プロ野球の「球場PV」はどこまで普及するのかスタジアムの稼働率向上は共通の課題だ|マネブ

マネブNEWS:〔2018.10.23〕「第2のスルガ銀行」として首都圏の信用金庫の名が 現在の記事数:287354件

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プロ野球の「球場PV」はどこまで普及するのかスタジアムの稼働率向上は共通の課題だ


横浜DeNAベイスターズ対福岡ソフトバンクホークスの日本シリーズ第3戦 。19年ぶりに横浜スタジアムでプロ野球日本シリーズが開催された。2017年10月31日(写真:共同通信社)

年が明け、プロ野球選手の自主トレが始まった。この後、春季キャンプ、オープン戦と続き、3月30日に公式戦が開幕する。

各球団が本拠地を置く首都圏以外の地域では、今もプロ野球の中継は、地域によっては2桁台の視聴率も見込める、ゴールデンタイムの主要コンテンツだ。それでもビジターゲームまでコンスタントに放送されているのは、関西地区での阪神戦くらい。

敵地開催のリーグ優勝決定戦や、クライマックスシリーズ(以下、CS)、さらには日本シリーズとなれば、視聴ニーズは高まるものの、確実に全国放送されて視聴できるのは日本シリーズくらいだ。

スカパー!なら全球団の全試合を網羅しており、視聴できない地域は一部の離島などに限られる。ほぼ全国どこからでも視聴できるが、有料放送だけにハードルは高い。

本拠地球場で開催されるパブリックビューイング(以下、PV)は、遠く離れた敵地開催のゲームを通い慣れた本拠地球場で見られるだけでなく、同じチームを応援する、見ず知らずのファン同士で盛り上がれる。

悪天候の中、5000人超が観戦

プロ野球史に残る壮絶なゲームとなった、昨年10月15日のCSファーストステージ第2戦。甲子園球場で阪神タイガース、横浜DeNAベイスターズ両軍の選手が、どしゃぶりの雨の中、泥まみれで戦っていた頃、ベイスターズの本拠地・横浜スタジアム(以下、ハマスタ)では、このゲームのPVが開催されていた。

この日は全国的に雨。甲子園同様、強弱を繰り返しながら断続的に雨が降る悪天候の中、無料開放されたハマスタには、球団オリジナルの青い雨合羽に身を包んだ5455人のファンが集まった。

このゲームを生中継していたのは、衛星放送ではNHKのBSと、タイガースの公式戦ホームゲームの大半を放送しているスカパー!のGAORA。地上波では、関西ローカルでは前半はテレビ朝日系列の朝日放送が、後半は朝日放送制作の映像を独立系のサンテレビが放送。

首都圏では独立系のテレビ神奈川がハマスタにカメラを持ち込み、朝日放送から提供を受けた同局制作の現地映像に、自社制作のハマスタの映像を要所要所で挟み込んで、ゲーム開始から終了まで中継した。このほか、朝日放送からの映像提供で、テレビ朝日系列の広島ホームテレビが広島ローカルで放送している。

合羽を着たテレビ神奈川の取材クルーたち(筆者撮影)

この日ハマスタのバックスクリーンに映し出されていたのはGAORAの映像。スカパー!の番組を受信できるテレビで受信して転送したものだ。

画面右下には「Tigers ai」のロゴが見える。阪神電鉄グループの映像制作会社・阪神コンテンツリンク社は、Tigers aiのブランド名で、タイガースの全ホームゲームの基本映像を制作している。NHKも含め在阪の地上波局は、Tigers aiの基本映像を購入することなく放映権を得ているが、GAORAは購入しているので、映像にTigers aiのロゴが入るのだ。

10月15日のパブリックビューイングの様子。右上に「GAORA」、右下に「Tigers ai」のロゴが見える(筆者撮影)

GAORAは7回裏の前を除く各イニング間に毎回CMを入れているが、ハマスタではCMの代わりに球団自前のカメラで映した客席の映像や、ゲーム中の映像から抜粋して作成した、ベイスターズの選手のみにフォーカスしたオリジナルハイライト映像を挟み込んでいた。

7回表前にはチアをグラウンドに下ろし、BGMで「熱き星たちよ」を流してジェット風船飛ばしをし、9回裏の山崎康晃投手登場の場面では、登場曲の「ケルンクラフト400」も流すサービスぶり。

ベイスターズの勝利が決まると、グラウンドの外野部分に用意されていたロケット花火の打ち上げも行われた。いつものハマスタのゲームの時と同じ演出だ。

自前の球場ならではのアドバンテージ

このハマスタでのPVは、甲子園開催のCSファーストステージ全3試合、マツダスタジアム開催のファイナルステージ全5試合、ヤフオク開催の日本シリーズ全3試合中1試合で実施された。CSのPVは2016年シーズンにもハマスタと神奈川県横須賀市の2軍球場・ベイスターズ球場で実施されている。このうちハマスタでは大学野球の使用日に当たっていたため、外周部にモニターを設置して実施し大盛況だった。

このため、2017年シーズンは「CS、日本シリーズ進出を信じて、開幕前から球場の日程を押さえていた」(球団広報)という。

2017年11月4日、2万人以上が来場したパブリックビューイングの様子。外野にも入場者がいることがわかる(写真:横浜DeNAベイスターズ提供)

ちなみに10月28日、29日の日本シリーズ初戦と第2戦は、ハマスタは社会人のアメリカンフットボールの大会に押さえられていたので、ベイスターズスタジアムでの開催を予定していたが、2試合とも台風の接近で中止になっている。

動員数は計9試合で実に9万8000人。日本シリーズ進出を決めた10月24日の広島戦は2万3910人、ソフトバンクが優勝を決めた11月4日は2万1607人に上った。

ベイスターズがこれだけのことをできたのは、球場が実質自前だからだろう。球場自体の所有は横浜市だが、運営会社の横浜スタジアムは球団の子会社だ。

自前でなかったら、警備、誘導、清掃等のスタッフコストは球場持ちではあっても、フードショップの収入も球場のものになってしまう。球団は使用料が発生する一方で、入場料を無料にすると完全に持ち出しになる。だが、自前ならフードの収入でコストをある程度カバーできる。

そもそも球場運営会社が球団の子会社だからこそ、終わってみなければわからない、CSや日本シリーズへの進出を前提として球場を押さえるということが可能だったのだろう。

実際、2016年シーズンに日本一となった北海道日本ハムファイターズの場合、本拠地札幌ドームは赤の他人。日本シリーズのPVは札幌ドームでは1度も開催されていない。PVの開催場所は、敵地マツダスタジアムでの第1戦、2戦は新千歳空港と2軍球場の千葉・鎌ヶ谷スタジアムの2カ所、6戦は旭川市観光物産情報センターを加えた3カ所だった。

一部球団ではホームゲームのPVが標準化

ベイスターズはシーズン中も、ホーム開催日のうち一定日数は、球場外周部の芝生エリアにビアガーデンを設け、大型のモニターを設置してゲームの映像を流している。流している映像は球団が自ら制作した基本映像なので、中継している放送局に許可を得る必要もなければ対価も発生しないし、中継がない日でも流せる。

モニター観戦自体は無料だが、球場内に入れるチケットが多くのゲームでプラチナ化しているので、チケットを買えなかったり、あえてここで応援したいファンの間では、場所取りの対象になるほどの盛況ぶり。ここで稼げる飲食収入はバカにならないはずだ。

東北楽天ゴールデンイーグルスもシーズン中、スタンドの外周部にフードの屋台とテーブルを大量に設け、そこにモニターを設置して球団制作の基本映像を流している。福岡ソフトバンクホークスはスタンド内に居酒屋「鷹正」があり、チケットなしで外から入れる店内にモニターを設置し、球団制作の基本映像を流している。

いずれも実施しているのはホームゲーム開催日であり、球団が基本映像を制作していてテレビ局から映像提供を受ける必要がなく、かつ球場の運営権を球団が握っており、映像を無料で見せても飲食収入が見込めるなど、採算も含めて1つの球団だけで自己完結するからこそ実現しているサービスなのだろう。

これに対し、ビジターゲームのPVは、当日中継している放送局から映像の提供を受ける必要があり、球団単独では自己完結しない。球場という限られたキャパの範囲でしか集客ができないプロ野球興行では、キャパを超える需要が発生する繁忙時には機会損失が発生してしまう。

その一方で、プロ野球のホームゲームの開催日は年間に約70日しかない。12球団中、球場が自前でなく、管理運営する権利も得ていないのは北海道日本ハムファイターズ、読売巨人軍、東京ヤクルトスワローズの3球団だけ。残りの9球団にとって、残り約290日の稼働率向上は共通の課題のはずだ。

ビジターゲームのPV標準化は球団もファンも幸せに

2017年シーズンはソフトバンクもリーグ優勝決定戦と日本シリーズ2試合の合計3試合で、楽天もCSの8試合で、敵地開催ゲームのPVを本拠地で実施している。今のところリーグ優勝決定戦やCS、日本シリーズのPVはファンサービスの一環という位置づけなので、入場料はいずれも無料だが、無料だから人が集まったというわけではあるまい。

もしもシーズンを通してビジターゲームのPVを標準化することができたら、ファンは喜ぶだろうし球場の稼働日数も大幅に増える。パ・リーグ6球団は既に、球団が外部の映像制作会社にオペレーションを委託する形で基本映像を制作している。基本映像には実況も解説も付けており、6球団の基本映像を集めてインターネットで有料放送しているパ・リーグTVも、6球団分網羅した番組の配信開始から今年で10年になる。

既に一定のノウハウが蓄積されているはずなので、ビジターゲームのPVを標準化するためのインフラとして活用できそうな気がする。もともとパ・リーグTVは、応援しているチームのゲームはホーム、ビジターともに見たい、というファンのニーズに応えるために誕生している。

球団が基本映像を制作するとテレビ局と利害が対立するため、親会社グループにテレビ局があるセ・リーグでは球団間の足並みが揃わず、実現のためのハードルはパ・リーグよりも高そうだが、できるところから始めてみてほしいと思う。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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