーション・ラボ。

にぎやかな街の中心部に位置するこのラボは、市民が自由に出入りし、ものづくりができるスペースになっているほか、ここを拠点に、一般市民を巻き込んだ形で、アートと先端テクノロジーを生かしたさまざまな社会実験や開発プロジェクトが行われている。

ファッションについてのプロジェクトを作業しているラボ(写真:未来教育会議)

たとえば、まだ一般的にGPS端末が普及していなかった2002年。市民一人ひとりに端末を渡して普段どおりに生活をしてもらい、その足跡からアーティストが地図を作成、ナビゲーションシステムをつくるという社会実験的プロジェクトを実施している。

数年後、そのマッピングの成果に歴史的な情報を組み合わせることで、市内を歩くとその場所にまつわる史実がわかる教育ツールを開発。子どもたちへの教育効果が認められ、現在はベンチャー企業がビジネスとしてサービス展開している。

また近年は、自分たちの手でスマートフォンを製作することで、現在世界中に普及しているスマートフォンにどのような原料、技術が使われ、それによってどのような社会・環境問題、影響が生まれているかを探るというプロジェクトも実施。その結果、鉱物等原材料の採掘や製造過程において児童労働や反政府勢力とのかかわりを減らしたり、バッテリー交換を可能にし、耐久年数を長くしたりといった取り組みを盛り込んでスマートフォンを開発するに至った。

この製品開発には3万5000人がクラウドファンディングを通じて参加、社会的コストが少ないという意味で「FAIRPHONE」と名付けられたそのスマートフォンは現在15万台が納品されている。

市民によるワークショップの様子(写真:未来教育会議)

彼らは、イノベーションは科学者や大企業がクローズドの状態で手掛けるべきものではなく、市民の中から生まれるべきだと考えている。「ワーグ・ソサエティ」は「スマート・シチズン・マニフェスト」なる10カ条の心得を掲げており、その中には、「ツール、知識、サポートをどこで得られるかを知ろう」「テクノロジーを受け入れるのではなく、自分のものにしよう」「スマートデバイスに苦戦している人を助けよう」「答えが浮かぶ前に、質問しよう」「知識と学びを共有しつづけよう」という考え方が並んでいる。テクノロジーの力を認めているからこそ、自らの手で積極的に触れ、そしてコントロールする術を身に付けようという、主体的な市民の姿がそこにあった。

徹底したテクノロジー活用で、より働きやすい環境に

最後に紹介するのは、コペンハーゲンにあるデンマーク第2のテレビ局「TV2」。デンマーク国営放送に次ぐ準国営放送局で、現在約1000人の社員が働いており、8つのチャンネルを運営している。8つのチャンネルを運営し、そこにのせる数多くの番組を制作するために、徹底したテクノロジーの活用を行っている。

コペンハーゲンにあるデンマーク第2のテレビ局「TV2」(写真:未来教育会議)

きっかけとなったのは、それまでの労働環境の改善が求められたこと。1988年の開局当時は年間2000時間だった放送時間は、チャンネル数の増加に伴って、2014年には年間4500時間に。番組の多様化、チャンネル数増加は進む一方で、TV2においても社員の長時間労働や不規則な労働時間が問題視されていた。

キャスターが閲覧する原稿表示モニター。足元のペダルを踏むと原稿が先に進むなどのインターフェースの工夫がされている。(写真:未来教育会議)

そこでTV2が行ったのがテクノロジーを活用した効率化だ。たとえば、局内には、キャスター以外の人間がまったく立ち入らずに番組制作を行う無人化ニュース番組撮影スタジオがあり、プロデューサーやADはおろか、ディレクターもカメラマンも立ち入らず、遠隔操作カメラでキャスターを映して放送している。

ニュース原稿もモニター上に表示され、手元に紙原稿を用意することはない。こうした対策により、効率的で生産性の高い労働が実現、社員のワークライフバランスが保持されている。

人間主導で活用していく努力が要る

これらの例から見えてくるのは、テクノロジーに対する人々の能動的な向き合い方だ。「専門家じゃないからわからない」「使いこなせないので不安」、あるいは「どんな影響があるかはわからないが、はやりだからとりあえず使う」……といった受け身の姿勢ではない。

ひるがえってわれわれはどうだろうか? たとえば、遺伝子組み換え食品を食べるかどうかや、原子力発電や自然エネルギーとの付き合い方など、自分で判断しなければならない問題は増えるばかりだが、主体的に事実を知り、自らの価値観に従って判断するという姿勢を持っているだろうか。

テクノロジーがますます進化していく中で、そのスピードについていけず、流れに振り落とされる不安は誰しも抱えるものだろう。そしてそこには、SF映画のように知らず知らずのうちにテクノロジーに主導権を奪われるかもしれないというおそれもある。それらを解消するためには、彼らのように、テクノロジーそのものに主体的にかかわっていき、味方につけ、人間主導で活用していく努力を続けるしかない。

スティーブ・ジョブズ・スクールでの一人ひとりの進度に合った教育においても、ワーグ・ソサエティが生み出すイノベーションにおいても、テクノロジーが果たす役割は大きい。テクノロジーの積極的な活用により、自分たちの手でよりよい社会をつくっていくことはきっと可能なのだ。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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