中身なき米朝共同声明の謎…北朝鮮での中国人大量死亡事故と、軍最高幹部の一斉更迭|マネブ

マネブNEWS:〔2018.08.22〕【翁長雄志・沖縄県知事】が本土に問い続けたことー 現在の記事数:285309件

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中身なき米朝共同声明の謎…北朝鮮での中国人大量死亡事故と、軍最高幹部の一斉更迭


米朝首脳会談 会場ホテル内を散策(写真:ロイター/アフロ)

 シンガポールで12日、予定通り米朝首脳会談が行われ、米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が共同声明に署名した。その内容はというと、米側の最大の狙いだったはずの「北朝鮮の完全な非核化」について、「期限・具体策に触れず」(朝日新聞)、「北、検証なき半島非核化」(産経新聞)などと報じられているように、まったく新味がない内容になったといわざるを得ない。

 トランプ氏は会談前、首脳会談を実施しても文書は発表されないとツィッターで予告していたが、文書の内容はこれまで出ていたものだけに、各紙では識者から「失望」との声が多く寄せられている。なぜトランプ氏が主導して、このような中身のない共同声明に署名したのか、謎が残る。

 本稿では、この謎を解いてみたい。

朝鮮人民軍の異例人事

「ここまで来る道は容易でなかった。我々には足かせとなる過去があり、誤った偏見と慣行が我々の目や耳をふさいでいたが、我々はすべてを乗り越え、この場に来た」

 これは13日、米朝首脳会談で金氏が発した最初の発言だけに、金氏の万感の思いが込められているようだ。つまり、米国と北朝鮮は68年前に勃発した朝鮮戦争で血を流し合った仇敵であり、その後もずっと敵対してきた。それだけに、北朝鮮国内には米国について偏見があり、米国の言うことに耳を貸そうとせず、金氏とトランプ氏との首脳会談に反対する者も多数いた。しかし、金氏は彼らの反対を乗り越えて、はるばるシンガポールまでトランプ氏と会いに来た――と言いたかったのであろう。

 これに対して、トランプ氏は「その通りだ」と述べた後、すぐに金氏に対して「ありがとう。みなさん、ありがとう」と応じたのである。北朝鮮国内では多数の反対があったが、金氏はそれらの反対をねじ伏せてトランプ氏の求めに応じて首脳会談が開催できたことに、トランプ氏が直接、礼を言うという、冒頭から異例の展開となった。

 一時は首脳会談の日程が決まっていながら、北朝鮮の金桂冠・第一外務次官や崔善姫外務次官の、外交上からも常識的に見ても明らかに非礼だと思われる発言が飛び出し、激怒したトランプ氏が会談キャンセルを表明したほどだった。ただ、両氏が首脳会談に反対したというわけではないだろう。あくまでも、北朝鮮外交特有の挑発的な言動をとることで、外交上優位なポジションをとるという戦略だろうが、外交経験がないトランプ氏には北朝鮮流の“高等戦術”が通じなかっただけといえよう。  では、金氏が言外ににじませた反対勢力とは、誰だったのか。  思い当たるのは、首脳会談の9日前の6月3日、韓国の通信社・聯合ニュースが韓国情報当局の関係者の話として、「北朝鮮の人民武力相(韓国の国防相に相当)が朴永植(パク・ヨンシク)氏から努光鉄(ノ・グァンチョル)人民武力省第1次官に、朝鮮人民軍の軍総参謀長が李明秀(リ・ミョンス)氏から李永吉(リ・ヨンギル)総参謀部第1副総参謀長に交替した」と報じたことである。

 すでに、これ以前の5月26日には「朝鮮人民軍総政治局長が金正角(キム・ジョンガク)氏から金秀吉(キム・スギル)前平壌市党委員長に代わった」と北朝鮮メディアが伝えている。米朝首脳会談という重要な国家行事を目前に控えて、軍のスリートップが交代というのは考えにくい。少なくとも定例の人事異動ではなさそうだ。

 このため、韓国統一部の白泰鉉(ペク・テヒョン)報道官は6月4日の定例会見で、北朝鮮の朝鮮人民軍トップ3人の交代説について、「総政治局長が金秀吉(キム・スギル)氏に代わったことは確認されたが、人民武力相と軍総参謀長は(交代が)公式に確認されていない」としながらも、「いずれも交代されたなら、異例の状況」と指摘。聯合ニュースは、これについて次のように解説する。

「北朝鮮は今月12日のシンガポールでの朝米(米朝)首脳会談を控え、米国と非核化交渉を進めている。同会談の結果、金正恩国務委員長(朝鮮労働党委員長)が核放棄を最終的に決断すれば、軍内部の強硬派が不満を持つ可能性があり、これを抑えるため軍トップを交代したという分析もある。

 また、韓国情報当局の別の関係者は、新任の3人がいずれも前任者より若いことに触れ、『世代交代とみることもできる』と述べた。この人事は5月17日に開かれた朝鮮労働党中央軍事委員会の会議で決まったと推定される」

 つまり、軍のトップ3は更迭か、軍トップの若返り人事かのいずれということになる。金氏が米朝首脳会談の冒頭での発言を勘案すれば、軍のトップ3を中心に軍内では米朝首脳会談に反対する勢力が多いということが考えられよう。

トランプから金正恩への手土産

 実は、筆者は中国・北京のニュースソースから別の情報を得ている。それは、今回の軍最高人事が、4月下旬に北朝鮮南西部の黄海北道で中国人団体観光客32人が死亡、2人が重傷を負った交通事故と関係しているというものだ。

 同筋によると、中国人団体観光客が参加したツアーを運営していたのは軍直属企業であり、しかも中国人観光客が乗ったバスに衝突したのが、軍の兵員輸送トラックだったという。このため、軍の3トップが責任をとって更迭され、軍直属企業のトップで少将の位を持つ社長ら4人が銃殺刑に処せられたというのだ。  この事故では金氏が自ら病院に足を運び、負傷者を見舞うなど丁重な対応をとっていただけに、「今回の軍最高幹部更迭などの措置は金氏が直接命令しており、米朝首脳会談を前に、最大の支援国である中国に忖度したものだ。この3人は軍内強硬派で知られているだけに、首脳会談直前の更迭は時期的にも都合が良かった」と同筋は明かしているのである。

 当然、トランプ氏も北朝鮮の軍内には対米強硬派が多いことは承知の上だろう。それは金氏の冒頭の発言やトランプ氏の「ありがとう」発言からも明らかだ。このため、同筋は「もし、かりに首脳会談で成果のないまま、金氏が帰国した場合、金氏が軍から突き上げられる可能性も出てくる。このため、トランプ氏は金氏の手土産に共同声明を発表。非核化の進展を2回目以降の首脳会談に持ち越してでも、今回の首脳会談の成果として、北朝鮮の体制維持保証を明確にしたのだ」と指摘している。(文=相馬勝/ジャーナリスト)

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引用元:ビジネスジャーナル

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