『モンテ・クリスト伯』最終回直前で話題沸騰のワケ、ラスト2時間SPは映画クオリティか|マネブ

マネブNEWS:〔2018.06.21〕『花のち晴れ』、『花男』続編なのに脚本が放送事故 現在の記事数:261909件

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『モンテ・クリスト伯』最終回直前で話題沸騰のワケ、ラスト2時間SPは映画クオリティか


モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐― オフィシャルサイト - フジテレビ」より 各話の平均視聴率は5.1%、5.7%、7.1%、6.5%、5.3%、6.0%、5.9%(ビデオリサーチ、関東地区/以下同)の低空飛行で、プライムタイムの連続ドラマで最下位(テレビ東京系列を除く)に甘んじていた『モンテ・クリスト伯 –華麗なる復讐-』(フジテレビ系)。しかし、いわゆる“ラス前”の8話では自己最高の7.4%に急上昇し、6月14日の最終回2時間スペシャルに向けて希望が広がっている。

 昨年から、フジテレビの『木曜劇場』(22時~)では『嫌われる勇気』『人は見た目が100パーセント』『セシルのもくろみ』『刑事ゆがみ』『隣の家族は青く見える』が放送されたが、平均視聴率は4~6%台にとどまり、3回以上7%を超えた作品はなかった。

 さらに、内容に関する視聴者の声も見逃せない。序盤は「拷問シーンが見ていられない」「『愛は勝つ』のフラッシュモブがサムすぎる」「ディーンの顔が変わっていないのに誰も気付かないのは変」などの酷評ばかりだった。

 ところが、中盤以降は「復讐の方法がゲスなのに、切なくて目が離せない」「先の読めない展開にひき込まれっ放しで、『なんで誰も気付かないの?』とか、どうでもよくなった」などとコメントが一変。「今期No.1」という声が飛び交っている。

 なぜ、視聴率・評判ともに序盤の不振を覆し、終盤に急浮上できたのか。

徹底した悪事がむなしさと切なさをあぶり出す

 その理由は、脚本・演出のダイナミックさに尽きる。原作は約170年前にフランスで書かれた小説であり、何度も映像化されてきた名作。それだけに、復讐劇であることに加え、あらすじもネタバレしていた。

 そのため、放送前の期待値は低く、序盤の展開には「荒唐無稽すぎて無理がある」という否定的な声が続出。実際、「日本の金融ファンドがテロリストに資金提供?」「ラデル共和国での脱獄からシンガポールや日本にどう入国した?」「わずか1年で投資家として大成功?」「日本人が香港マフィアに借金?」と、疑問を抱かれがちなシーンが多かった。

 しかし、3話あたりからそんな声は聞こえなくなっていく……。柴門暖(ディーン・フジオカ)あらためモンテ・クリスト・真海の復讐には、一切の妥協も抜かりもなし。直接的な復讐相手だけでなく、家族たちにも殺人をそそのかし、近親相姦を仕向け、危険な目に遭わせるなど、悪事の限りを尽くしていく。真海が悪さを徹底するほど、復讐のむなしさや切なさがあぶり出され、視聴者を釘づけにしているのだ。

 その濃密な人間関係と悪事の数々は、1990年代の“ジェットコースタードラマ”と似ている。吉田栄作主演『もう誰も愛さない』、三上博史主演『あなただけ見えない』、後藤久美子主演『もう涙は見せない』の3作はいずれもフジテレビの作品であり、「かつてのお家芸が帰ってきた」といえるかもしれない。ジェットコースタードラマも、フジテレビが持つアイデンティティのひとつではないか。

連ドラ本来の醍醐味と大河ドラマ級キャスト

 当作は真海による壮大な復讐劇であり、すみれ(山本美月)をめぐる愛憎劇なのだが、それだけにあらず。「殺るか殺られるか」のサスペンス、8話で未蘭(岸井ゆきの)が口から泡を吹いて倒れたようなホラー、留美(稲森いずみ)が若い男たちと不貞を重ねるセクシーなど、アダルト向けの多彩なテイストが盛り込まれている。 さらに、1話完結の定型を楽しむ作品が多く、なかでもお決まりの展開が繰り返される刑事・医療ドラマが視聴率上位を独占していることも、当作の熱狂と無関係ではないだろう。連ドラらしい全話を通した壮大なテーマがあり、ヒリヒリとするような「ヤバイ」シーンの連続と先の読めない展開が、視聴者をひきつけている。つまり、「連ドラ本来の醍醐味」を体感している人が多いのだ。

 そんな脚本・演出に応えるべく奮闘する俳優たちの演技も見応え十分。ふだんはその演技に賛否両論を巻き起こすディーンも、「復讐心を宿すクールなセレブ」のモンテ・クリスト・真海という役は彼のパーソナリティにフィットしている。

 周囲にも、重厚な演技に長けた新井浩文、高橋克典、三浦誠己、渋川清彦、木下ほうか、尾上寛之。貫禄十分の大ベテラン・伊武雅刀、田中泯、風吹ジュン。妖しげな色気を放つ稲森いずみ、山口紗弥加。才能あふれる若手の岸井ゆきの、高杉真宙、葉山奨之、桜井ユキ。アジアで活躍する葉山ヒロ、ジョーナカムラ。

 若年層のファンが多い大倉忠義と山本美月も含め、こうして挙げていくと、大河ドラマ級のボリュームとバランスを兼ね備えたキャスティングであることがわかる。

 視聴率低迷で予算削減を求められるのはフジテレビだけではなく、連ドラは大半の作品で主要キャストが減る一方。「連ドラ本来の醍醐味を追い求め、スキのないキャスティングを実現させた」という意味で、当作のプロデューサーはもっと評価されるべきだろう。

フジテレビが誇る演出家・西谷弘の映像美

 最後に触れておきたいのは、最終回が「2時間スペシャル」である意味。これは、いわば「映画化」と思って見ればいいのではないか。近年の連ドラには、「最終回の後に、続きは映画で」というパターンがしばしば見られる。そのたびに視聴者は不満を抱いてきたが、その点「2時間スペシャルですべて出し切ろう」という当作は潔い。

 当作のチーフ演出は、『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』『白い巨塔』『刑事ゆがみ』らを手掛けた西谷弘。映画でも『容疑者Xの献身』『真夏の方程式』『アマルフィ 女神の報酬』『任侠ヘルパー』などでメガホンを取った経験を持つ、文句なしの名手だ。

 当作でも、暖が拷問され、ファリア真海(田中泯)と出会い、絶望のなか必死に学び、海中で必死にもがいて脱獄するまでのシーンなど、シネマスクリーンで見ているようなスケールの大きな映像が何度も見られた。最終回は、さらなる映画クオリティの映像を期待していいだろう。

 無実の罪で異国の牢獄に送られ、婚約者と離ればなれになり、家は奪われ、母親は孤独死。そんな暖の復讐劇は、どんな結末を見せるのか。苦情やコンプライアンスへの対策で表現の自主規制が進むなか、攻めに攻めた当作の最後は、サブタイトル通りの華麗なるフィナーレを飾ってほしい。(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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引用元:ビジネスジャーナル

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