「習い事狂騒曲」に翻弄されまくる親の葛藤学歴だけでは足りない時代の子育て戦略|マネブ

マネブNEWS:〔2017.03.25〕日本の伝統精神は独断専行を認めていない松下幸之助 現在の記事数:236703件

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「習い事狂騒曲」に翻弄されまくる親の葛藤学歴だけでは足りない時代の子育て戦略


先行きの見えない時代、心配なのはわかりますが・・・・・・(写真:KY / PIXTA)学歴だけでは足りない。だから習い事という発想

悪名高き「学歴」の価値が薄れてきている。学歴がいらなくなったという意味ではない。学歴だけではダメな世の中になったということだ。

いま、教育熱心な親たちは子供に、学歴だけではなく、豊富な経験を積ませ、ペーパーテストでは測れない広い意味での学力、表現力、協調性、コミュニケーション能力、論理的思考力、課題発見・解決能力、やり抜く力、道徳性、感受性、そして体力などその他もろもろを、幅広く身に付けさせようとしている。

学校だけでは全然足りない。塾でも不十分。週末のたびに博物館や美術館や大自然に連れて行くのにも限界がある。そこで習い事という選択である。

しかしそこにまた、多大なストレスが生じる。

拙著『習い事狂騒曲 正解のない時代の「習活」の心得』にも記したが、いまの時代、習い事の選択肢は、水泳、ピアノ、そろばん、書道だけではない。「こんな力も身に付けさせたい」「あんなこともできるようになってほしい」。親たちの多様なニーズに対応し、習い事の種類も多様化・細分化が進んでいる。時代はまるで「習い事ビッグバン」であり、選択肢が多すぎて、何を選んでいいのかわからない。

「感度のいい親たちはいま、プログラミング、プレゼンテーション、ロジカルシンキング、マインドマップ、理科実験教室、そしてかなりガチな英語教室に興味津々です」と言うのは、リクルートの「ケイコとマナブ.net」のプロデューサー。

元AERA編集長の浜田敬子さんは、「取材をしたご家庭では、1週間に9つもの習い事をさせていました。特殊なケースではありません。結果、教育費のために仕事が辞められなくなります。子供の選択肢を増やすために、親の人生の選択肢を狭めているという皮肉な状態」として、教育への過剰投資に警告を発する。

まるで「習い事狂騒曲」

「これからの時代は、正解のない、先行きの読めない時代ですよね。こんな時代には勉強だけじゃダメですよね。もっと幅広い人間になってもらいたいと思うのですが、どんな習い事をさせるのが正解なのでしょうか?」という冗談のような相談を真面目に受けることが多い。まるで「習い事狂騒曲」。ほとんどパニックなのである。

どんな習い事を選ぶべきか、どうやって良い教室を探せばいいか、いつから始めるのがいいのか、どうやって子供のやる気を持続させればいいか、やめどきをどう判断すればいいか。

拙著で紹介したプログラミング教室の目的は、将来仕事に役立つプログラミングの最新技術を教えることではなかった。計算機やエクセルがある時代にそろばんを習う意味は、正確に帳簿を付けられるようになるためではない。英語を学ぶことは魅力的であるが、学習者本人に明確な目的と意欲がなければ、何年やってもあまり効果がないことは、多くの専門家が指摘するところだ。

そもそも習い事は早期職業訓練ではない。先行きが見えない時代に生きる子供たちのために、現在の価値観で生きる大人たちが未来を予測して、「これが必要」「あれも必要」と手を打つこと自体が滑稽なほどの矛盾である。

先行きは見えないのだ。だからこそ、不確かな予測を基にした損得勘定をするのではなく、どんな時代になっても生きていける普遍的な力を子供たちに携えさせなければいけない。習い事によってどんなスキルを身に付けるかよりも、子供の内面をどれだけ強くすることができるか、拡張することができるか、豊かにすることができるかこそ重視されていいだろう。

旅慣れた旅人は、バックパック1つで世界を飛び回ることができる。いつどこでどんな目に遭うかわからないからこそ、あれにもこれにも備えようとするのではなく、身軽な装備で旅に出る。いざとなったら、あり合わせのものでなんとかすればいいと覚悟を決めている。

旅慣れない人は、出発前からスーツケースが満杯だ。「こんなことがあったら困るから、これも入れておこう」「あんなことのために、あれも持って行こう」と考えるうちに、ビーチサンダルからダウンジャケットまで、栓抜きから非常食用の乾燥白米と梅干しまで、なんでもかんでもカバンに詰め込んでしまう。それでも不安は拭えない。

先行きの見えない時代に巣立つ子供のカバンに、いま、大人は何を詰め込むべきか。上記の例からも、答えは明白だ。

心配するのは親心。しかし、心配のあまり、子供のカバンにあれもこれもと詰め込めば、子供は身動きが取れなくなってしまう。念には念を入れて準備をしたのに、それでも想定していなかったことが起こってしまったら、「そのための道具は渡されていません!」とお手上げになってしまう。見守る親も、いつまでたっても不安である。

最低限の物を与え、臨機応変な使い方こそを教える『習い事狂騒曲正解のない時代の「習活」の心得』(おおたとしまさ著、ポプラ社)。習い事に関して親がやらなければいけない一連の活動を「習活」と呼び、地に足をつけた「習活」を行うための心得を説く。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

そうではなくて、子供のカバンには最低限の物を与え、臨機応変な使い方こそを教え、「これだけあれば、キミならなんとかなる」と送り出すべきではないだろうか。そうすれば子供は、知恵と勇気を振り絞り、親が思った以上の対応力を発揮し、自分の力で道を切り拓いていけるようになるのではないだろうか。そんな姿を見れば、親も安心して自分の人生を送れるはずだ。そしてそれがまた、子供にとっての手本となる。

英会話やプログラミング、プレゼンテーションのような「生きるためのスキル」をカバンの中にめいっぱい詰め込むために習い事をするのではなく、子供が本来もつ「生きる力」そのものを引き出す機会として、習い事をとらえたほうが健全だ。

「生きる力」と「生きるためのスキル」は違う。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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