ドイツの政治空白はEUの将来に影を落とす2017年は予想外の好況、18年はどうなる?|マネブ

マネブNEWS:〔2018.11.03〕『ブラックスキャンダル』がメチャ面白い!「鳥肌立 現在の記事数:288039件

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ドイツの政治空白はEUの将来に影を落とす2017年は予想外の好況、18年はどうなる?


首相官邸には恒例のクリスマスツリーが設置された。クリスマスまでに連立協議はまとまりそうもない(写真:AP/アフロ)

ユーロ圏経済の成長加速は2017年の世界経済の最大の想定外といっても過言ではないだろう。圏内の格差の縮小も進み、遅れていた投資の回復にも弾みがついてきた。2017年のユーロ圏実質GDP(国内総生産)予測のコンセンサスは、2016年末の時点で1%台半ばだったが、直近では2%超に拡大、世界金融危機後で最も高い成長が見込まれている。

この間、日本の経済見通しも大きく引き上げられているが、修正幅ではユーロ圏に及ばない。米国の場合、概ね1年前のコンセンサス通りの推移となっている。2017年の世界経済の上振れに、人口およそ3億4000万人のユーロ圏が貢献した部分は決して少なくないはずだ。

当初、2017年のユーロ圏の成長見通しは、国政選挙が相次ぐことによる政治的な不確実性が経済活動に一定の影響を及ぼすとの見方から抑えられた面がある。結果として、各国の国政選挙では、EU(欧州連合)の統合を支えてきた既存政党への支持の低下が広く確認されたが、主要国で反EUのポピュリスト政党による政権掌握には至らなかった。それゆえ、経済活動を妨げなかったと見ることもできる。

政治的な不確実性は2018年にも引き継がれるテーマだ。春に総選挙が予定されるイタリアでは、ポピュリスト政党・五つ星運動が与党・民主党を僅差ながらリードしており、票が割れる結果となりそうだ。ドイツの新政権樹立に向けた取り組みは、越年が確実視される情勢だ。

越年が見込まれるドイツの政治空白

9月の連邦議会選挙ではメルケル首相の4選が堅いとされていたが、2カ月余り経過しても政権樹立のメドが立たない。

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メルケル首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と自由民主党(FDP)、緑の党との連立協議決裂後、シュタインマイヤー大統領の説得で大連立を拒否していた社会民主党(SDP)が協力の可能性を模索し始めた。

しかし、9月の連邦議会選挙で、戦後最低の得票率に終わったSPD内では大連立への反対も根強く、シュルツ党首も慎重な構えを崩していない。仮に、12月7日に始まるSPDの党大会で、大連立に向けた協議が承認されたとしても、本格的な協議の開始は年明け後、政権発足は3月にずれ込む可能性がある。

大連立のメドが立たなければ、少数政権の樹立、ないし再選挙が選択肢となる。9月連邦議会選挙後の世論調査では支持率に大きな変動はない。再選挙を行ってもドイツのための選択肢(AfD)が大連立批判の受け皿となる構図は変わりそうにない。政権樹立に時間を要し、さらに政治空白が長引くだけに終わりかねない。

欧州大陸諸国では、選挙結果の判明から新政権の樹立までの政治空白の長期化がしばしば起きている。

多言語・多民族国家のベルギーでは政党間の対立で連立協議が難航し、2010年6月の総選挙から6党による連立協議がまとまるまでに実に1年半という史上最長の政治空白が続いた。スペインは2015年12月の総選挙後の連立協議がまとまらず、2016年6月の再選挙を経て、同年11月に第2次ラホイ政権が少数政権として発足するまで、およそ1年の政治空白があった。今年3月に総選挙を行ったオランダでは反イスラムの自由党が第2党に躍進。第1党となったルッテ首相率いる自由民主国民党とキリスト教民主同盟など3党との連立協議がまとまり、10月に第3次ルッテ政権が発足するまで戦後最長となる7カ月もの時間を要した。

景気に水を差すことはないが、EUの改革を妨げる

政治空白の期間も、選挙前の首相が率いる暫定政権が機能するため、政策が混乱して景気に急ブレーキを掛けるような展開とはならない。スペインは、政治空白が続いた2016年も途切れることなく年率3%を超えるペースでの成長が続いた。オランダも、7カ月の政治空白が生じた2017年に景気拡大のペースが加速、年間の成長率は2007年以来の3%台に乗る見通しだ。ベルギーの場合は、政治空白の終盤に景気が減速したが、原因は内政ではなく、ユーロ圏での債務危機拡大という外圧にある。このときは、外圧が政治空白の終結を促した面もある。

ドイツの政治空白も足元の力強い景気の拡大に水を差すことは考えにくい。現時点では、2017年に続き2018年も2%程度の景気拡大ペースを維持するというのがコンセンサスだ。代表的な景気先行指標であるIfo経済研究所が作成する企業景況感指数は、先行きに対する強気な見方がリードする形で、11月に史上最高値を更新した。90%の回答がFDP、緑の党との連立協議決裂を反映していないが、その後の展開が大きく企業マインドを損なうようには思われない。

ドイツの政治空白が、短期的な経済見通しには影響しないとしても、EUの盟主の政権基盤の弱体化は、EUの改革を滞らせることにはなる。

EUの改革は急務だ。英国の離脱、難民とテロの脅威、加盟国に広がる懐疑主義とポピュリズム、ユーロ圏を構成する国々と中東欧の新規加盟国との亀裂、トランプ政権の米国第一主義など、新たな課題への対応を迫られている(東洋経済オンライン記事「統合のマルチスピード化はEUの維持に有効か」参照)。

2018年はEU改革の正念場の年だ。2019年に入ると3月30日に英国がEUを離脱、6月には欧州議会の選挙となる。現在のEUのツートップである欧州委員会のユンケル委員長とトゥスク首脳会議議長、さらにECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁も10~11月に任期が終了する。英国のEU離脱関連協議は、承認手続き等を考えると2018年秋が期限とされるが、EU・ユーロ制度改革も、体制が刷新される前の2018年に主要な課題にメドをつける必要がある。

トゥスク首脳会議議長の提案でまとめた首脳会議の作業計画書(首脳アジェンダ)によれば、今年12月14~15日の首脳会議でユーロ制度改革関連のスケジュールの合意を形成し、来年6月の決定を目指すことになっている。だが、12月首脳会議の段階では、ドイツは、党派によって見解が分かれる分野で踏み込んだ意思表明を行うことができない。政権樹立が遅れれば、来年6月の決定に向けたプロセスにも影響が及ぶ。

改革の好機を逃せば、将来に禍根

筆者は、メルケル首相が、4期目のレガシーとして、フランスのマクロン大統領とともに、ユーロ制度改革に、これまでよりも前向きに取り組むことを期待していた(東洋経済オンライン「EUは分裂どころか統合を深める改革に進む」参照)。今もドイツがEUとユーロの改革に背を向けることはないと思っている。しかし、連邦議会選挙によって、ドイツ国内の世論の分断が浮き彫りになったことで、内政により重点を置かざるをえなくなったと思っている。

ユーロ圏は、債務危機への対応を迫られたことで、不完全ながらも財政や銀行の危機の未然防止と危機管理の仕組みを備えるようになっている。ユーロ圏が、世界的な景気拡大と低インフレ、企業業績の好調を背景とする「適温相場」崩壊の震源地になるリスクや、ユーロ圏がとりわけ深刻な影響を受けるリスクは大きく低下したと見ている。

それでも力強い景気回復というユーロ制度改革の好機を逃せば、いずれそのツケを払う局面が訪れるのではないかという不安がよぎる。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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