Google検索の「青色」に隠された最強の分析力世界の勝ち組企業はビッグデータをこう使う|マネブ

マネブNEWS:〔2017.05.26〕カルビー松本会長「労働時間の減少は必然だ」働き方 現在の記事数:240750件

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Google検索の「青色」に隠された最強の分析力世界の勝ち組企業はビッグデータをこう使う


グーグル検索結果のリンクで見慣れているあの「青」。実は、41種類もの青から因果関係分析をもって選ばれた、最適な青でした(撮影:東洋経済新報社)

「ビッグデータ」という言葉はビジネスの現場でもすっかり定着し、取引先や上司から「データによる根拠を示してください」というリクエストを受けることも多くなった。

しかし、正直なところを言えば「データ分析」という考え方はあまりなじみがなく、目の前にある膨大なデータを扱いきれずに困っている、もしくは取りあえず適当に図や表を作ってみて、ある程度見栄えが良さそうな結果を報告する、という事態に陥っている方も多いのではないだろうか。

新聞やTVにすら、あやしいデータ分析結果が満載

データをビジネスに生かすための「データ分析の力」が必須となるのは、自らが分析の当事者である場合に限らない。社内での意思決定や取引先からの説明にもデータ分析が多用されるようになってきているため、誰かの分析結果にだまされないためにも、一定のスキルを身に付けておく必要が出てきているのだ。

実際、新聞やTVを見てみると、世の中は怪しいデータ分析の結果であふれている。以下は筆者が実際に見掛けた新聞記事の抜粋である。

「広告費を倍増した結果、アイスクリームの売り上げが50%伸びた」 「新社長の改革の成果によって株価が30%上昇した」 「政府の補助金政策の効果で地域経済が活性化した」  「マンションの高層階に住むと、妊娠しにくくなる」

これらの記事は「データ分析から導かれた因果関係」について主張されている。広告(X)が売り上げ(Y)に影響した、というXからYへの因果関係という意味だ。

しかし、注意が必要なのは、多くのデータ分析結果で述べられている主張は「XとYという2つのデータの動きに関連性があった」という相関関係を示しているにすぎず、X→Yという因果関係を示せてはいない。

たとえば、広告費とアイスクリームの例を考えてみよう。広告費を倍増したこと以外にも、アイスクリームの売り上げが上がった「別の要因」がありうる。たとえば、その年は例年に比べて猛暑になったのかもしれない。もしくは、日本経済が回復を始めて消費者の財布が緩み始めたのかもしれない。そういった「別の要因」がある場合、単に「広告費」と「売り上げ」という2つのデータの動きを観察しただけでは、「広告がアイスクリームの売り上げを伸ばしたのだ」という因果関係を特定できないのである。

なぜ因果関係を見極めることがビジネスにとって重要なのか? それは、相関関係のみからでは「本当は何が売り上げ増に寄与したのか」という根本的な問いに答えられないからである。そして、この問いに答えられるデータ分析を続けている企業こそが、競争を勝ち抜いているという、紛れもない事実がある。

たとえば、グーグル、ヤフー、アマゾン、ウーバーなどのIT企業では、日常的に因果関係分析を行って最適なビジネス戦略を選択している。

グーグルが240億円稼いだ「最適な青色」の分析

現在ヤフーの現在最高経営責任者(CEO)として働くマリッサ・メイヤー氏は、前職のグーグル社員時代に「41種類の青から最適な青を選ぶ」というウェブサイト広告の因果関係分析を行って広告収入を大幅に上げたことで有名だ。

当時グーグル社内では、どのような「青色」の文字をウェブサイト上で表示することが利益につながるのか、という議論が起こっていた。通常の企業であれば、「社員による多数決で決まった青色」や「有名なデザイナーが選んだ青色」に決めてしまいそうだ。

しかし、マリッサ・メイヤーは敢えてビッグデータを用いた因果関係分析を行うことを提唱した。41種類の青色とウェブサイト利用者の行動データを分析し、「利用者のクリック数を最大化できる最高の青色」をデータ分析から突き止めたのである。グーグルの試算では、この青色を採用したことによって年間2億ドル(240億円)の収入増がもたらされたという。

では、どのようなデータ分析を行えば、因果関係を正しく判定できるのか。拙著『データ分析の力―因果関係に迫る思考法―』では、最新のさまざまな分析手法について、数式をいっさい使わずに、具体例とビジュアルな説明を用いて紹介している。

まず、第1の手法は「世の中で実際に実験をしてしまう」ランダム化比較試験(RCT)という方法である。ビジネスの世界では”ABテスト”と呼ばれることもある。

たとえば、オバマ前大統領が選挙戦で使ったのがこの手法である。オバマ陣営はウェブサイトの画面デザインを工夫することでサイトへの訪問者を増やし、オバマ候補を応援するメーリングリストへの加入を増やそうと試みた。陣営は4つの画面案と、それぞれの画面に加える6つのメッセージ案を考えた。つまり、24種類の案が示されたということだ。

(出所:『データ分析の力』p.p.86~87)

24通りの組み合わせの中でどれがいちばん効果的なのか。この疑問に答えるために、選挙陣営はウェブサイトにアクセスする約31万人を無作為に24グループに分け、各グループに対して1つのデザイン案だけを表示した。そうすれば、各グループのメーリングリスト登録率を比較することで、どのデザイン案が最も効果的だったかを判定できるという仕組みだ。

陣営では画像Aと「Sign Up(登録しよう)」という組み合わせが最も効果的ではないかという予想をした。しかし、ふたを開けてみると予想とはまったく違い、画像Bと「Learn More(もっと知ってみよう)」が最も効果的であった。陣営の試算では、因果関係分析を正確に行ったうえで選ばれた案を採用したため、当初の案に比べて約6000万ドル(72億円)の追加的選挙支援金を集めることができた。

(出所:『データ分析の力』p.99)

オバマ陣営が行ったような実験はビジネス分野で多用されている。さらに、前出のグーグルやヤフー、アマゾンのようなIT企業も、日常業務の中に因果関係分析を取り入れて業績を伸ばしている。

「価格を上げたら、利用者はどれだけ減るか」を知る方法

ただ、ビジネスの現場のすべてにおいて実験が可能なわけではない。そのような場合に使えるのが「自然実験」という手法だ。たとえ人為的な実験が行えない場合でも、「あたかも実験がおこったかのような状況」を賢く利用するデータ分析手法が存在する。

ここでは数ある自然実験手法の中でも最近多用されているRDデザイン(回帰不連続デザイン)という方法を紹介しよう。たとえば、下記の例はタクシー新規参入会社のウーバーが行ったRDデザインによる因果関係分析である。ウーバーは最適なビジネス戦略を考えるうえで「価格を上げるとどれだけ利用者が減るのか」という因果関係を知る必要があると考えた。

もちろん、最良な方法はオバマ陣営が行ったような実験を実施することであるが、大規模な実験を行うには費用がかかる。そのため、シカゴ大学の研究者に「別のデータ分析手法はないか」という依頼をしたのだ。

シカゴ大学の研究者が着目した点は、ウーバーが行っていた価格設定ルールである。ウーバーはサービス利用の需給逼迫を把握するため、需要逼迫指数というデータを集めている。ドライバーの数に比べて利用者が多い場合には、この逼迫指数が大きくなるという意味だ。ウーバーはこの指数が1.25、1.35、 1.45といった「ある境界値」を超えた際には価格を上げる、という特別な価格ルールを実施していた。

このルールに着目すると、この「境界値」の右と左であたかも実験が起こったような状況が生じるのだ。たとえば、横軸に描かれた需要逼迫指数が1.25よりも左にある場合、価格は通常価格の1.2倍に設定されるが、需要逼迫指数が1.25よりも右になった際には価格は1.3倍に設定されていた。つまり、1.25という境界線上の右と左であたかも「価格実験」が行われたような状況が生まれたわけだ。

(出所:『データ分析の力』p.228)

では、この価格の差に消費者は反応していたのか。それを見たのが縦軸に描かれたサービス利用率のデータである。実際に、価格が上昇する地点で利用率が大きく下がっていることがわかる。「逼迫指数が1.25を超える地点で大きく変化するのは価格だけである」という仮定さえ成り立てば、この図から「価格がサービス利用にもたらした因果関係」を調べることができる。

ビックデータを「宝の持ち腐れ」にしないために

以上の例を見てみると、データ分析の力で必要になることは、単に「ビッグデータ」を利用するだけではないことがわかる。データ分析で大切になる心得は、すし職人の仕事に通じるものがある。知り合いのすし職人曰(いわ)く、おいしいおすしを提供するのには最低限必要な3つのことがあるそうだ。

(1)すばらしいネタを仕入れること (2)そのネタのうま味を生かせる包丁さばきができること (3)目の前のお客さんが求めている味や料理を提供できること

『データ分析の力―因果関係に迫る思考法―』(光文社新書)。上の書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

これを「データ分析」に置き換えると、「良いデータを仕入れる」「データを切り取る角度の高さや切り口のセンスの良さを身に付ける」、そして「分析結果を使う側が求めている問いに答えられる分析結果を示す」という3つの要素が必要ということになる。

「ビッグデータ」に象徴される情報通信革命によって、多くの人が比較的容易に良いデータ(ネタ)を手に入れられるようになった。これはすばらしいことだ。しかし、同時に「データをどのような角度で切るのか」というセンスや考え方を身に付けないと、せっかくのネタを生かす分析はできない。

また、どんなに美しいデータ分析ができても、それがデータ分析結果を必要とする側にとっての問題に答えてくれるものでないと、すばらしい分析結果だけれどもまったく役に立たない。   

ビッグデータを宝の持ち腐れにしないためにも、真の意味での「データ分析の力」を身に付けることが、ビジネスパーソンにとって必須のスキルになりつつあるのである。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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