DeNA筒香を輩出「堺ビッグボーイズ」の挑戦子どもたちの未来のために少年野球を変える|マネブ

マネブNEWS:〔2018.02.23〕俳優の大杉漣さん66歳、急性心不全で死去宿泊先で 現在の記事数:256849件

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DeNA筒香を輩出「堺ビッグボーイズ」の挑戦子どもたちの未来のために少年野球を変える


野球イベント終了時に、子どもたちと集合写真を撮った筒香嘉智選手(筆者撮影)

1月14日、大阪、堺市の野球イベントで横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智が発したメッセージ『DeNA筒香「球界の変わらない体質」にモノ申す』(1月16日配信)は、大きな反響を呼んだ。現役のスター選手が、日本の「野球離れ」に警鐘を鳴らし、選手の健康を軽視した指導や、主体性を損なう指導の問題点を厳しく指摘したのだ。

筒香嘉智が勇気をふるってこの発言をしたのは、彼もOBである大阪府の少年野球チーム、堺ビッグボーイズの思いに共感したからだ。

ボーイズリーグ役員に具体的提案

1月14日にメッセージを発信した筒香は、翌日、大阪にある日本少年野球連盟 (ボーイズリーグ)の本部を訪れ、会長、理事など役員に、少年野球改革の必要性を訴えた。

筒香とともにボーイズリーグの本部を訪問したのは、堺ビッグボーイズ代表の瀬野竜之介、コーチの阪長友仁、そしてスポーツ医として長年、野球少年のケアを続けてきた医師の古島弘三らだ。 

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自主トレーニング中の筒香は、途中で退席したが、冒頭、前日と同じく少年野球の危機を強く訴えた。その後、少年野球の現状と改善策について、それぞれの分野からの説明があった。

瀬野は言う。

「実は昨年も筒香選手はボーイズリーグ本部を訪問し、ボーイズOBとしての挨拶と寄付をしています。私が今年は具体的な改革の必要性を訴えたいと話したら、筒香選手は自分も同席すると言ったんです」

反応はどうだったのか?

「ボーイズの会長をはじめ、役員の方々も、聞く耳を持って聞かなければ、このままではいけないという問題意識は強く持っておられます。とても熱心に耳を傾けていただきました。何かをスタートさせようという雰囲気を感じました」

ここで簡単に、日本の少年野球の歴史について振り返ろう。戦前から、10代前半の子どもによる少年野球は盛んだった。大正中期に軟式球が発明されると、全国大会も開かれるようになる。南海の監督・鶴岡一人や、初代ミスタータイガース藤村富美男などは、小学生の頃から全国にその名が知られていた。戦後になると、アメリカからリトルリーグがもたらされる。少年ながら硬式球を使用した野球だ。ただしイニング数が制限され、ルールも大人の野球とは違う部分があった。

そして1970年に、鶴岡一人によってボーイズリーグが設立される。これまでの少年野球が主としてアマチュア野球出身者によって指導されていたのに対し、ボーイズの指導者にはプロ経験者も多数いた。プロ・アマの垣根が高かったこの時期、鶴岡は引退した選手のために指導者の仕事を作りたいとも思っていた。たとえば、鶴岡監督の下、南海でプレーした黒田一博は、大阪市住之江区にボーイズリーグのオール住之江を設立。多くの選手を育てたが、その1人が、次男で広島、ヤンキースなどで活躍した黒田博樹だ。

1972年には中学生を対象にしたリトルシニアも生まれる。他にポニーリーグ、ヤングリーグなども生まれる。それ以後、プロ野球に進むようなエリート野球少年の多くは、こうした少年硬式野球経験者になっていく。なかでもリトルシニアとボーイズリーグはチーム数やプロ選手輩出の実績でも群を抜いている。

このコラム『「夏の甲子園」の陰で危うい高校野球の将来』(2017年8月6日配信)で以前にも触れたが、小中学生の軟式野球人口が激減しているのに対し、リトルシニア、ボーイズリーグなどは横ばいか微減でとどまっている。しかし小学校の野球人口の激減によって、ボーイズ、リトルシニアなどの将来にも黄信号が灯るようになった。

ボーイズリーグの一員である堺ビッグボーイズは、そういう現状にOBの筒香嘉智とともに警鐘を鳴らしたのだ。

自分が今している指導は子どものためになっているか?

瀬野竜之介は、自身が代表を務める堺ビッグボーイズの1期生だ。

大阪府堺市の堺ビッグボーイズ代表の瀬野竜之介氏(筆者撮影)

「元は別のボーイズのチームで野球をしていたのですが、そのチームの監督さんは酒を飲んで指導をすることもあった。体罰もあった。

うちの親父がこれを見て”そらあかんやろ”と言いに行ったんですが、反対に”気に入らんのなら辞めてくれ”と言われた。

そのとき、私だけじゃなくて、20人くらいが一緒に辞めた。14歳のときです。

親父は私一人なら、他のボーイズに入れようと思っていたのですが、20人もいる。じゃ、チームを作ろうか、ということになって、堺ビッグボーイズを設立したんです。うちは不動産業をやっていた関係で、グラウンドもお借りすることができた。私は1期生として野球を続け、大学まで野球をやって、その後堺ビッグボーイズのコーチ、監督になりました。

その頃はご多分に漏れず、ハードな練習をガンガンやりました。当時の選手のなかには、怪我や故障をした子もいます。そして私が監督に就任して8年目と9年目に全国優勝をしました。

でも、その頃からいろいろ疑問に思うことがあって、一時期チームを離れたんです。外側からチームを見ると、いろいろ気がつくことがありました。

自分のチームも含め、強いチームほど、プロ野球などで活躍するような選手が出ていない、ということです。ボーイズで好成績を挙げたチームの選手は、なんとか甲子園くらいまではいくが、そのあとが続かない。野球を辞めたり、学校を中退したり、手術する子もいる。これは何でかなあ、と思うようになった」と瀬野は振り返る。

「私は若くして世界大会の監督にもなって、海外へも行かせてもらいました。当時から日本は、少年野球でも緻密なプレーができて、繊細で、優秀でした。誇らしい気持ちで、海外の指導者に自分たちの野球を紹介するのですが、彼らは”凄いね”とは言ってくれるけど、そういう野球を”教えてくれ”とは言わないんです。日本の真似をする国はなかったんです。

それやこれやで、自分がやってきたことは、本当に子どもたちのためになっているのか? 大人の自己満足で彼らのためになっていないのでは?と思うようになったんです。12年前、今度は代表として堺ビッグボーイズに復帰しましたが、このときからやり方を変えようと決心しました。

そのときには、筒香選手はもう横浜高校に進んでいました。彼の時代の堺ビッグボーイズは、練習時間はまだ長かったですが、それでも怪我をしないエクササイズを導入するなど、健康には配慮するようになってはいました。

2010年頃に、全面的にやり方を変えました。当時の監督、コーチ、10名ほどの方と1人ひとりと話をしましたが、1人の方を除いて辞められました。今、西武ライオンズで活躍している森友哉選手が中学2年になったばかりのときでした」

トーナメントではなくリーグ戦を

堺ビッグボーイズの改革の柱は「勝利至上主義の排除」と「選手の将来の活躍を見据えた指導」だ。一戦必勝主義のトーナメント戦は、選手に負担を強いるうえに、レギュラー以外の選手の出場機会が少なくなる。ボーイズリーグは大会数が多い。

これが人気の一因でもあるが、堺ビッグボーイズは改革以後、春、夏、秋の連盟主催の大会以外にはほとんど参加しないようにした。練習時間も短縮した。さらに投手の球数を制限するとともに、肩、肘に悪影響を及ぼすスライダーを投げることを禁じた。

「当然ですが、そういう方針にしてから、勝率は以前よりは悪くなりました。もちろん、子どもたちは勝利を目指して一生懸命に頑張ります。それは変わりませんが、うちのチーム独自でストレートを主体としたルールを設けているので、変化球主体のチームに負けることはよくあります。そのため全国大会に出場する機会も以前よりは少なくなりました。

でも、堺ビッグボーイズへの入部者は増えています。今は、なんでもオープンになる時代です。どのチームがどんな指導をしているのか、どういう評判なのか、子どもや親はよく知っているのではないでしょうか?」

筆者は堺ビッグボーイズの本拠地で取材した帰り、最寄りの駅まで、選手の母親の車で送ってもらった。その母親は、東大阪市から車で1時間近くかけて通っている。以前は、近所のボーイズのチームに男の子を入れていたが、練習がきついうえに監督の言葉が荒くて、子どもが嫌がったという。そこでネットで堺ビッグボーイズの存在を知り、移籍した。

「前のチームの監督にそのことを話したら、”そんなのは野球じゃない”と言われました。でも、前のチームに通っていたとき、息子は雨が降ると”やったー!”と喜んでいたんですが、今は雨になると”なんでやー”と残念がるようになりました。お兄ちゃんが楽しそうなので、妹も通わせています」

早くに目立つ子どもは、かえってあぶない

最近、瀬野は「子どもは早熟させたらあかん」と痛感している。

「小中学校の段階で、目立って野球がうまい子が危ないです。大人がすぐに花を咲かそうとするからです。その先のステージの野球関係者が”即戦力だ”と狙いに来ます。すぐに、試合に起用したがります。もちろん、彼らだって潰そうとは思っていませんが、才能を酷使して結果的にそうなっている例をよく見ます。そのときに潰れなくても、上に進んだときに、それまでの無理が積み重なって、ケガや痛みを発症するんです。

小学校、中学校で目立っていた子どもが、高校や大学に進んで手術することが本当に多い。でも、小学校、中学校の指導者は”あ、あいつも手術しよった”というだけで、自分たちの責任だと思うことはない。その因果関係に気がついていない。

日本の野球では、高校生の間に結果を出せる選手、監督が偉いと言われます。そうではなくて、大人になったとき、野球でいえばプロ野球や社会人野球の選手になったときに結果が出るような教え方をしないといけないんじゃないか、ということです。

たとえば黒田博樹投手は、高校時代まで3番手投手であまり投げていない。大学の後半で出てきてプロ入りした。そして、メジャーリーグでの大活躍を含め、41歳まで一線で活躍することができた。上原浩治投手は高校までは野手がメインで、投手としての機会は大学まで多くなかった。そして、今もメジャーで活躍している。黒田投手や上原投手が中学、高校時代からバリバリ投げていたら、これだけの活躍ができていたか? そうなっていたら、日本球界にとってとてつもない損失ではないでしょうか? 反対に若くして大活躍をして潰れた例は、数えきれないほどあります」

堺ビッグボーイズの選手数は増えている。4年前から始めた小学生の部も子どもが増えている。しかし、瀬野はそれでよしとしていない。少年野球界全体が縮小すれば、堺ビッグボーイズも成り立たない。だから、自分たちの考え方を少しでも多くの関係者に広げたいと思っている。

「ハードな野球経験者はうちに見学に来ると、首をひねります。目の前で起こっていることが自分でやってきたことと違うからです。”俺はこうやって根性でやってきたのに”という気があるから、頭で理解しても納得できない。

それほど野球経験がない人は、少年野球はなんであんなに長いこと練習してるのか、何で怒鳴られて野球しているのか、以前から疑問に思っていました、と言います。私やコーチの阪長友仁君は、いろいろなところで堺ビッグボーイズのやり方を紹介しています。

現実はほとんど変わりません。暴力、暴言はさすがに少なくなっていますが、投手の酷使は続いている。有名選手が出ているチームも、育成プランでよい人材が出ているわけではなく、偶然そういう素材が生き残っただけです。

こういう話をすると、他のチームの代表から“瀬野さんのチームはいいよ、筒香選手や森選手みたいな有名な選手も出ているし、いいグラウンドもあるし。うちみたいなチームは勝たないと選手が集まらない。それにうちにはそんな意識の高い子どもや親は来ないし”と言われます。

ボーイズリーグを含めた小中学の野球の指導者のほとんどがボランティアで指導をされています。みなさん、子どものためにと思って指導をされているとは思いますが、この仕組みの限界に来ているのでは、と感じています。堺ビッグボーイズはNPO法人組織を作り、若手の指導者をプロ化しています。プロになればいい意味での責任が生まれます。プロとして、大事な子どもの今だけでなく、”将来”を預かる自覚と責任感が生まれます。

指導者として、経験論ではなく勉強もしなければいけません。そういう仕組みの変革もこれからは必要になってくると思います」

子どもたちの将来につながる指導ができているか

瀬野は、ボーイズでの指導は「教育」だという。

「おおまじめに、教育の一環だと思っています。将来、野球で活躍できるように、そして野球をしたことを人生に活かせるように。指導者に一番伝えたいのは、本当に子どもたちの将来につながる指導ができているのか、ということです。

こういうやり方が、全国的に広がってほしい。そういう仲間たちとリーグ戦を戦いたい。野球が好きな子が、思い切り野球を楽しめるようにしたい。野球の競技人口の減少が問題になっていて、普及活動が全国で行われていますが、ただ単に普及活動をするのではなく、どんな野球を教え、子どもたちをどう育てるのかも考えてほしいと思います」

堺ビッグボーイズの挑戦に、少しずつ共感する人が増えている。道は険しいが、「野球離れ」に対する有効な処方せんの一つとして、注目していきたい。

(文中敬称略)

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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