日本は「偽ニュース」のダメージが小さい国だ伊藤穰一氏が語る「ニュースメディアの課題」|マネブ

マネブNEWS:〔2018.11.03〕『ブラックスキャンダル』がメチャ面白い!「鳥肌立 現在の記事数:288711件

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日本は「偽ニュース」のダメージが小さい国だ伊藤穰一氏が語る「ニュースメディアの課題」


MITメディアラボの伊藤穰一所長にニュースメディアの課題について聞いた(撮影:尾形文繁)芸術領域から人工知能まで、あらゆる分野で世界最先端の研究を行うマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボで所長を務める伊藤穰一氏。ニューヨーク・タイムズをはじめ名だたる一流企業で役員を務め、実業家や投資家としても活躍する。メディアの未来、フェイクニュース問題、民主主義の危機――。世界のオピニオンリーダーに話を聞いた。

山田:ネットメディアをめぐり、フェイクニュースやアドフラウド(広告詐欺)など、マイナスイメージの言葉が飛び交っています。メディアの未来をどう考えていますか。

伊藤:今、起きていることは、スパムに似た現象と、ハッキングに似た現象に分けられる。スパムに似た現象は、ツールである程度フィルターできるようになると思う。これはもう時間の問題だ。

ただ、問題はハッキング。進化するハッキングに対しては、対策もいたちごっこになるしかない。こういう戦いは、今後もなくならない。すでに、メディアはバトルフィールド(戦場)にいるからだ。

ところが、ニューヨーク・タイムズも含めて多くの伝統的なニュースメディアの人たちは、メディアがバトルフィールドの中にいる、ということをわかっていない。それどころか、自分たちがネット時代においてどういう役割を果たしているのかを理解できていない。

既存メディアの役割は「エサの投入」

山田:「伝統的なニュースメディアが果たしている役割」とは、何でしょうか。

伊藤:ネットにエサを投入する役割だ。フェイクニュースを作っている人たちにとっては、ニュースは自らの主張を広げるためのエサにすぎない。新聞やテレビが報じるニュースの持つ信憑性を利用することで、トラフィックを集めている。

ただし、フェイスブックも含めプラットフォームでやり取りされている情報の絶対量からすれば、フェイクニュースの量は、ほんのわずか。だから、フェイスブックにとっては、もっとも重要な役割である身近な人とのコミュニケーションを守るために、タイムラインに流れるニュースを排除する方向に動いた。

山田:表から排除すればするほど、ダークウェブのような形で「闇のニュースフィード」が生まれるかもしれない。

伊藤:いくら排除をしても、いたちごっこであることは変わりない。

ただ、国によって、フェイクニュースによるダメージには差がある。最も大きなダメージを受けているのはアメリカだ。アメリカは定められたルールの順守によってフェアネスを保ってきた。ところが、大統領の(ドナルド・)トランプですらルールを破っている今、ちゃんとルールを守っているのは一部の人間だけで、もはや民主主義も機能していないのではないか、と疑われるようになった。

注目すべきはドイツの行方

ルールの順守によってフェアネスを保つ、という今のような民主主義の考え方は、生き残るのか、生き残らないのか。見どころといえるのは、ある程度民主主義が機能してきたドイツだと思う。今、アメリカの支配から出ていって混沌としているヨーロッパにおいて、ドイツはちゃんとした民主主義を機能させられるのか。それとも瓦解するのか。

一方で、日本の民主主義は、昔から不透明。アメリカと違って、なんでもかんでも表に出るわけではない。政治もマスコミも透明とはいえない部分がたくさんある。日本の人たちは、本音と建前があるとわかっているから、表に出ていることだけがすべてとは考えていない。だから日本は、アメリカと比べてフェイクニュースに感染した場合のダメージは小さいように思う。

山田:おもしろい見方ですね。たしかに日本のメディアは、重要なことであっても横並びで報じないようなことが多々ある。

伊藤:ニューヨーク・タイムズの社外取締役に就任することが決まったとき、僕のことをメディアで最初に批判したのがニューヨーク・タイムズだった(笑)。こんなことは、日本の新聞ではありえないでしょう。

だから、そういうニュース報道に慣れている国と、あまりまずいことを書かないニュース報道に慣れている国とでは、フェイクニュースの受け取られ方がちょっと違うと思う。

山田:組織的にフェイクニュースを作る動きがあることも懸念されます。

伊藤:ロシアが、フェイクニュース工場になっている。米国の大統領選では大量のフェイクニュースを量産し、それをツイッター、フェイスブックなどで、機械的に作った大量のアカウントを使って拡散させていた。

これは、すでにパターン化されており、今でも繰り返されている。聞いたことないようなそれらしいメディアが、話をぐちゃぐちゃにしてインチキ記事を書く。それがリツイートされて拡散されていく。ノイズであるにもかかわらず、それをマスコミにピックアップさせれば勝ち、というのが典型的なパターンだ。

同じような事故は頻繁に起きている。SNS上での攻撃を専門に行うPR会社もあり、ターゲットをガンガン攻撃している。攻撃をするために同じ日にツイッターアカウントをブワーッと作って攻撃をしている。日本ではあまり表面化していないようだが、メディアへの攻撃もすごい。こうしたことは頻発している。

山田:まさにバトルフィールド。自分たちが正しい情報を発信しているからといって、それでいいということではまずい。

伊藤:こうした情報コントロールを狙う組織は、ニュースのサイクルに対する入り込み方が巧みだ。

典型的なニュースの流れは、まず第一報がある。多くのメディアが参入して少し盛り上がったところに、そのニュースへのリアクションなど、2回目の大きな波があり、その段階で仕切り直しがある。この2回目の波の瞬間に、情報コントロールを狙う組織がバーっと入ってくるようになった。

参考:『週刊東洋経済』8月26日号特集「教養としてのテクノロジー」では伊藤穰一氏へのロングインタビューを掲載している(雑誌表紙画像をクリックするとアマゾンにサイトにジャンプします)

かつては仕切り直すときには、インテリ系のメディアが入ってきたり、もう1回マスメディアがピックアップして続報を流したり、ということだった。でも今は、そこを担っているのはブログやSNSなどで量産される情報。何千という投稿であふれかえるので、2回めの波をうまく使うと情報をコントロールできてしまう。

山田:とはいえ、ネットメディアで発信された情報は、仮に間違っていたとしても、長期的にみると補正されていく。その意味では、作ったら作りっぱなしになりがちな紙の時代よりもまともになったと考えることもできます。

伊藤:ウィキペディア vs.『ブリタニカ百科事典』のときにウィキペディアが勝ったのと同じで、やっぱり修正できるほうが勝つ。それは間違いない。

振り返ると、日本の「2ちゃんねる」には、今のネットのトレンドがすべて凝縮されていた。話題になっている人を引っ張り出して袋だたきにしたり、フェイクニュース的なものを作ったり。つまり、いま世界で話題になっているフェイクニュース的な手法を輸出したのは日本かもしれない。日本のせいでアメリカでトランプ大統領が生まれたのかもしれない。

いつか振り子を大きく動かすために

山田:本来、オープンでボーダーレスであるはずのインターネットが、閉鎖的で非ボーダーレスなものへと姿を変えてきているのも、逆説的ですよね。

NHK出版から3月8日に刊行された『教養としてのテクノロジー』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

伊藤:世の中は今、閉鎖的で摩擦のある世界に向かって走っている。インターネットもその方向に傾いている。でも、振り子は急には動かないが、またオープンな方向に振れると思う。

たとえば米国で学んだ中国の若い世代が、中国に米国のカルチャーを持ち帰っている。中国の若い世代には、いろいろ未来を考えている人たちも出てきている。今、MITを卒業した中国人が、中国の中でそれなりの立場にいる。中国で一番大きい人工知能の会社もMITの卒業生。あと、シリコンバレーを経た中国人も活躍している。JDドットコムのリチャード・リューやバイドゥのトップがまさにそう。

以前出した自分の本が、中国で『爆裂』というタイトルで出た。本には「権威を疑って自分で考えろ」というようなことをたくさん書いたのに、中国のアマゾンで1位になった。オープンでボーダーレスなインターネットの世界を保ち、いつか振り子を大きく動かすためには、問題意識が高い若い世代や、その次の世代の人たち、前向きでやや反体制的な人たちに力を与え、そうした人々をつないでいくことが重要だと思っている。僕がいまやっているのは、そういうことです。

(構成:加藤 弥)

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引用元:東洋経済オンライン

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