『トドメの接吻』、乱暴なドラマだが素晴らしいといえる理由|マネブ

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『トドメの接吻』、乱暴なドラマだが素晴らしいといえる理由


トドメの接吻|日本テレビ」より 平昌オリンピックの影響もあってか、今クールのテレビドラマの視聴率は軒並み苦戦しているが、『アンナチュラル』(TBS系)や『anone』(日本テレビ系)など見ごたえのある作品が多く豊作だ。

 そのなかでも予想外のおもしろさを見せていたのが、日曜夜10時30分から放送されていた山崎賢人主演のドラマ『トドメの接吻』(同)である。3月11日に放送された最終回の平均視聴率は7.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、全話を通じて最高を記録した。

 本作の主人公は、ナンバー1ホストの“エイト”こと堂島旺太郎(山崎賢人)。物語は、女を「金を稼ぐ道具」としか考えていないクズ男の旺太郎が謎の女にキスされるところから始まる。

 キスされた旺太郎は、その場で即死。しかし、気がつくと時間が1週間前に戻っていた。「夢でも見ていたのか」と思う旺太郎だが、行く先々で謎の女にキスされては命を落とす。そして、そのたびに同じ時間を繰り返すことになる。

 謎の女から逃れようと悪戦苦闘する旺太郎だったが、やがて命を狙ってきた女・佐藤宰子(門脇麦)が、実は旺太郎の命を守るためにキスしていたことが明らかになる。彼女は、キスした相手の意識を過去に巻き戻すことができるタイムリープの能力の持ち主だったのだ。

 タイムリープというSF的な題材と、金のためならなんでもやろうとする旺太郎のピカレスクドラマが混ざり合った本作は、本来なら違うジャンルのものを混ぜ合わせたことで奇妙な味わいのドラマに仕上がった。

 映画『時をかける少女』シリーズを筆頭に、同じ時間を行ったり来たりするタイムリープモノはフィクションでは出尽くしており、ありふれた設定だ。しかし、本作は「登場人物があっさり死んでは時間が巻き戻って1週間前からスタートする」という展開にゲーム的なおもしろさがあり、毎回「こう来るのか!」と楽しむことができた。

 とはいえ、一番の魅力は人間くさい登場人物たちだろう。ホストとして生きてきた旺太郎は女を落とす手段を熟知しており、ホテル王の令嬢・並樹美尊(新木優子)を口説いて並樹グループに入り込もうとしていた。

 そんな旺太郎だが、哀しい過去を抱えている。船長だった父親が起こしたクルーズ船の海難事故で弟が命を落とし、実刑判決を受けた父親の代わりに多額の賠償金を払い続けていたのだ。いまだに弟の死を受け入れない母親に対しても複雑な気持ちを抱いており、口では冷たいことを言っていても家族を見捨てることができない、人間くさいところもある。

「土9」を彷彿とさせた『トドメの接吻』

 ドラマ自体は、10代向けの荒唐無稽な話だ。しかし、物語に説得力があったのは力のある若手俳優を揃えたからだろう。

 主演の山崎賢人は、昨年放送されていた『陸王』(TBS系)で就職活動に悩みながら稼業の足袋工場で父親を手伝うまじめな青年役を好演していた。対して本作の旺太郎は真逆のキャラクターで、いい意味で漫画的なケレン味と迫力があった。 本作と同じ時期に放送されていた『女子的生活』(NHK)で「体は男性で心は女性、そして恋愛対象は女性」というトランスジェンダーのみきを演じて話題となった志尊淳は、旺太郎に対するゆがんだ愛情ゆえに命を狙うようになったホスト・小山内和馬を演じて物語を盛り上げた。

 宰子を演じた門脇麦は、魔女のようなキャラクターとして登場したが、物語が進むにつれて孤独を抱えながら生きる姿が際立っていった。旺太郎に献身的に尽くす宰子の姿は切ないものがあり、物語はやがて旺太郎と宰子のラブストーリーへと変わっていった。

 主題歌の『さよならエレジー』を歌う菅田将暉が、主演ではなく謎の男としてゲスト的に登場するというつくりもぜいたくだった。

 本作が放送されていた日曜ドラマ枠は過去に『デスノート』などの若者向けドラマが放送されているが、『トドメの接吻』を見ていて思い出したのは、1990年代後半の「土9」ドラマの存在だ。

 現在は夜10時からだが、当時は夜9時から放送されていたため「土9」と呼ばれていた日本テレビの土曜ドラマ枠は、90年代後半から今の若者向け路線となり、『金田一少年の事件簿』や『サイコメトラーEIJI』といった少年漫画をジャニーズアイドル主演でドラマ化していた。

 いずれもミステリーやSFのテイストを交えた青春ドラマのつくりになっていて、人が殺されたり人間の醜い部分を描いたりといった陰惨な要素も強かった。 この「土9」で頭角を現したのが、鬼才演出家・堤幸彦である。

 堤は、『金田一少年の事件簿』や『サイコメトラーEIJI』でカット数の多い極端なアップやオールロケで撮られた乾いた風景など、当時のテレビドラマにはなかった斬新な映像を次々と生み出し、若者からの支持を獲得した。

『トドメの接吻』には、当時の「土9」にあったテイストが生きていた。当時の堤の演出をアップデートしたようなジャンクな映像で紡がれる物語は乱暴だが勢いがあり、とても若々しいドラマとなっていた。

 完成された作品が持つおもしろさも悪くないが、『トドメの接吻』のような勢いのある作品は近年減りつつあるので、どんどん増えてほしい。そうすれば、高齢化しているドラマ業界も一気に若返るはずだ。(文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家)

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引用元:ビジネスジャーナル

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