「新築優遇」主義が中古不動産流通を破壊する「安心R住宅」制度から見える根本的な勘違い|マネブ

マネブNEWS:〔2017.11.21〕1口1万円、「小口不動産投資」で何が変わるか新興 現在の記事数:251707件

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「新築優遇」主義が中古不動産流通を破壊する「安心R住宅」制度から見える根本的な勘違い


人口減少が加速するわが国では、新築が1軒造られれば1軒以上の空き家が生まれる状態だが…(撮影:吉野純治)「安心R住宅」で中古住宅流通市場が活性化?

国が「安心R住宅」という制度を新設する方針であることをご存じだろうか。中古住宅流通市場の活性化を狙うためだ。不動産については「新築至上主義」の考え方が変わらない日本では、中古住宅にはつねにマイナスイメージがつきまとう。不安、汚い、わからない……。

「安心R住宅」制度はこうした感情を払拭し、消費者が安心して購入するためのもの、という建前だ。しかし、もくろみどおりに運ぶ可能性はほとんどないと筆者は考えている。結論を言えば、この制度はほとんど普及せず、中古住宅流通市場が活性化することもないだろう。

中古住宅流通市場の活性化を目的としたとき、誰もが「一定の情報開示をすればそれが可能になるだろう」と考える。国は「安心R住宅」といった国のお墨付きの条件として以下の3点を挙げている。

第1に、売却前にインスペクション(建物状況調査)を行い、雨漏りや構造上の不具合がないことを確認し、購入者の要望があれば、建物について一定の補償を受けられる保険に加入できるとしている。しかし、筆者が創業したさくら事務所の現場での実感では、保険に加入できる中古住宅は市場の半分以下で、大半は耐震改修などを行わないと保険適用できない。

第2に、「安心R住宅」を取り扱う事業者団体が「汚いイメージの払拭」に関する基準を定めるとしている。これに適合するだけでなく、外装や主たる内装、水回りの現況の写真などを情報提供し、リフォームを実施していない場合は、参考価格を含むリフォームプランの情報を付すこととしている。しかし、こうしたことはすでに現場で行われており、特に消費者の安心が増すものではない。

第3に「新築時の情報」「過去の維持管理の履歴に関する情報」「保険・保証に関する情報」などの開示を義務付けている。しかし、「なし」であっても開示したことに変わりなく、問題がないとする点も非常に中途半端だ。

そもそも発想にセンスがない

ほどなく告示化される本制度だが、「国がお墨付きを与える」というそもそもの発想にセンスがない。これまでに公表された制度設計では、ただ税金を無駄遣いすることになりそうだ。1戸当たり100万円の補助金が切れたら、単にそれで終わりとなる可能性が高い。

そもそも、新築住宅建設を促進しておきながら中古住宅流通も活性化したいという姿勢が間違っているのだと、筆者は考えている。

本格的な人口・世帯数減少が始まるわが国においては、新築が1つ造られれば1つ以上の空き家が生まれる状態だが、新築住宅建設にはありとあらゆる税制優遇措置がある。たとえば、新築の固定資産税減額の特例措置(一戸建て3年、マンション5年)は1964年から50年以上継続しており、もはや特例とはいえなくなっている。

しかし、業界団体は、「これがなくなると新築購入意欲が減るから必ず実現させるべき」と要望を出し続けている。もっとも、少し古いが2011年に総務省が行ったアンケートでは「新築住宅特例が住宅を新築するきっかけとならなかった」と回答した人が80%にも上っており、そもそも新築購入のインセンティブとして働いていない可能性が高い。

ほかにも税金優遇措置がある。住宅ローンを借りると、10年もの間、年末ローン残高の1%が所得税から控除され、確定申告で戻ってくる「住宅ローン控除」をはじめ、「登録免許税」や「不動産取得税」にも軽減措置がある。新築住宅に多額の税金を投入しておいて、中古住宅市場にも税金投入して活性化しようとしても、住宅市場の全体最適化が図られないことは明らかだ。このようなずさんな制度設計では、どんな手を打っても効果は限定的だろう。

日本では、総務省の産業連関表に基づき、新築住宅が1つ売れればおよそ2倍の経済波及効果(生産誘発効果)があるとされ、バブル崩壊以降は景気が悪くなるたびに新築住宅優遇策がとられてきた。高度経済成長に伴う人口ボーナス期には、確かにそうした経済効果はあったかもしれない。しかし今後は、1つの新築が生まれれば同時に空き家対策も行う必要があり、とうてい2倍の生産誘発効果など望めないはずだ。

国には、「新築住宅が売れなくなると景気が悪くなるのでは」という先入観でもあるのだろうか。しかし、ほかの先進国では中古住宅流通がメインなのに経済が回っていることは厳然たる事実だ。そもそも、新築住宅の資産価値が維持されるならまだしも、木造の場合、20~25年の経済的耐用年数が設定され、その期間を過ぎると価値はゼロになることが不動産業界では一般的だ。新築不動産に税金を入れることは、構図としてはムダな公共工事をやっているのとほぼ同じではないのか。

中古住宅流通市場を活性化させたいなら、まず新築住宅の税制優遇をやめることが必須といえよう。むしろ、新築を造るなら「空き家対策負担金」を課してもよいくらいだ。

すべての中古住宅は救えない

次に、立地や建物のコンディションの観点から、すべての中古住宅は救えないと割り切るべきだ。選択と集中をせずに、なんとなく中途半端な情報開示を義務付けるだけでは効果はない。それよりも、立地を限定して中古住宅流通・空き家対策を進めることのほうが大切だ。

これまで日本の住宅は25年程度でゼロとされてきたが、こうした慣行は先進国でも異例なことだ。たとえば、築年数に関係なく建物のコンディションによって「実質的な築年数」を割り出すといった価格査定手法を不動産業界・金融機関が採用することで中古住宅に資産価値を持たせ、各家計にもたらされる資産効果による経済循環を生み出すべきだろう。

もちろんすべての中古住宅が価値を維持できるわけではなく「設計」「工事」「点検・メンテナンス」の3拍子のレベルが整っていること、そしてなによりニーズのある立地であるものに限られる。

住宅市場には持ち家としての「新築」「中古」、そして「賃貸」がある。人口動態を踏まえながら、これら全体のバランスについてどのように質と量を整えるのかといった、他先進国では当たり前のように行われている政策議論がまずは必要だ。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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