1口1万円、「小口不動産投資」で何が変わるか新興企業トップにロングインタビュー|マネブ

マネブNEWS:〔2017.12.12〕「区政ファースト」千代田区長に、「税金の無駄遣い 現在の記事数:252855件

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1口1万円、「小口不動産投資」で何が変わるか新興企業トップにロングインタビュー


「不動産とクラウドファンディングの相性は非常にいいので、数兆円のマーケットになる可能性がある」と語るロードスターキャピタルの岩野達志社長2017年9月に東京証券取引所マザーズ市場へ新規上場したロードスターキャピタル株式会社。設立から5年で上場した同社は、自己資金で不動産投資を行うコーポレートファンディング事業を主軸としつつ、個人が少額から不動産投資を行うことのできるクラウドファンディング事業を展開する不動産テック企業です。同社が運営する不動産投資クラウドファンディングのプラットフォーム「OwnersBook(オーナーズブック)」では、1口1万円からオンラインで不動産商品に投資することができ、2017年10月31日時点で1万人以上の会員に利用されています。不動産業とITを融合させ、「不動産テック」という新たな業態を切り拓こうとしているロードスターキャピタルの魅力を、岩野達志社長に伺いました。事業の詳細については「成長性に関する説明資料

 

ロードスターキャピタル株式会社は2012年に創業し、不動産関連のコンサルティングや投資事業からスタート。2014年のRenren Inc.の出資以降、不動産特化型のクラウドファンディング事業として「OwnersBook」の運営を開始。不動産投資・賃貸業であるコーポレートファンディング事業と両輪で成長を実現し、2017年9月にマザーズに新規上場を果たす。

役職員は35名。登録・免許は、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、宅地建物取引業、不動産投資顧問業。2016年度は売上高約47億円、経常利益約7億円。証券コードは3482(2017年11月1日現在)。

中規模オフィスへ集中投資当記事はシニフィアンスタイル(Signifiant Style)の提供記事です

村上誠典(シニフィアン共同代表):まずはロードスターキャピタルの創業経緯を教えていただけますか。岩野社長と森田副社長のお2人で事業を立ち上げられた経緯を教えてください。

岩野達志(ロードスターキャピタル社長):私も森田も、以前はゴールドマン・サックス・リアルティに勤めていた時期がありました。その後、私は別の不動産ファンドに勤めていたのですが、2011年に退職して、それからは1年くらい飲食店を経営していました。2012年に森田が退職することになったタイミングで、一緒に会社を作らないかと声をかけられました。当初、「今は不動産マーケットも良くないし、仕事もないから」とやや躊躇していたんですが、きまじめな森田から「会社を作っておかないとマーケットがよくなったときに動けない」と説かれ、それもそうかと思って会社を作ることにしました。

村上:飲食店とは意外です。不況下で将来のマーケットの回復を見据えて、実績のある不動産業を始められたのですね。

岩野:ただ2人だと金融商品取引業などのライセンスの取得も難しいですし、男性2人で会社を作ってケンカ別れするケースも見ていたので、もう1人必要だと思っていました。ちょうどその時期に、同じゴールドマン・サックス・リアルティにいた中川も退職していたので、管理部門に強い彼女を誘うことにして、3人で会社を作りました。

村上:創業時点で事業モデルはどの程度見定めていらっしゃったのでしょうか?

岩野:創業したのが2012年の3月ですが、最初はガツガツ仕事をするよりも、肩の力を抜いて自分たちにできることをやろうと考え、1~2年の間はコンサルタントや仲介業のような、いわゆるフィービジネスを営んでいました。それなりに売上はありましたが、今の業態とは異なっていましたね。

ロードスターキャピタル「成長性に関する説明資料」よりコーポレートファンディング事業とは?

村上:その後、主力事業の1つであるコーポレートファンディング事業を展開されたわけですね。こちらはどういった事業でしょうか?

岩野達志(いわの たつし)/東京大学農学部卒。一般財団法人日本不動産研究所にてキャリアをスタートし、不動産鑑定業務に従事。2000年よりゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパンにて自己投資・運用ファンドの不動産取得部門、2002年以降はアセットマネジメント部門。2004年からロックポイントマネジメントジャパンLLC ディレクターとしてエクイティ500億円以上、案件総額3000億円以上を実行、ロックポイントグループの日本における不動産投資業務をリード。不動産鑑定士、宅地建物取引士

岩野:コーポレートファンディング事業は、弊社がファイナンスをして不動産に投資する、いわゆる不動産投資業です。この事業には仕入れのルートと販売のルートがあり、ちゃんと目利きができれば、実はそれほど難しいビジネスではありません。不況になったら損するのではないかと言われますが、きちんとしたネットワークがあれば、リスクは限定的と考えています。

村上:不動産の中でもユニークなゾーンを選別して投資されていますね。

岩野:そのとおりです。大手不動産会社が買うような何百億円という物件は数も限られており、競合が激しくなりますが、10億円や20億円という規模のビルは物件数も非常に多いです。そうした中には相続が発生していたり、会社をたたまなければいけなかったり、いろいろな理由で物件を売り急いでいる場合もありますし、市場で適切に評価されていなかったりする場合もあります。そこでビジネスが成立すれば非常に収益性が高いんです。たとえば、エクイティの利回りで20%くらいを求めるというのは、今の市場環境下であればそれほど難しくはないと考えています。

ロードスターキャピタル「成長性に関する説明資料」より不動産屋からクラウドファンディング事業者へ

村上:中国系IT企業であるRenrenが、大株主として御社の40%弱の株式を保有されていますね。この規模で中国系テック企業が日本のスタートアップに投資をするのは珍しいことですし、不動産関係の事業というのも非常に興味深いです。Renrenから出資を受けた際の経緯を教えていただけますか?

岩野:たまたまのご縁なんです。ある時、後輩に中国人の投資家を紹介されました。それがRenrenの社長だったんです。「日本の不動産に興味があるらしいから相談相手になってほしい」と頼まれたのが始まりです。われわれもその頃、アセットマネジメントのビジネスをするなら投資家が必要だという話はしていたので、彼らが投資家として資金を提供してくれればいろいろなディールもできるだろうと考えました。それで彼らに、日本の不動産市場は今投資に値するタイミングであり、ロードスターキャピタルには日本の不動産業界へのネットワークがあるといった説明をしたところ、彼ら自身は不動産の目利きができないから、日本の不動産ではなく不動産会社そのものを買いたい、という話になったんです。ただし、日本では売りに出ているような不動産会社は希有であり、その結果、われわれの会社を買いたいという話になりました。当時のわれわれにはそれほどアセットもありませんでしたし、買っても仕方がないと話したのですが、結局、彼らが10億円で当社の株式の約半分を取得し、大株主になりました。

村上:Renrenは不動産企業ではなく、IT・インターネット企業ですよね。なぜ日本の不動産に興味を持ったんですか?

岩野:おっしゃるとおり、彼らの会社はIT企業なのですが、低金利が続いている中で、不動産市況の回復が始まっている日本は魅力的に映ったのだと思います。さらに不動産とITを融合できないかと相談が進んでいる中で、彼らがアメリカのFundriseというクラウドファンディングの会社に投資することが決まっていたんです。その流れで「君たちも不動産のクラウドファンディングをやればいい。日本では誰もやっていないし」ということになったんです。

村上:予想外の展開ですね。中国企業らしい、大胆さとスピード感です。とはいえ、当時のメンバーでは不動産投資やコンサルティングのノウハウはあっても、ITやクラウドファンディングについてはノウハウがない分野だったわけですよね?

岩野:まったくなかったですね。さらに、個人からおカネを集めるビジネスは、規制上も厳しく監督される領域ですから、その点でも二の足を踏んでいました。そうしたらある時、Renrenからすぐに北京に来いと呼ばれて、そこでFundriseの幹部と話すことになりました。そこで聞いた海外のクラウドファンディングの話が非常に刺激的だったんです。われわれも、不動産投資についてはもっとダイレクトに個人からおカネを集めることができればいいと考えていました。ITによって個人でも簡単に不動産投資ができる環境を整えることができれば面白いと感じていましたし、クラウドファンディングによって、不動産投資のビジネスがさらに進化する可能性を感じていました。それだったらチャレンジしようと思い、クラウドファンディングへの挑戦を決めたんです。

村上:北京に急に呼ばれてクラウンドファンディングを始めることになったというのも、面白い経緯ですね。

岩野:チャレンジは多々ありました。たとえばソフトウエア開発です。我々はソフトウエアのプログラミングなんてやったことがなかったので、どうやって開発を進めればよいのかわからなかったんです。当初はRenrenの子会社と開発を進めていましたが、慣れていないメンバーで中国のIT企業と開発を進めるハードルが非常に高く、思ったようにソフトウエア開発ができませんでした。結局、日本の知り合いにお願いをして開発を進めることにしましたが、そのメンバーが最終的に会社に合流してくれて、今は全部インハウスでできるようになりました。

村上:2014年当時ですと、イギリスやアメリカなどではクラウドファンディング事業者やレンディング事業者が多く出ていましたね。それこそLendingClubが上場するなど、最も盛り上がっていた時期だと思います。グローバルのソーシャルレンディングのトレンドは、どの程度意識されていたのでしょうか?

岩野:海外のトレンドはそれほど気にはしませんでした。われわれには不動産というビジネスのベースがあり、あくまでそこが出発点です。そうした本業から、経験はないけれども可能性のあるクラウドファンディングへ進出し、新たな領域をどう伸ばしていくかを考えてきました。ベンチャー的な発想だと、「もっとリスクを取って、新しい事業にすべてのリソースを投じるべきなんじゃないか」という考えになるんじゃないかと思うのですが、厳格な規制の下でビジネスをしているという事情もあり、無理をして一度でも失敗したら取り返しがつかないと自覚しています。したがって、今も非常に保守的なやり方を取っています。

クラウドファンディングで短期間に売上をスケールさせるよりも、失敗したときのリスクを考えて、コーポレートファンディングでしっかりと利益を確保しつつ、慎重にクラウドファンディングに投資しているんです。

クラウドファンディングの不動産マーケットを作る

村上:御社がRenren社との縁でクラウドファンディング事業を始められたというエピソードは非常にユニークですね。

近年、国内外でソーシャルレンディング事業者に対する信用問題も生じ、ソーシャルレンディングの一時の盛り上がりもやや減速しているように感じますが、そんな中、ロードスターキャピタルのOwnersBookは着実に成長していますね。個人的には、御社の金融プロフェッショナルとしての着実なやり方に時代が追いついてきたという印象を受けますが、この点についてはどのようにお考えですか?

岩野:ソーシャルレンディングがある種のブームで、かつまだ業界全体的にそれほど大きな問題が生じていなかった頃は、「ロードスターは利回りが低すぎる」という声もありました。ところが参入業者が増え、行政処分を受ける会社も出てきたことで、少し雰囲気が変わってきたのかなと感じます。そうやって管理がずさんな会社が出てくると、投資家もリスクについてより注意するようになりますよね。ただ、今だと規制上、商品設計の内容がどうしてもブラックボックスにならざるをえません。投資家の立場としては、運営会社がしっかりしているかどうかでリスクを判断するしかない状態です。

われわれはもともと、上場する予定はなかったんですが、運営会社がしっかりしているということを客観的に理解してもらうためには、上場というプロセスを経て、公開企業として適正な監査を受けて情報を開示するしかないと思ったんです。それが、クラウドファンディング自体の発展にも寄与すると考えていました。

朝倉祐介(シニフィアン共同代表):上場の理由として「社会からの信用を得るため」というのはよく聞く話ではありますが、御社ほどそうした理由に納得感のある上場は珍しく感じますね。

村上:1~2年待っていれば、今御社が仕込まれているエクイティ型クラウドファンディングなど、いくつかのマイルストーンにミートするタイミングが来るのに、なぜあえて今の時点で上場したのかを伺おうと思っていたんですが、そういう理由だったんですね。

岩野:確かにロードショーを回っていて、機関投資家さんに「1年待てばちゃんとバリュエーションがつくのに、なんで待たないの?」という質問も受けましたね。でも、われわれからすればクラウドファンディングのマーケットを作ることが優先なんです。自分たちがエグジットしたいわけじゃありません。たとえバリュエーションが低くても上場して、不動産のクラウンドファンディングに対する世間の認知を高め、お客さんを開拓してマーケットを作りたかったんですよ。まあそう説明しても、投資家さんからは「じゃあうちじゃ、そんなに評価できないね」と返答されてしまうんですけどね(笑)

村上:短期的なバリュエーションではなく、長期的な視点に立ち、少しでも早く上場しようと考えられたわけですね。

岩野:まずはクラウドファンディングのマーケットを作ることが第一です。皆さんが思っている以上に、不動産のクラウドファンディングのマーケットは大きいとわれわれは考えているんです。日本の不動産業界は、REITだけでも10兆円を超えているマーケットなんです。そのうちの何%かがクラウドファンディングに回れば、数千億円のマーケットには成長するわけですよ。だから、そこの資金調達の仕組み作りさえできればものすごいチャンスがあると考えています。

ロードスターキャピタル「成長性に関する説明資料」より

岩野:しかも、個人の方もクラウドファンディングに興味を持ち始めていて、マーケットを作るタイミングとしてはバッチリ合っているわけです。だから、上場して信頼できる事業者として業界を切り拓いていくことがマーケットの発展にもつながるし、結果的に自分たちにも返ってくるんじゃないかと考えています。

不動産投資を個人にも開かれたフェアなマーケットに

村上:不動産業界のプロフェッショナルな方々と対面でやりとりするコーポレートファンディング事業と比べて、個人の方とオンラインでやりとりするクラウドファンディング事業はどのような特徴がありますか?

岩野:個人がコーポレートファンディングのような投資をしようと思っても、現状ではそういう商品がありません。日本のREITのコンセプトは長期保有してその利益を配分するビジネスモデルなので、1年や3年でバリューアップする機関投資家向けの商品のようなものはないんです。

株式やFXといった金融商品は、ネットの力でよりフェアなマーケットになっていますよね。機関投資家も個人も、デイトレードをした際のトレーディングの格差ってほとんどないのに、不動産だけは非常に格差が大きいわけですよ。

われわれは不動産の世界においても個人が参加できるようになるように、情報公開も含めてフェアなマーケットを作りたいと考えています。そのための仕組みづくりをしているんです。エクイティ型の商品にしても、個人はワンルームマンションを買って、アパートを買ったら次はREITしか投資対象がありません。この間がないんですね。銀座のオフィスを100万円で買うという選択肢があってもよいだろうと思うのですが、今はその選択肢がない。そこで、クラウドファンディングを通じたマーケット作りをしてその間を埋めていきたいんです。

村上:不動産投資を長年見てこられた、御社の経営チームの方々ならではの視点ですね。世の中の不動産の中には、個人にとって投資しづらいものがあると。日本にJ-REITが登場してから15年余り経つわけですが、次の段階として新たなマーケットが立ち上がるのは必然的な流れなのかもしれませんね。

岩野:そうですね。海外の動向、ITのコンセプト、不動産の特性といった点から考えても、確実に作ることのできるマーケットだと考えています。ただ、拙速に進めると、ファンドビジネスが全部クラウドファンディングに取って代わられるリスクもありますし、悪意を持ったクラウドファンディングの事業者がいたら、個人投資家から集めたおカネを持ち逃げされてしまうリスクもあります。いろいろ影響が大きい変化ではあるので、監督省庁がそうしたリスクを気にしているのは十分に理解しています。われわれとしては慎重に広めていこうと思っています。

着実に広がる不動産クラウドファンディング市場

村上:御社の「成長性に関する説明資料」を見ると、今後はエクイティ投資型クラウドファンディングに参入していくと述べられていますよね?エクイティ型は貸付型に比べてリスクも高い一方で、リターンもより大きな投資商品であり、ニーズも非常に大きいのではないかと思います。どうしてエクイティ投資型よりも先に貸付型からクラウンドファンディング事業を始められたのでしょうか?

ロードスターキャピタル「成長性に関する説明資料」より

岩野:貸付型のライセンスを金融庁が比較的早めに交付したといった事情によるものです。ただ、貸付型のクラウンドファンディングの内容も、当初予定していたものよりは複雑になってしまっています。たとえば、貸付先は特定してはいけない(「覆面化」)とか、貸付先は複数にしなければいけない(「複数化」)といった行政からの要請があるんですね。要は貸金の仲介ではなくファンドとしてきちんと運用しなさいという方針が定められているのです。

ただこのやり方だと、どのような貸付先に融資をしているのか、案件の内容を隠すことができるので、逆にそれを悪用することもできてしまいます。案件をすべて覆面化・複数化することが本当によいことなのかどうかといった判断は、将来的に変わっていくかもしれません。

これがエクイティ型になるとまったく逆で、案件のすべての情報を開示せよということになります。われわれはそのほうが健全だと考えていますし、マーケットが広がり出せばエクイティ型のほうが広がる余地があると思っています。投資対象物件が特定できるほうがシンプルですし、投資家にとってもわかりやすいですよね。日本の不動産市場は世界的に見ても優良かつ恵まれたマーケットなので、エクイティ型の案件が広まっていけば、5%や10%の利回りの商品はどんどん出てくると思います。

村上:そのためには、国からお許しを得る必要があるということなんですね。

岩野:はい、エクイティ型の案件を提供できるよう関係省庁との調整を続けています。エクイティ型の案件としては、たとえば第一種少額電子募集取扱業者のライセンスのもと、株式投資型のクラウドファンディングサービスを行っている他社さんはすでにありますが、そのライセンスでは1人50万円までとか年間1億円までといった少額要件が設けられています。われわれがやりたいのは、そのような少額要件のないエクイティ型で、投資家にとってお好みの案件があれば金額要件に縛られず投資できるような仕組みづくりです。

とはいえ、前例のないビジネスモデルですので、関係省庁もどうしても審査に時間がかかってしまうというのが現状なんです。

事業間のシナジー効果

村上:ロードスターキャピタルの事業間のシナジーについて教えてください。御社は以前からコーポレートファンディング事業を手がけており、そこで蓄積されたノウハウがクラウドファンディング事業を手掛けるうえでの信用につながっていると思うのですが、そうした事業間のシナジーについてはどのようにお考えですか?

岩野:シナジーは非常に大きいと思います。おカネを集めることができても、どうやって運用してよいのかわからなければリスク管理ができませんよね。われわれの強みは、私も含めたメンバー個人の中でノウハウが蓄積されており、不動産投資業におけるクレジットがあることです。つまり、集めた資金をリスクコントロールしながら運用できるということですね。だから、仮にリターンを出せなかったとしても、リスクコントロールの結果、損失を防いでいるといえます。もしリスクコントロールも十分になされず、そのままリスクが個人に集中してしまったとしたら、マーケットは広がらないとわれわれは思うんです。

村上:単純にネットでソーシャルレンディングをやりましょうというスタートアップと比べたら、財務的な面でも信用の面でも圧倒的な信頼感がありますよね。財務面のメリットも意識して、コーポレートファンディングのリソースをクラウドファンディングに回していこうとお考えですか?

岩野:そのとおりです。逆にそうしないと、不動産投資をわかっていない人がクラウドファンディングをやるしかない状態になってしまいますよね。そうなると、外部の専門性を持った人に投資を任せるしかないのがだいたいのパターンです。しかも、目利きのできる人はコストが高くなります。

われわれは自分たちでコーポレートファンディング投資をして蓄積した専門性を、クラウドファンディングの案件で活用することができます。これはすごいメリットだと思います。景気がいいときは差が出にくいのかもしれませんが、マーケットが弾けたときに、リスク管理の違いが如実に表れると思います。そうしたリスク管理について十分に理解しないままに、不動産投資のリスクを取りにいってしまったら、景況感が悪化したタイミングで即座に破綻してしまうでしょう。

リーマンショックの時も、「このタイミングでもう破綻してしまうんだ」と感じる会社を散見しました。そうやって破綻した事業者の人達に聞くと、まったくリスク管理ができていなかったんですね。われわれは不動産マーケットにおける深い経験に基づいて二重三重にリスク管理しつつ、それでも相応の利益を出すやり方を理解していますし、そのように経営しています。

村上:金融危機を実際に経験した肌感覚って本当に大きいですよね。急成長のスタートアップ企業でこのレベルでリスク管理を徹底し、財務規律を持たせている会社は珍しいように思います。

岩野:ただ、そうは言っても、このクラウドファンディングのプラットフォームを自分たちだけで使うつもりはありません。もしも他の不動産会社から「いいファンドを設立するので、OwnersBookでおカネを調達したい」とお声がけをいただいたら、将来的にはプラットフォームを開放していきたいとも考えています。ただ、そこでもしっかり目利きはしていきます。外部の不動産会社が持ってきた物件が本当にOwnersBookで不特定多数の方にご紹介し、投資を募るに値するかどうかを判断して、クオリティ・コントロールをしっかりやっていきます。

ロードスターキャピタル「成長性に関する説明資料」よりリーマンショックを経て得た不動産投資の鉄則

村上:昨今の新興市場の上場では売出しがメインであまり大きな調達をしない企業も少なくありませんが、ロードスターキャピタルは公募で約15億円の資金を調達されました。これは、財務基盤強化が主目的なのか、今後の投資に向けた資金確保の色合いが濃いのか、狙いを教えてください。

岩野:実はもう少し大きな調達をすることも検討していました。最終的にはステークホルダーとの関係性などを総合的に考えて、あの株数に落ち着きました。株数については資金調達の観点と、上場後の株価のマネジメントのバランスを考えて決めましたね。

村上:コーポレートファンディングでキャッシュフローを回しつつ、将来に向けてクラウドファンディング事業に投資をしているのだと思いますが、この両輪は資金的にうまく回せる仕組みになっているんですか?

岩野:ここは大事なところなんですが、われわれ自身、リーマンショック時など、過去に痛い目に遭っています。だからこそ、その手当が必要でして、たとえばですが、ファイナンスを長期に引くことなんです。どうして不動産会社はマーケットが悪くなると潰れるかというと、ファイナンスが短期だからなんです。銀行さんによっては、短期の貸付でも「絶対にロール(返済期日に新たな貸付を行い、実質的に貸付を延長すること)します」と口約束するんですが、マーケットが壊れてしまったら、なかなかその口約束は果たされません。そういう経験をしてきているからこそ、なるべく長期で手当てしていただくようお願いしました。去年末時点で、加重平均で27年くらいに長期化できています。

村上:27年とはかなりの長期化に成功されていますね。相当タフに銀行と交渉されたと想像します。ほかに財務的に意識されているポイントは?

岩野:物件のほとんどを東京のものにしています。これはマーケットが大きく下落する局面になってもつねに一定の取引量があり、最後まで流動性が残るのが東京エリア案件だからです。そういうリスク管理を取ったうえで、さらにクラウドファンディングによる資金調達はバックストップのさらにバックストップに位置づけようと考えています。

これはリーマンショックを経ての教訓ですが、リーマンショック後も個人でおカネを持っている人はいて、不動産をさらに買いたいとおっしゃる人はいたんです。ただ、ディールへのアクセス手段がなかったために、そうした方々の資金は流入しませんでした。それが結果的に更なる不動産不況を誘発したとも言えます。

クラウドファンディングというインフラ作りをしておけば、マーケットがクラッシュしたときこそ投資をしたいという個人にも不動産投資の道筋が開かれていて、また物件を取得したい不動産会社も個人のおカネを受け入れることができ、Win-Winとなります。また、そうすることによって不動産取引量はある程度保たれ、マーケットも大きく崩れにくくなるだろうと思うんです。そういう仕組みをもったマーケットを作っていくことが、不動産市場の発展や公正化につながるとわれわれは考えています。

少額でも時間をかけて積み上がる力こそ

村上:上場時のバリュエーションや、今の株価水準についてお考えを聞かせてください。一見すると「普通の不動産投資業の会社」ととらえられてしまいかねませんし、厳しい評価を受けてしまう可能性もあったと思うのですが。

岩野:上場時の主な受け皿である個人投資家の方は、クラウドファンディングの可能性を感じている方が多いのかなと思います。機関投資家の方にしてみたら、クラウドファンディングが広がるということは、自分たちの仕事が減るというのと同義ですからね。

クラウドファンディングの可能性を不動産会社の観点から述べると、資金の調達を自分たちでコントロールできる不動産会社は非常に強いという点が挙げられます。過去を見ても、事業基盤が強かったのは銀行が隣にいる不動産会社ですよ。資金の蛇口を握っている不動産会社はどの時代でも強いんです。われわれは独立系で銀行さんからの支援はそんなに受けられないですが、自分なりの蛇口を持つことができれば、圧倒的に他の不動産会社とは差別化できるはずです。

村上:その感覚は非常によくわかります。おカネと案件の仕入れが多様で、かつ労力が少なければ、パフォーマンスは出て当然ですね。

岩野:そのとおりです。今の大手不動産会社さんは、もしかすると1億円や2億円といった規模のおカネを個人から集める意義がどこにあるのかと思っていらっしゃるのかもしれません。ただ、現時点だけを見るのではなく、将来を含めて考えれば、集まる資金が10億や100億になり、1000億になる可能性だってあると思っています。スピードは遅くても、積み重なっていく強さって非常に大きいんですよね。

村上:サブスクリプションモデルやストック型のビジネスと同じですね。

岩野:われわれは特に、30代や40代のサラリーマンの方々が、50万円や100万円といった規模で不動産投資できるマーケットを整えようとしています。彼らからすれば、煩雑さなしに運用できて、シンプルに4~5%の利回りを得ることができます。そうしたニーズはいくらでもありますし、もしも国外にも出て行くことができれば、そうしたニーズはさらにいくらでも広がっているんです。現時点では数億円にしかすぎませんが、果てしなく大きいマーケットです。不動産とクラウドファンディングの相性は非常にいいので、数兆円のマーケットになる可能性がある。だから、時間をかけてでも着実に進んでいきたいと思っています。もし今の資本市場が、そういった可能性まで見て評価していただいているのであれば光栄ですね。

投資単位はどのように決めた?

村上:ネットの強みとして固定費が小さいことを考えれば、投資単位はかなり小さくてもいいはずです。OwnersBookの1万円という投資単位はどのように決めたんですか?

岩野:最初は10万円でやろうと考えていたんですが、たまたま家に来た後輩に話したところ、「僕、貯金10万円もないですよ」って言われたんです。「じゃあいくらなら出せるんだ?」と尋ねたところ、「せいぜい1万円ですよ」と言われて、「じゃあわかった」と1万円に設定したんです。システムを組んでしまえば1万円も10万円も100万円も変わらないので、小さい単位のほうが良いかなと。ただ、あまり小さくなると最後に端数が余る可能性があります。これまでにOwnersBookで数千万円募集してすごい勢いで完了すると思ったら、例えば最後の2万円分だけ調整が入ってなかなかぴったり埋まらない、といったこともありました。だから、あまり刻みすぎるのも不便になっちゃうんですよ。

村上:御社の事業が直面するリスクの幅は広いのでしょうし、だからこそリスクに対して慎重に取り組まれているのだと感じます。その中で、いちばん怖いと思うリスクは何でしょうか? テクノロジーの世界でもあるので、競争環境の変化や競合の出現など、リスクシナリオとして見ているものはありますか?

岩野:競合はまったく心配していませんね。むしろもっと来てほしいし、そのほうが市場の活性化につながります。ただマーケットが大きい分、ちゃんと不動産市場を理解している人達と一緒にマーケットを育てていきたいとは思っています。リスクと考えるのは、法的なリスクや制度のリスクですね。ルールが変わるといくら準備してもできないので、そういう制度的なリスクにはしっかり対応していく必要があります。

村上:なるほど。まさにこれからマーケットを開拓していかなければというタイミングですからね。

お話を伺っていて、おカネを扱う事業者だからこその高い規律や、金融危機を経験されたからこその着実な姿勢といった印象を強く受けました。今日はありがとうございました。

(ライター:石村研二)

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引用元:東洋経済オンライン

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