福島原発事故で町民の99%がいまだ町外避難の浪江町、異例の町長選が私たちに問う問題|マネブ

マネブNEWS:〔2018.10.24〕【Twitter投稿で戒告処分】言論の自由がない 現在の記事数:287396件

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福島原発事故で町民の99%がいまだ町外避難の浪江町、異例の町長選が私たちに問う問題


福島県浪江町長選挙

 異例づくめの戦いに幕が下りた。

 8月5日投開票の福島県浪江町長選挙。吉沢正巳候補(無所属新人/非営利一般社団法人「希望の牧場・ふくしま」代表)と、吉田数博候補(無所属新人/前浪江町議会議員)が一騎打ちで相まみえた。

 組織力で勝る吉田氏が5231票を得て当選。吉沢氏は1282票と、4000票近く離された。この差を受けて吉沢氏の主張を「浸透しなかった」と報じたメディアもあったが、果たしてそうだろうか。

 浪江町は福島県浜通りの北に位置し、双葉郡に属する自治体。東京電力福島第一原子力発電所にほど近いが、町内には原発の立地がなく、電源三法による交付金は受け取っていない。建設が予定されていた浪江・小高原子力発電所は1970年代からの草の根の反対運動で着工は繰り延べとなってきた。

 にもかかわらず、浪江町は2011年3月11日の原発事故で甚大な被害を被った。事故当時、同町の人口は2万1542人。今年5月31日現在、住民基本台帳上の人口は1万8256人だが、実際の居住人口は234人にとどまる。避難のため、町民は全国に散り散りになっている。現在も町の全人口の98.72%が町外に避難したままだ。

 復旧・復興の陣頭指揮に当たってきた馬場有前町長が6月17日、体調不良を理由に辞職願を提出。30日付の辞職を待たず、27日に死去した。

高まらない有権者の関心

 7月26日告示の町長選には吉沢、吉田両候補が出馬。吉田氏は事実上、馬場氏の後継候補とみなされていた。町議としての経験を生かした「ふるさと再生」を掲げ、(1)被災町民の生活再建、(2)ふるさと浪江の再生・再興、(3)被災の経験を次世代に引き継ぎこれからの日本に生かす──を3つの柱とする。だが、選挙戦で目についたのは「弔い」の旗印だ。

 吉沢氏は原発事故後、「生き証人」である被曝牛300頭を牧場で世話してきた。事故発生後の11年3月18日、真っ先に東京電力本店に乗り込んだ当事者でもある。

 主な公約は、(1)東電慰謝料の月50%増額、(2)汚染水の海への放出絶対反対、(3)「浪江オリジナル」の燃料生産農業──の3つだ。

 町民が離散していることから、通常は5日間の選挙期間が10日間となった。吉沢氏は浪江町内はもちろん、福島県内、県外を問わず精力的に回った。「浪江町民がどこに住んでいるのか」を掘り起こしながらの活動。個人情報保護の壁もあり、作業は容易ではない。 吉沢氏は7月28日、東京都内で街宣。経済産業省と東電本店に要望書を提出した。

「東電慰謝料の月50%増額は当然。事故当時の浪江町での避難状況は双葉郡の他の自治体とは違って、特別ひどいものでした。恐怖の避難に対する増額を私が町長となって、全町を挙げて裁判で勝ち取っていく。今秋に実施される福島県知事選では、候補者に汚染水の問題を問い掛けたい。反対の立場を取らないのか、と。汚染水は請戸漁港の漁師にとって死活問題となります」(吉沢氏)

 公約のなかでもひときわ目を引くのが、エネルギー政策だ。

「多収穫米などからガソリンに混合するエタノール燃料を生産します。これは放射能の心配がまったくない燃料生産。町内の農家は生きがいと収入を得られます。浪江農業と町の復活を目指したい」(同)

 選挙戦突入後、福島県内の主要メディアは異例の態勢で報道に力を入れてきた。だが、生活の場を町内に持たない有権者の関心は決して高いとはいえなかった。投票率は43.08%で、前回を12.97ポイント下回っている。

 告示前に行われた公開討論会。報道では数十人規模の動員と伝えられた。

「半分以上は報道関係者。実際に足を運んだ浪江町民は10人前後というところでしょう。居住実態がなければ、町民としてのアイデンティティーは日々薄れていく。去る者は日々に疎しとでもいうか。やむを得ないことですね」(選挙関係者)

町から村へ

 遠くない将来、浪江町は10分の1程度にダウンサイズ。「村」となることが有力視されている。

 通常国会が閉幕した直後ということもあり、地元選出の国会議員を巻き込んだ与野党対決の構図まではつくれなかった。経産省や東電本店、首相官邸、自民党本部などで吉沢氏は訴えた。

「除染をしても、放射能は残っています。避難解除をしても、浪江町には帰れません。浪江町は人口が10分の1、2000人ほどの寂しい村のような状態になっていこうとしております。さようなら、浪江町」

 候補者が自ら自治体に別れを告げる。こんな選挙戦はなかなか見られるものではない。だが、吉沢氏は言葉を継いでみせた。

「絶望は必ず希望に転換できる。原発を乗り越える時代を浪江町から全国に発信します」

 霞が関や永田町で足早に通り過ぎる聴衆に対し、「次は皆さんの番だ」と声を掛けた吉沢氏。敗戦を受け、「3つの公約は、吉田町政と県、国へ今後も訴え続けていく」と決意を新たにした。これは終わりではない。始まりだ。(文=片田直久/フリーライター)

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引用元:ビジネスジャーナル

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