「大人のインターンシップ」は実際に効果ある転職から育児・介護後の職場復帰も面倒見|マネブ

マネブNEWS:〔2018.01.23〕初調査!相談役・顧問の多い100社ランキング1位 現在の記事数:254999件

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「大人のインターンシップ」は実際に効果ある転職から育児・介護後の職場復帰も面倒見


社会人やシニア層などを対象にしたものも登場。インターンシップは学生だけのものではない (写真:EKAKI / PIXTA)

高いスキルを持ちながら、出産や介護、ご主人の海外赴任などで離職した女性の方。数カ月、試しに働いたうえで、再び就職することを検討してみませんか――。日本マイクロソフトは、2018年2月から、そんな“リターンシッププログラム”を始めると発表した。

一言で言えば、これは、職場復帰を目指す女性向けのインターンシッププログラム。対象は冒頭で述べた理由をはじめ、さまざまな事情で再就職していない女性。ブランクの年数や理由は問わないが、IT業界か他業界で、テクノロジー関連の仕事をしていた経験を持っているのが条件だ。

インターンシップといっても、内容は就業体験というより、社員の仕事に限りなく近い。期間は3カ月~6カ月。時間は相談の上だが、基本はフルタイムで、一部、テレワークの活用なども視野に入れている。

日本マイクロソフトは埋もれた女性を発掘「就職四季報」特設サイトはこちら

募集職種は、営業やサポートエンジニア、データアナリストなど。1カ月程度のトレーニングなどを行った後は、徐々に仕事のレベルを上げていき、人によっては配属された部署の仕事を一部任せるという。「正社員のサポートではなく、1人のプロとして採用する。面接も3回行う」(執行役員人事本部長の杉田勝好氏)。高度な仕事を任せるので、報酬も支払う。月給は仕事内容によるが、25万~45万円程度という。

このプログラムを始めた目的は、有能な女性人材を発掘することだ。プログラムの終了後は、正社員への登用が検討される。「クリエイティブなアイデアを生み出すには、ダイバーシティ(多様性)が必要。すでに障がい者雇用は取り組んでいるが、女性はまだまだ少ない」(杉田氏)。

ただ、テクノロジーのスキルを持つ女性人材自体も少なく、普通の募集方法ではなかなか集まらない。そこで出産などで離職した後、スキルを生かせていない女性を、インターンシップで発掘しようというわけだ。「日本企業は採用時にブランクをシビアに見ることが多いので再就職しにくい。埋もれてしまった有能な女性は全国にいるはず」と杉田氏。2018年度の採用予定は5~10人程度。2019年度も続けていく意向だという。

本来、インターンシップといえば、「学生の就業体験」を指すのが一般的だ。しかし、近年は日本マイクロソフトのように、社会人や学生以外の人を対象にした、インターンシッププログラムが各所で見られるようになった。成果をあげているものもある。

たとえば、公益財団法人東京しごと財団が運営する「東京しごとセンター」では、2014年、1度も就職経験のない29歳以下の求職者を対象にした「若者正社員チャレンジ」を始めた。マナー講習を受けた後、企業で20日間試しに働いたうえで、参加者と企業の双方が合意すれば就職できる内容だ。2016年度は552人が参加し、就職にこぎつけた人も多いという。「受け入れ先の多くはIT企業。よい人材が確保できると、毎年のように、利用する企業もある」(正規雇用対策担当課長の永阪彰氏)。

また、同じ東京しごとセンターの「しごとチャレンジ65」は、65歳以上のシニアが興味のある企業で、1日3時間で最大3日間、試しに働くことができるプログラム。2016年度は136件の参加があり、約半数が受け入れ先に就職したという。

育児をしながらまた働き始めたママNPO法人あっとわんが管理運営する、春日井市東部子育てセンター。ここで育児をしながら働きたいと考える人向けに、「ママインターン」を実施している (筆者撮影)

育児後の再就職に道を開くインターンシップもある。愛知県春日井市を拠点にするNPO法人あっとわんでは、2014年から、管理運営する春日井市東部子育てセンターで、「ママインターン」を実施している。

育児をしながら働きたいと考える女性が対象で、週2回、10~14時の間に、センターの受付業務や子供の遊び相手、子育てイベントの運営業務などを行う内容だ。期間は半年間が基本で、1日2000円の交通費などの実費も支給している。

これで仕事に興味を持ち、4人があっとわんの正規スタッフになったという。「ほかの参加者からも『子育てしながら働くイメージがわいた』『自分がいなくても子どもが立派に留守番できるとわかった』と喜びの声をいただいています」(代表理事の河野弓子氏)。

この実績が評価され、2016年からは春日井市の委託事業にも選定され、その運営も任されている。一般企業を受け入れ先にし、初回から17人が参加した。就職をあっせんする目的のプログラムではないが、これがきっかけで、受け入れ先に就職した人もいるそうだ。

共通して言えるのは、体験者のメリットは、自分に合う職場かどうかを見極めたうえで就職できること。ブランクがある人にとっては、「ならし運転」の効果もある。一方、受け入れ先にとっても、人材を見極めてから採用できる。双方にメリットがあるわけだ。

もっとも、既存のプログラムの大半は、今の仕事を続けながら参加することができない。「他の仕事に興味があるので試してみたい」というニーズには応えられていなかった。そうしたニーズを受けて、今の仕事を辞めずにほかの仕事が体験できる仕組みを用意したのが、仕事旅行社が2017年4月から行っている、「おとなのインターン」だ。

そもそも同社は、有料で1日限りの職業体験ができる「仕事旅行」というサービスを、2011年から手がけていた。その過程で、体験先に感銘を受けてそのまま転職した、というリクエストを複数の人から受けていたという。「それなら体験をきっかけとした転職サービスがあってもよいのではないかと考えた」(代表取締役の田中翼氏)。

可能な受け入れ先は約40社。教育や飲食、広告、町おこし、金属加工など、業種も豊富だ。体験期間は、1日だけのものもあれば、数日~数カ月間におよぶものもある。多くの場合は体験後、その企業で正社員になる道が開かれている。

職場体験で転職前の不安も解消できた

このサービスを利用して転職を果たしたのが、デザイン事務所で働いていた今井一成さん(仮名・30歳)。在職中から「さらに制作の前段階から携わってみたい」と考え、企業のブランディングを手がける「むすび」という会社で、3日間の職場体験をした。1回あたりの時間は2時間と短かったが、クライアントと行うワークショップやコピーライティングを疑似体験することで、仕事の大枠がわかり、採用面接を希望したそうだ。

「私も転職にあたっての不安が解消されましたが、企業側も不安だったはず。私のような未経験者を受け入れていただけたのは、インターンがあったからこそだと思う」と、今井さんは振り返る。今後はユーザーからの要望が多い、「1回の時間は短いが、週1回ペースで長期間働ける」受け入れ先を増やしていきたい、と田中氏は目論む。

いずれも採用色の強い取り組みだが、一方で、会社を背負って立つ人材を鍛えるためのインターンシッププログラムもある。その代表が日本生産性本部のサービス産業生産性協議会が運営する「大人の武者修行」だ。2014年から始まり、3年間で約100人が参加している。

「始めたきっかけは、セミナーなどを開催しても、その後、職場で改善につながったケースが少なかったから。それならば、実際に優良企業の職場で一緒に汗を流せば、その企業の考え方やノウハウを職場に持ち帰っていかしてもらえるのではないかと考え、企画した」と、サービス産業生産性協議会の柿岡明チーフプロジェクトマネジャーは語る。

「大人の武者修行」の参加者(修行者)の主なターゲットは、サービス産業の中小企業で働く次世代の経営人材。ほかのプログラムと大きく異なるのは、条件を満たした中小企業の社員が対象であり、必ず、勤務先の許可が必要だということ(会社単位の参加も可能)。研修費も勤務先が支払う。ただ、経済産業省の補助事業なので、条件を満たすと、研修費の半分は国から補助される。補助を受けた場合、研修費は、期間が10日間以内の場合は5万円。交通費や宿泊費などの実費も半分補助される(上限は合計で100万円)。

受け入れ先は約100社。いずれも、サービス産業生産性協議会の表彰制度で受賞歴のある優良企業で、地域は北海道から鹿児島まで分布している。ホテルや飲食、バス会社、ビルメンテナンス、自動車ディーラー、システム開発など、多様な業種がそろう。

修行者は働いてみたい企業を選び、最短3日間から働ける。最大で3カ月、平均では1~2週間程度の人が多いそうだ。期間が長いことから、志願書の提出や面接などの審査がある。仕事内容は企業によって異なるが、「武者修行」だけあって、客先に出向いたり、会議に参加したり、と社員に近い形で働くことが多い。

優良企業に出向きノウハウをつかめ名古屋で行われた「大人の武者修行」の説明会。事例を説明しながら中小企業の参加を促している (筆者撮影)

静岡で観光関連事業を手がける、TTCの経営企画室経営企画部課長の田村典靖氏は2016年、三重県南部のみかん農園「かきうち農園」で、約2週間働いた。交通不便な土地にありながら、県外からも若者がわざわざ就職する農園だ。田村氏はここで収穫などの農作業をこなす一方で、かきうち農園の垣内清明社長と大学の商品開発会議や交流会などに出向いて、商品のプレゼンまでさせてもらったという。

「実務もさることながら最も勉強になったのは、垣内社長から『どんな考えにもとづいて、経営判断をしているのか』を伺えたこと。先を見据えて動かなければならないことや、部下を成長させるための関わり方など、マネジメントに必要な視点を学ぶことができた」と田村氏。勤務先に復帰してからは、学んだことをもとに、自社商品やサービスを見直したり、部下への指示の仕方を変えたりと、マネジメントに役立てているそうだ。

「その他にも、『社員同士が意見を伝え合うカードをつくった』『出張サービスを立ち上げた』『ダイレクトメールの送り方を変えた』など、さまざまなアクションにつながったという事例が数多く生まれている」(柿岡氏)。

このプログラムは、受け入れ先にもメリットがある。1つは、修行者の意見によって、今まで気づけなかった改善点や課題を発見できることだ。修行者に対し、修行最終日に、受け入れ先の改善レポートを出してもらう企業もあるという。もう1つ、期間限定でも新顔が加わること自体、停滞した職場の雰囲気を活性化させる効果もある。毎年のように、受け入れ続けている企業は何社もあるが、それはこうした理由からだ。

学生でなく、社会人を対象にした”大人のインターンシップ”は、参加者と受け入れ先の双方にメリットがある。現状ではあまり知られていないが、成功例が広まれば、一気に普及が進む可能性もあるだろう。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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