巨大ホテルが「不動産事業」を売却するワケヒルトンやアコーに続いてウィンダムも|マネブ

マネブNEWS:〔2017.12.12〕「区政ファースト」千代田区長に、「税金の無駄遣い 現在の記事数:252927件

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巨大ホテルが「不動産事業」を売却するワケヒルトンやアコーに続いてウィンダムも


米マリオット・インターナショナルは同業の米スターウッド・ホテルズ&リゾーツを2016年9月に買収。世界のホテル業界に再編の波が押し寄せている(写真:REUTERS/Mario Anzuoni)

グローバル展開する大手ホテル会社による不動産事業の分社化が加速している。

この8月、米大手ウィンダムは自社保有する世界最大規模のタイムシェア事業会社であるウィンダム・バケーション・オーナーシップ(リゾートホテルの共有サービス)を分社化すると発表した。

さかのぼれば、2016年2月に米ヒルトン・ワールドワイドは不動産投資信託(REIT)を分社化し、自社が所有するホテルを譲渡することを表明。同時に、グループ内のタイムシェア事業であるヒルトン・グランド・バケーションクラブ(HGVC)の分社化も公表した。

2017年1月には、仏大手ホテル会社アコーホテルズもグループ内のホテル不動産事業会社であるホテルインベスト(HotelInvest)を分社化すると発表している。

金融緩和による不動産高騰が後押し

大手ホテル会社の不動産事業の分社化は、世界最大手米マリオット・インターナショナルが1993年に自社が運営するホテルの所有会社であるホスト・マリオット(2005年にホスト・ホテルズ&リゾーツに社名変更)を分社化したことが端緒である。

昨年来のヒルトン、アコー、ウィンダムの動きは、潤沢な投資需要を背景に、世界の有力ホテル会社がさらなる成長に向け、マリオットに続いて満を持して分社化に舵を切ったものといえる。

こうした分社化を進めている、大手ホテルのトップは、いずれも不動産投資やM&Aなどのホテル運営以外の分野で高度な経験を有するプロ経営者だ。

マリオットで非創業家として初めてトップに就いたアーン・ソレンソンCEOは、マリオット入社前には法律事務所でM&A専門の弁護士として活躍していた。ヒルトンのクリストファー・ナセッタCEOはホテル不動産投資信託(REIT)であるホスト・ホテルズ&リゾーツを含む、不動産投資業界での豊富な経歴を買われて入社している。

アコーのセバスチャン・バジンCEOも、米不動産投資大手コロニーキャピタルや投資銀行での数々の投資案件を成立させた経験がある。こうした手腕は最近、アコーによるフェアモント=ラッフルズ・ホテルズ・インターナショナル(FRHI)の買収にも垣間見ることができる。

こうした大手ホテルの多くは2000年代に入り上場している。投資家からの成長要求に応えるため、各社は新規案件の地道な開発という従来の手法に加え、運営件数(運営客室数)を急成長させるため、既存ホテルチェーンの買収・経営統合を進めているのだ。

こうした動きはホテル会社にとってもプラスだ。不動産事業(所有)を分社化し、売却することで得られるキャッシュフローで、コア事業であるホテル運営に集中したり、他社買収などを行ったりすることができる。

不動産不況で運営受託型モデルへ転換ウェスティンホテル東京(目黒区)はスターウッドが運営。不動産は2008年からシンガポール政府投資公社が所有している

このことは、ホテル会社が所有する不動産を減らす「アセットライト」(asset light、資産圧縮)を進めることを意味している。さらに、不動産の所有者へホテルの運営サービスを提供し、対価を受け取る「フィー・フォー・サービス」(fee for service、運営受託)型のビジネスモデルにますます転換していくことをも意味する。

不動産投資は多額の資金を必要とするが、こうした「アセットライト」「フィー・フォー・サービス」型の事業はグローバル展開をしやすく、大手ホテル会社に適している事業モデルだ。

こうした事業モデルは、1990~2000年代における不動産不況の苦い経験を経て確立された。ホテル会社が自社で不動産を所有・リース契約していると、景気拡大期には新規案件開発のために必要な多額の資金需要に追いつかないというジレンマがある。一方で、景気後退期には不動産所有に伴うリスクを直接受けて、最悪の場合はホテル会社そのものが債務超過に陥り、身売りせざるをえないケースもあった。

世界的な低金利を背景に、不動産価格も世界的に高水準で推移している。世界の観光市場が拡大するという予測もあり、主要市場のホテル資産は、過去最高水準に達している。大手ホテル各社による不動産事業の分社化は、こうした最高のタイミングで行われているのだ。

日本のホテル業界への影響は?

こうした動きは、日本のホテル業界にどのような影響を与えるのか。日系ホテル会社のビジネスモデルは、海外大手が主流とする「アセットライト」「フィー・フォー・サービス」型からは程遠い。

不動産を所有する会社とホテル運営会社の分離は進んでいるものの、両者間の契約は賃貸借契約が主流だ。その結果、ホテル運営会社のバランスシートにはリース負債が計上されるため、資産圧縮にはならず、所有会社に賃借料が支払われる。

この日本型モデルの問題は、ホテル会社の評価が、本業のホテル運営自体の巧拙ではなく、グループ会社の財務信用力により規定されてしまう点にある。

海外大手は、ミレニアル世代のような次世代顧客層をターゲットとしたライフスタイルブランドを開発して、差別化を図るなど本業のホテル運営そのものを進化させている。

日本のようなグループ会社の信用力に依存するビジネスモデルから新しい発想が生まれることは難しく、グローバル規模で信用力を得られるケースはまれだ。日系ホテル会社が海外で大手と互角に戦っていくためには、早期にアセットライト、フィー・フォー・サービス型への転換など、ビジネスモデルの見直しが必要かもしれない。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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