一流の経営者は「経営理論」を振りかざない「参考にしても信用はしない」が正しい常識|マネブ

マネブNEWS:〔2017.05.26〕カルビー松本会長「労働時間の減少は必然だ」働き方 現在の記事数:240750件

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一流の経営者は「経営理論」を振りかざない「参考にしても信用はしない」が正しい常識


知識は有用なものだけれど…(写真:wavebreakmedia / PIXTA)

経営を進めるうえで、理論、学説、数値分析の知識ばかりを求める人がいます。もちろん、こうした知識は有用なものですが、絶対に必要かといえば、そうではありません。

総資本回転率、売上利益率、資本利益率、売上高費用比率といった財務諸表分析、あるいはランチェスターの法則など経営戦略に関する理論は、数多くあります。でも、このようなことがわからないと経営ができない、あるいは、このようなことをいちいち考え、前提としなければ、経営判断ができないとするならば、経営者として失格でしょう。なぜなのか。それを説明したいと思います。

学者は死んだ魚をさばいているにすぎない

経営学者や評論家は、いかにも経営がわかっているかのように、こうしたデータを列挙して、話をする。書物にする。それを聞いて、読んで、さすが先生は偉いと思う。すごい先生だと思う。しかし、思う必要はありません。すごいこともありません。彼らは、実業を経験していません。生きている魚を扱った経験はなく、死んだ魚をさばいているにすぎないのです。

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もともと、彼らは、そのような死んだ(過去)の資料とデータを分析理論化しているのであって、彼らのご託宣が、「いま、生きている会社」にそのまま適用できるはずもありません。現に、彼ら、学者や評論家が予測することで、その予測が「当たる」ことはほとんどありません。早い話が、毎年の彼らの景気予測の結果を考えれば、すぐに納得されるでしょう。

若い方はご存じないかもしれませんが、坂本藤良(1926-1986)という経営学者がいました。

活躍したのは1960年前後の話ですから、もう60年近く前のことです。彼の書いた『経営学入門―現代企業はどんな技能を必要とするか』(1958年刊)は大ベストセラーになり、一躍、この先生は脚光を浴びました。その内容は、必ずしも「数字尊重」「分析優先」ではなかったように記憶しています。

しかし、その後、実家の製薬会社を引き受け、経営者になった結果どうなったかというと、あっという間に倒産させてしまったのです。このことは、今でも語り草になっています。

いくら机上で考え、観察しながら、経営を分析し、論じても、実際の経営に応用適合することはありませんし、死んだ数字と資料を基にしているのですから、現実問題に対して活用することは不可能なのです。

たとえるならば、一度も実際に泳いだこともないコーチが、水泳選手をプールの上から見て、観察し、理論化して、ああでもない、こうでもないと、自分の作成したノートを見ながら言ったところで、では、本当に選手の泳ぎ方に効果があるのか、選手を育てることができるのか、ということです。

「参考にしても信用はしない」が正しい常識

学者、評論家の言うことは、参考にしても、言うところのことをそのまま鵜呑みにしては、必ず経営において失敗するということです。学者は、あくまで学者。評論家は、あくまでも評論家。「参考にしても信用はしない」が経営者、ビジネスパーソンにとっての大事なスタンスだということです。

もちろん、そのような分析をして、賢いところを見せたい、そのような理論を振りかざして周囲や社員を圧倒したいと思う見栄っ張り経営者やビジネスパーソンがおいでならば、それは、どうぞご勝手に、というほかありません。ですから否定はしません。

実際、松下幸之助さんが、まさにマイナスから出発して、会社を70年間で7兆円の企業につくり上げた、その過程を見れば、数字の分析や学者、評論家の理論に基づいたことは、ほとんどなかった。経理担当責任者から聞いて、参考にしたかもしれませんが、その程度だったと言ってもいいでしょう。それでも、世界的企業をつくり上げたのです。

私が、PHP研究所の経営者として、松下さんに報告を求められた数字は、売り上げ、利益、在庫、内部留保、社員数の5つ(もし借金があれば借入金額を確認されたかもしれません)と、期末のBS(貸借対照表)、PL(損益計算書)でした。もちろん、松下さんは長い経営者としての経験から、頭の中で、それだけの数字の報告で、経営分析をしていたのかもしれませんが、そうだとすれば、これぐらいで、経営状況が把握できる力がなければならないということでしょう。

とはいえ、一度も、総資本回転率はどうなっているのか、売上高費用比率はどうなっているのかなどと聞かれたことはありませんでした。

「経営は、数字の分析や、理論などではない」――。これは松下さんから学んだことです。経営とは「理3、情7」が基本の基本です。理屈で経営が成功する、数字の分析で会社が発展するということならば、学者、評論家が経営者になればいいのです。しかし、「情7」こそが大事なのです。極端に言えば、「理3」を無視しても「情7」によって経営に成功することはできるのです。

実際、松下さんが「松下電器が成功した9つの要因」を挙げています。この話は、私の著作でも講演でもしばしば書き、またお話ししていますので、多くの方々がご承知だと思いますが、その9つの要因は、1. 自分が凡人であったこと、2. 人材に恵まれたこと、3. 方針を明確に提示したこと、4. 理想を掲げたこと、5. 時代に合った事業であったこと、6. 派閥をつくらなかったこと、7. ガラス張りの経営をしたこと、8. 全員経営をしたこと、9. 公の仕事であると訴えたことと述べています。

この、成功の9要因のなかに、数字や理論に関する事項はありません。経営分析もなければ、有名な経営理論から活用したようなものもありません。

会社とは「人間の集合体」。経営とは、集まった人間の「相乗行動」によって1つの目的に向かって進み、その目標を達成することなのです。経営は、したがって、いかに「人間の集合体」を治めるか、活かすか、やる気を出させるかに要諦があるのです。実際のところ、松下さんが語った9つの成功要因を、ひと言で表せば、「私が経営において成功したのは、社員を励まし、社員に誇りを持たせ、社員に感謝し、社員に感動を与えたからです」ということでしょう。

「働き方改革」で必要なこととは?

近頃、「働き方改革」が話題になっています。政府も「働き方改革実現会議」を設置して、いかに生産性を向上させるか、1億総活躍社会の実現に向けて、企業や暮らし方の文化を変える必要があるということですが、結局は、堺屋太一氏の言う「夢ない、欲ない、やる気ない」を、いかに解消するかということでしょう。

そのためには、数字や理屈は、ほとんど必要ないということです。この会議が「情7」を前提にして「人間」「日本人の精神」を論じないかぎり、「机上の空論」「絵に描いた餅」に終わりかねません。夏炉冬扇の会議を続けていては、「働き方改革」にしろ「プレミアムフライデー」にしろ、いつの間にかフェードアウトする可能性があります。

要は、経営者もビジネスマンも、「情7」を前提に、人心掌握に取り組み、しかる後、もし余った時間があれば、経営分析でも、理論でもお勉強すればいいのです。繰り返しになりますが、経営において、経営分析や経営理論は、必ずしも必要条件ではないのです。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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