「市民マラソン大会」激増の知られざる舞台裏町おこしにつながるが競争はシビアに|マネブ

マネブNEWS:〔2018.11.03〕『ブラックスキャンダル』がメチャ面白い!「鳥肌立 現在の記事数:288008件

-

「市民マラソン大会」激増の知られざる舞台裏町おこしにつながるが競争はシビアに


勝田全国マラソンでは2万人を超えるランナーが参加した(ひたちなか市提供)

「箱根駅伝」や「都道府県対抗駅伝」が終わる1月下旬から2月は、一般ランナーも参加できる「市民マラソン大会」が各地で開催される。早春と春は、秋と並ぶシーズンで、最も大きな大会「東京マラソン2018」は2月25日に開催予定だ。同大会が現在の形となったのは2007年で、ふだんはクルマであふれる首都・東京の公道と、都内の観光名所近くを走れるため、毎年多数の市民ランナーが申し込み、抽選となる。

実は、第1回の東京マラソン開催以降、全国各地で市民マラソン大会やランニング大会が激増した。42.195kmの「フルマラソン」や、その半分の距離の「ハーフマラソン」がある大会、「10km」や「5km」中心の大会など特徴もさまざまだ。何を基準にするかで数字は違うが、関係者に取材すると「10年前(東京マラソンのスタート時)は800だったが、現在は2300もある」「インターネットのランニングサイトに登録される大会では1800超、小さな大会を合わせると2800」とも聞く。10年で約3倍に増えたといえそうだ。

マラソン大会の会場ゲート(筆者撮影)

一方、古くから開催してきた市民マラソン大会もある。今回はその1つで、1月28日に開催された「第66回 勝田全国マラソン」(茨城県ひたちなか市)を密着取材した。同マラソンの前身は1953(昭和28)年からで、20回大会から勝田市(当時。現ひたちなか市)開催となった。レースの内容ではなく、運営の舞台裏を紹介したい。

街を知り、宿泊してもらいたい

そもそも、ここまで市民マラソン大会の数が増えたのは“観光需要への期待”が大きい。実際に走るランナーだけでなく、その家族や友人・知人が来訪するので、町おこしになり、経済効果が期待できるからだ。そのため開催地の関係者は集客の工夫を凝らす。

勝田全国マラソンも、近年は「前日祭」を開催している。今年は市内の文化会館で「パスタフェア」を行い、1食300円で8種類のパスタが味わえるほか、会館内のホールでは無料の「ステージイベント」が開催された。来訪者の飲食や宿泊もねらいだ。宿泊施設側も積極的で、大会当日はロビーに無料の水とバナナなどを用意するホテルも多い。

ランナーにとって、同大会はどんな位置づけなのだろうか。

「10キロの部」で完走した上條恵奈美さんとアレックス・アラウージョさん(筆者撮影)

「伝統のある大会で、フルマラソンの上位入賞者は米国ボストンマラソンに派遣されます。そうした競技性もあり、たとえば近隣の実業団駅伝のメンバーも個別に参加します。首都圏に近くて、この時期に開催される大会はあまりありません」(ランニング専門誌『ランナーズ』編集部・黒崎悠氏)

高倍率の東京マラソンの抽選に漏れた、一般ランナーが参加するケースもある。主催する自治体は知名度向上や税収増の期待が大きいが、それ以外の長所も見逃せない。

「大会で“街が一体化する”効果も大きいのです。たとえば中学生がボランティアを行えば社会勉強にもなる。元気な高齢者のボランティア参加は、本人や周囲への活力にもなります。一方、交通規制で当日のクルマ移動が制限されてしまいます」(同)

「市民力」はどこにも負けない

勝田全国マラソンの大会会長を務める、本間源基ひたちなか市長は次のように話す。

本間市長(筆者撮影)

「少人数から始まった大会ですが、現在は全国47都道府県(今年は46都道府県)から、2万人を超えるランナーが参加されるようになりました。ただし競技性は重んじており、安心して走っていただくのが開催地の使命です。そのため、道路整備などの開催準備は市の職員が参加し、当日は約2000人の市民ボランティアの方が協力してくれます」

今回の大会前には大雪も降った。前日も雪がちらつき、多くの職員が除雪を行ったという。ここまで職員が参加するのは別の理由もある。実は、大会規模や歴史の割に、同大会は企業からの協賛金が少ないのだ。

「2016年に始まった県庁所在地・水戸市のマラソン大会の企業協賛金が約4000万円なのに対し、ひたちなか市はその4分の1以下。2万人を超えるランナーが安全に走れるのも、多数の方のご協力あってです。レース中はAED(自動体外式除細動器)を持った大学生による自転車の“見回り隊”が巡回するなど、市民力ではどこにも負けません」(本間氏)

マラソン大会で費用がかさむものに「警備費」がある。地元警察や消防、自衛隊にも協力を仰ぐが、参加人数が多いと、民間の警備会社に委託する開催地も多い。ひたちなか市の場合、「カネがなければ知恵を出せ」の方式で、大会の運営を行う。

特色に乏しい大会は「終了」に

「健康志向」や「現役志向」を反映してランニング人気は根強い。データで紹介すると、「成人の年1回以上のジョギング・ランニング実施者は約893万人」「うち約467万人が週1回以上のランナーであると推計される」(2016年、笹川スポーツ財団の調査)。

また、ランニングポータルサイト「RUNNET」が行った「ランナー世論調査2017」によれば、同調査に回答した約1万7000人の市民ランナーの内訳は、男性81%、女性19%。男女ともに40代、50代が過半数を占めていた。「健康寿命が気になる世代」なのだ。

そうした意識も背景に、市民マラソン大会が増えたが、中止に追い込まれる大会も出てきた。たとえば「たねがしまロケットマラソン」(鹿児島県)は2017年で30回の歴史を終えた。「2016年に『鹿児島マラソン』が始まったように、知名度が高い県庁所在地が大会を開催すると、県内の大会が影響を受けるケースもある」と、ひたちなか市関係者は話す。

茨城県でも2016年から水戸市が「水戸黄門漫遊マラソン」を始めたので、他人事ではないのだろう。「さまざまな大会に参加するランナーは経験値の高い“消費者”でもあるので、各大会を厳しく吟味する一面もある」(前出の黒崎氏)と指摘する。

今回、「勝田」の会場裏にテントを設営していた、出場回数の多い東京都の30代女性(夫が出場し、自身は故障のため不出場)に聞いた。「待機組にとって、無料のチキンヌードルや甘酒の提供はうれしいが、物販店はもう少し充実してほしい」との意見だった。

「役人感覚」を捨て、参加料も値上げ

2017年に開催された市民マラソン大会・参加人数(※)の1位は、前述の東京マラソンで3万5824人、2位は大阪マラソン(3万2259人)、3位は沖縄県のNAHAマラソン(2万9975人)だった。勝田全国マラソンは7位(2万1613人)となっている。

※「計測工房」調査。大会によって、エントリー人数、出走人数、申し込み人数に分かれる。

ひたちなか観光大使がPRした、大会の単行本(筆者撮影)

ひたちなか市では、商工会議所が主導して、大会の歴史や特色を綴った単行本も制作。歴史の長さを踏まえて「日本4大マラソン」を公言する。本間市長も『ランナーズ』が主催するイベントに参加するなど、“トップ営業”に意欲を示す。取り組みの裏には、県都・水戸市に隣接する、ひたちなか市の危機感もあるのだろう。

「私も前職は県の職員でしたから自戒を含めてですが、とかく、役所の人間は『前例踏襲』で物事を進める。勝田全国マラソンも、全国有数の参加者となり諸経費も増大したのに、一般の参加料はほかの大会と比べても低いままに据え置かれていました。それを最近6000円に改定したのですが(高校生は3000円)、その分、中身を充実させてランナーの満足度を高めることができたと思います」(本間氏)

「ファミリー賞」を受賞した家族ランナー(筆者撮影)

各地の大会では参加賞や特別賞にも工夫を凝らす。たとえば「焼津みなとマラソン」(静岡県焼津市)では「飛び賞」として10人に3人の割合で当たるカツオが名物だ。「勝田」では、参加者全員に県内産「乾燥イモ」(完走の洒落)、「長袖Tシャツ」を配るほか、家族で参加した「ファミリー賞」当選者では、市内のコーヒー会社提供の「コーヒー1年分」が配られる。当日、発表を聞いた参加者からは「いいな」という声も上がった。

マーケティングでいう「消費者はどんどん変化する」は市民マラソン大会も同じだ。過当競争ゆえ、安全面に配慮しながら魅力を打ち出さないと、生き残れない時代となった。

マネマガ
参考になったらシェア

引用元:東洋経済オンライン

同カテゴリの新着記事

画像
『ブラックスキャンダル』がメチャ面白い!「鳥肌立つ」「ただただ感服」と絶賛続出!

『ブラックスキャンダル』公式サイトより 芸能界の“ゲス”な部分を描く連続テレビドラマ『ブラックスキャ

画像
松田聖子、ライブ料金「9万円」にファンからも悲鳴…ネット上で議論呼ぶ

「松田聖子オフィシャルサイト」より よほどの自信の表れなのか、それとも強気の設定なのか――。 松田聖

画像
『獣になれない私たち』新垣結衣が下ネタ連発&演技力不足を露呈の「公開処刑」状態

『獣になれない私たち』公式サイトより 新垣結衣と松田龍平がダブル主演を務める連続テレビドラマ『獣にな

画像
有働アナ『zero』視聴率惨敗、局内で打ち切りも取り沙汰…落合陽一氏にクレーム多数

「Gettyimages」より 10月1日より、3月にNHKを退職しフリーアナウンサーとなった有働由

画像
女子駅伝、批判殺到の審判員「四つんばい」続行判断は妥当…危険な駅伝、運営元の不備露呈

「岩谷産業 陸上競技部 HP」より 10月21日に行われた全日本実業団対抗女子駅伝予選会(通称:プリ

画像
任侠山口組最高幹部が解散届を提出か…強盗犯を「見せしめ」で暴行したヤクザに何が?

インターネットカジノ店を襲った強盗に待っていたものとは…(写真はイメージ/(c)Fotolia) 今


-