【森友文書改ざん問題】で揺らぐ民主主義の根幹ーー政局話に矮小化せず、事実の解明を|マネブ

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【森友文書改ざん問題】で揺らぐ民主主義の根幹ーー政局話に矮小化せず、事実の解明を


安倍晋三首相(日刊現代/アフロ)

 森友問題での財務省の決裁公文書の改ざんは、衝撃的だった。

 不心得な人間が、自分のミスを隠そうとして行った個人的な不祥事とは違う。組織的な行為である。しかも、土壇場まで、シラを切り通そうとした形跡もある。

“不都合なことはバレるまで認めない”政権と財務省

 民主主義の基本は、国民が正しい情報を知らされ、それに基づいて判断し、自分たちの代表者を選んで政治の方向性を決めていく、というところにある。

 それにもかかわらず、国民の代表であり、国権の最高機関とされている国会に虚偽の資料が提供され、国民全体の奉仕者であるべき公務員から嘘の答弁がなされてきたのだ。

 昨年10月の衆議院総選挙では、森友・加計問題も争点のひとつだったが、有権者の多くが「特に問題はなかった」と判断したからこそ、与党が勝利したのだろう。

 そのうえ、文書の改ざんは今回が初めてなのかも、いまだにわからない。これまで、この国で築かれてきた民主主義(と思っていたもの)の基盤が、実はグズグズに朽ち果てていたことが明らかになったのが今回の問題だ。ここは徹底的に事実を解明し、なぜこのような問題が起きたのか、その背景も含めて明らかにしなければならない。

 ところが、政府、与党、野党いずれも、事実解明をよそに、安倍政権をどう維持するか(あるいは倒すか)という政局話に終始しているように見えてならない。

 まず政府。国交省が今月5日に改ざん前の文書が存在する可能性を首相官邸に伝え、翌6日には安倍首相にも報告がなされるまで、安倍首相は事態を知ったのは11日という説明を国会(14日の参院予算委員会)にしてきた。官邸は、今になって5日や6日の情報は「可能性」だったから、という説明をしているが、そうであればその旨を、14日の時点で答弁すればよかった。事実を伏せることで、できるだけ責任を小さくしようという不誠実さを感じる。

 不誠実という点では、財務省はさらに際立っている。5日には国交省から改ざん前の文書のコピーを渡されていたのに、8日に「現在、近畿財務局にあるコピーはこれがすべて」として国会に改ざん後の文書を開示した。当時問題になっていたのは、改ざん前の文書の有無であって、それが近畿財務局にあるのか、本省理財局にあるのかが問われていたわけではない。それにもかかわらず、「近畿財務局にあるコピーは」との条件をつけるレトリックで誤魔化し、時間稼ぎをしようという意図がみえみえだ。改ざんを隠し通せる道はないか、模索していたのではないか。

 こうした態度から浮かび上がってくるのは、「不都合なことはバレるまで認めない」という基本姿勢だ。

 政府は、麻生太郎財務相をそのまま据え置き、彼の指揮で財務省の内部調査を進めるとしている。麻生財務相は今月11日、佐川宣寿・国税庁長官(前理財局長)が辞任した際、「国税庁長官として不適任という意識は私にはない」と発言。ようやく財務省が改ざんの事実を認めた12日には、「理財局からの指示で書き換えが行われた」「佐川の答弁と決裁文書との間に齟齬(そご)があった。佐川の答弁に合わせて書き換えたのが事実だ」と述べた。まだ事実調査は緒に就いたばかりだというのに、もうストーリーは出来上がっているのである。

 このような大臣の下で、文書の書き換えを行い、かくのごとき不誠実な態度をしてきた当該省庁が行う調査に、国民は果たしてどれだけの信頼を置くだろうか。

今の野党の追及姿勢で真相が解明されるのか

 一方、与党も「すべての責任は財務省にある」という見方で、政権を守るのに必死のようである。西田昌司参院議員は、参議院予算委員会で「なんで報告しなかったんだよ」「まさに、財務省による、財務省のための、情報操作なんだよ、これは」と現理財局長を怒鳴りつけた。 さらに衆院財務金融委員会でも、本件を「佐川事件」と呼んだ。こちらも、もうストーリーは決まっているかのようである。

 19日に行われた参議院予算委員会での集中審理では、財務省がすべての元凶であると強調しようとしてか、質問に立った自民党の和田政宗議員が「太田理財局長は民主党政権時代の野田総理の秘書官を務めていた。増税派だからアベノミクスをつぶすために、安倍政権を貶めるために、意図的に変な答弁をしてるのではないか」との陰謀論まで展開した。

 その自民党は、本件についての真相究明を目的とするプロジェクトチームを立ち上げ、再発防止策も検討するという。

 しかし、このように筋書きがあらかじめ提示されている中で、果たしてどの程度の「真相」が明らかになるのだろうか。

 そして、野党である。野党は国会審議を拒否して、佐川氏や安倍首相夫人・昭恵氏らの喚問を求める一方、この問題は、麻生財相や安倍首相に責任が大きいとしてしている。野党が、政権の責任を追及するのは当然だろう。

 ただ、このようなやり方で真相がわかるのだろうか。

 佐川氏の証人喚問には与党も応じることになったようだが、問題に近い当事者ほど、検察の捜査の対象にもなっている。佐川氏を国会に証人喚問しても、「刑事訴追される可能性」を理由に、肝心の情報が出てこない可能性が大きいのではないか。また、もっと追及の材料がそろわないと、のらりくらりの答弁でごまかされるかもしれない。

 その挙げ句、事実の解明は特捜検察にお任せ、ということになるのではないか。しかし、検察が捜査するのは立件が見込める事件と範囲ということになり、全体像の解明はその役割ではない。それに検察当局にも、政権の人事権は及ぶわけで、果たしてどこまで捜査が及ぶのかわからない。

 一方、昭恵氏の場合、問題が発覚して以来、何も語らないことに対して国民の不満もあり、世論調査で「証人喚問すべき」という声が圧倒的になるのは当然だ。野党としては、主張のしがいがあるだろう。

 しかし、国会は、お白洲とは違う。証人喚問に引っ張りだし、糾弾することで、社会的制裁を与えることが主目的になってはならない。森友学園の籠池泰典理事長(当時)の場合、その発言が「総理を侮辱している」として、自民党が証人喚問を決めたが、そのような報復的な動機で行ったのは間違いだ。証人喚問は、あくまで問題についての事実やその原因を究明することが目的でなければならない。

 昭恵氏の天衣無縫な言動は、立場を弁えず、社会人としての常識に欠け、さまざまな問題を惹起した一因だろう。それを好き勝手にやらせ、おまけに国家公務員を複数秘書につけて、その害を拡大した安倍政権の責任は大きい。昭恵氏の言動は、調べるべき事柄のひとつではあろう。

 ただし、彼女は文書の改ざんに関与しているわけではなく、最優先で事情聴取すべき相手というわけではないだろう。彼女の指示、もしくは依頼を受けて、直接官庁の担当者に問い合わせ、もしくは働き掛けを行った職員のほうが先ではないか。さらに、それよりも問い合わせ(もしくは働き掛け)を受けた側が、どのように受け止めたかというほうを、まずは聞くべきだ。そうして明らかにした事実を前提に、彼女に問い質すのがよいのではないか。森友問題が矮小化されてはいないか

 一口に「森友問題」と言っても、その時期と性質で大きく二つに分けられる。

(1)財務省と森友学園の土地取引における特別待遇

 8億円もの値引きだけではなく、土地売却を前提にした10年間の特約付き定期借地契約に始まり、売買価格を当初非公表としていたことに至るまで、同学園に対する対応は異例ずくめ。それが、どのような経緯で行われ、なぜこのような異例の対応になったのかという理由の解明が必要だ。

 これは、首相や与党議員などの身内や近親者が特別扱いされるという縁故主義が行政の過程に入り込んでいないか、公務員が全体の奉仕者としての公僕ではなく、一部の権力者の“私僕”になっていやしないか、という問題でもある。加計学園の獣医学部新設を巡っても、同様の疑念が向けられた。昭恵氏の話を聞きたいのは、この問題についてだ。森友問題に限らず、彼女の活動によって、行政が動いたケースというのはほかにもあるかもしれない。

 縁故主義や公務員の“私僕化”が生じていると、権力者を批判した者に対しては、敵対的な対応に出る事態も起きうる。前川喜平・文科省前次官が名古屋市内の中学校で講演したことについて、その後同省が名古屋市教委に2度にわたって詳細な報告を求め、録音の要求までしていた問題も、自民党の文教族議員が文科省に執拗な照会を行っていたらしい。これにも、上記のような背景がありはしないか。その原因や背景も調べなければならない。

(2)財務省による決裁文書の改ざんや国会での虚偽答弁疑惑

 明らかになりつつある一連の行為は、いつ、誰が、どのように関与して行われたのか、その背景はどこにあるのかという事実とその原因の究明が求められる。

 その際、同省だけでなく、防衛省のPKO日報問題や厚労省のデータ隠しなど、今の霞が関全体の公文書管理の関する倫理や制度の問題、会計検査院の能力や体制なども調べ、今の霞が関の問題をきっちり点検する必要があるのではないか。

 (1)と(2)のどちらが優先事項かと言えば、民主主義の基本を揺るがした(2)である。

 もちろん、この両者には関連はある。内閣人事局の設立によって、お役人の人事権が完全に官邸に握られ、政権が長期に及ぶことで、その力関係が固定化して、役所が官邸の意向を忖度している状況など、両者に共通する問題もあろう。

 このような問題点について、ひとつひとつの事実を聞き取りによって確かめ、当時の資料の提出も求めなければならない。それを、すべて国会の場でやることは困難だし、時間もかかる。

 東京電力福島第一原発の事故が起きた際には、内閣の事故調査委員会とは別に、国会において独自の、政治的に中立な事故調査委員会を設立。学者、法律家、ジャーナリスト、その他の識者によって調査が行われた。

 今回も同じように法律家、学者、ジャーナリストなどによる事実調査委員会を作って、徹底的に事実を調べるのがよいと思う。

 また、国会に特別委員会を作り、調査委の報告に基づいて、必要に応じて証人喚問を行い、公聴会を開くなどして、問題が起きた背景や再発防止策を話し合う。

 今回は、国会に虚偽の報告がなされ、国民は虚偽をもとに政権選択選挙までやったのだ。麻生財務相の進退や安倍内閣が辞職するか否かという問題とは別に、党派を超えて取り組んでほしい。

 そのような声が、国会でもマスメディアの中でも大きくならず、誰かのクビを取るか取らないか、という話に矮小化されているのが、なんとももどかしい。(文=江川紹子/ジャーナリスト)

●江川紹子(えがわ・しょうこ)東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。江川紹子ジャーナル www.egawashoko.com、twitter:amneris84、Facebook:shokoeg

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引用元:ビジネスジャーナル

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