大口病院・20人殺害か…久保木容疑者、他の看護師への復讐願望を患者に「置き換え」か|マネブ

マネブNEWS:〔2018.07.20〕覚せい剤事件の酒井法子、「子どもの健全育成大使」 現在の記事数:262900件

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大口病院・20人殺害か…久保木容疑者、他の看護師への復讐願望を患者に「置き換え」か


患者が死亡したことについて頭を下げる大口病院の高橋洋一院長(写真:毎日新聞社/アフロ)

 横浜市の大口病院(横浜はじめ病院に改称)で2016年9月、点滴に異物が混入され入院患者2人が中毒死した事件で、当時この病院の看護師だった久保木愛弓容疑者(31歳)が殺人容疑で逮捕された。

 久保木容疑者は、2人とも消毒液を体内に混入させて殺害したことを認め、「他の入院患者の体内にも消毒液を入れた。20人ぐらいやった」と供述しているという。犯行の動機については、「容体の急変を見るのが嫌で、自分がいないうちに死んでほしかった」と話しているようだが、そんなことで20人以上も殺害するだろうかという疑問がわく。

 この疑問を解く鍵は、「自分の勤務中に患者が亡くなると、遺族への説明をしなければならず苦痛だった」という供述にあると私は考える。「自分の勤務中に亡くなるかもしれない容体の悪そうな患者を選んで、消毒液を混入した」という趣旨の供述もしているので、患者の容体が急変して死亡し、さまざまな処置に加えて遺族への説明をしなければならなくなる状況がよほど「苦痛」で、どうしても避けたかったのだろう。そういう状況が久保木容疑者に強い恐怖と不安を引き起こした可能性も考えられる。

『無差別殺人の精神分析』(片田珠美/新潮選書) このように特定の状況への恐怖と不安が強くなり、それが6カ月以上続くと、精神医学的には「限局性恐怖症(Specific Phobia)」とみなされる。問題は、恐怖と不安を自分ではコントロールできないので、それを引き起こす状況を何としても回避しようとすることだ。高所恐怖症の人が、高いところに上がるのを避けるのと同様に、自分にとって苦痛な恐怖と不安を誘発する状況をあらゆる手段によって避けようとする。

 久保木容疑者に恐怖と不安をかき立てたのは、患者の死亡によって自分が遺族に説明しなければならなくなる状況だったので、それを回避するために自分の勤務時間外に患者を死亡させようとしたわけである。あまりにも自己中心的かつ短絡的な動機だが、「限局性恐怖症」の人の行動パターンを決定するのは回避であることが多い。

「限局性恐怖症」を病気とみなすかどうかについては、精神科医の間でも議論が分かれている。アメリカでの臨床研究によれば、何らかの対象や状況に対する恐怖症を持つ人は人口の10%程度ということがわかっており、必ずしも病気ではなく、治療対象にはならないという意見もある。ただ、久保木容疑者のように強い苦痛を覚えており、それを回避するために問題行動を起こす場合は、きちんと治療すべきだろう。 少なくとも、患者が死亡する状況によって誘発される恐怖と不安がもたらす苦痛に耐えきれない点で、看護師としての適性に問題があったわけだから、それを自覚すべきだった。そのうえで、そういう状況に直面しなくてすむ他の病院や外来だけの診療所などに転職するとか、看護師を辞めて別の職業に就くという選択肢もあったはずだ。そうしていたら、一連の犯行に手を染めずにすんだように思われる。

怒りの「置き換え」

 もっとも、自分の勤務時間中に患者が死亡する状況によってかき立てられる恐怖と不安を避けようとしただけで犯行に及んだとは考えにくい。というのも、久保木容疑者は、担当患者が以前死亡した際に同僚らから自分のミスの可能性を指摘されたとも説明しているので、もともと同僚や上司などに対して怒りを覚えていた可能性があるからだ。

 大口病院では、入院患者が相次いで死亡した4階で、2016年4月から8月にかけて看護師の服が切り裂かれたり、飲み物に異物が混入されたりするトラブルが起きていた。これが久保木容疑者によるものなのかどうかはこれから慎重に調べなければならないが、もしそうだとすれば、他の看護師に対する怒りをこのような形で表現したと考えられる。

 ただ、こういう手法を続けると、自分が疑われるが恐れがある。だから、それを続けるわけにはいかず、怒りの矛先を患者に向け変えて、患者の点滴に無差別に消毒液を入れたのではないか。

 このように、怒りを覚えた相手に対して直接怒りを出すわけにはいかないので、その矛先を別の対象に向け変えることを精神分析では「置き換え」と呼ぶ。この「置き換え」によって、別の看護師の勤務時間中に患者が死亡するように仕向けたわけで、復讐願望を満たそうとしたともいえる。

 大口病院のように終末期の患者を数多く受け入れる病院では、死亡退院が多く、病状が改善して退院できる患者はまれである。そのため、医師も看護師も、自分たちの治療が実ったという実感を持ちにくく、モチベーションを保つのがなかなか難しい。しかも、このような職場環境はストレスや怒りを生み出しやすい。そういう事情も、点滴連続中毒死事件の背景にあるのではないかと長年の臨床経験から指摘しておきたい。(文=片田珠美/精神科医)

参考文献片田珠美『無差別殺人の精神分析』新潮選書

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引用元:ビジネスジャーナル

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