不動産「仲介手数料」自由化はなぜ必要なのか50年前にできた基準に縛られる合理性はない|マネブ

マネブNEWS:〔2018.09.18〕スルガ銀行事件、パニックの序章か…日本中で過剰な 現在の記事数:286232件

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不動産「仲介手数料」自由化はなぜ必要なのか50年前にできた基準に縛られる合理性はない


不動産流動化を促進するためにも、過度な規制は撤廃すべきだ(写真:AlexRaths / iStock)

全国に散らばる空き家・空き地の流通円滑化を目的として、2018年1月1日より不動産仲介手数料の上限が引き上げられた。宅地建物取引業法では、不動産取引における仲介手数料は、売買価格に対応する形で上限が定められている。200万円以下は、価格×5%、200万円から400万円以下は価格×4%+2万円、400万円を超えると、価格×3%+6万円となる。

全国には多数の空き家が存在するが、物件価格が数十万から数百万といった低額なものが多いため、基準通りの手数料ではビジネスが成り立たない。そこで、今回、上限を18万円(税別)としたが、この程度では多くのケースで経費倒れになることは変わらず、不動産仲介業者が積極的に動くモチベーションにはまったくつながらないだろう。

現在の手数料規定は約50年前の基準

筆者は、もはや不動産手数料について無意味な規制は撤廃し、自由化すれば良いと考えている。手数料がわずか1%だがほとんど何もしない不動産仲介業者もいれば、10%もの手数料を受け取るが至れり尽くせりの業者もおり、多様な選択肢の中からユーザーが選択できるようにすることが理想だ。

そもそも現在の手数料規定は、48年前(1970年)の建設省(当時)の告示に基づいて決められている。1970年といえば物価はいまの3分の1程度で、名目GDPがわずか73兆円だった頃だ。

不動産仲介手数料は1947年までは自由料率だったが、暴利を貪る業者が跋扈して社会問題となり、1952年に宅建業法が制定された。「手数料は都道府県知事が定める」と規定され、やがて1970年に出された建設省告示によって、現在のような体系となった。

アメリカでは基本的に手数料は自由化されているが、業界団体がガイドラインを示していて、6%が目安となっている。売主が6%払い、売主・買主双方のエージェントで3%ずつ分け合うのが基本だ。4%、10%といったガイドラインを示している業界団体もある。

しかし、日本では、今の基準であっても「不動産仲介手数料は高すぎる」と考えるユーザーも少なくない。筆者が接するクライアントからも、「多額の不動産仲介手数料を支払うのは納得がいかない」という声はよく聞かれる。その理由は簡単で、仲介業者が手数料に見合う仕事をしているとは思えないからだ。

仲介業者の対応に不信感

筆者のもとに来られた方の、具体的な事例を紹介しよう。大手メーカーに勤務する藤田直樹さん(38才・仮名)は、インターネットで自分の希望する条件に近い物件を見つけた。6000万円の都心部中古一戸建だ。物件について問い合わせると、すぐに連絡が来た。若い担当者でノリの軽さが気になるものの、いわく「すでにいくつかお話が入っているが、今ならまだ大丈夫」だという。

物件見学では特段の問題も見当たらず、「前向きに検討します」としてその場をあとにしようとしたところ、担当者に「他にもたくさんの引き合いがあり、早く決めないと売れてしまう可能性が高い」と言われた。しかし、その場で決断はできない。どの程度の自己資金を捻出するか、どの金融機関でいくらの住宅ローンを組むか検討しなければならない。

また、築20年を経過しているため、ホームインスペクション(住宅診断)を入れ「建物に欠陥はないか」「買ったあと、いつ頃、どこにいくらくらいの修繕費がかかりそうか」など把握しておきたい。また、事前に親にもひとこと話をしておきたい。藤田さんがそう思ったのは自然なことだろう。

その旨を仲介業者に伝えると、担当者は「早くしないと売れてしまう」とせかす。その後、上司を連れて担当者は自宅までやってくると、その場で決断を促された。「いま複数の引き合いがあります。いまこの場でご決断いただけるなら藤田さんにお譲りします」という。

しかし、藤田さんとしては、住宅ローンをどれにするかまだ決めていないし、親にも話ができていない。さらには建物のコンディションも気になる。上司いわく「インスペクションを入れるなどとうるさいことを言っていては売ってくれない可能性が高い」という。藤田さんは、売主に交渉もせずそのようなことを言うこの上司に不信感を抱いたこともあって「それなら仕方ありません。あきらめます」として引き取ってもらった。

しかし、1週間経過してもその物件情報はネット上に載ったままだ。さらに1カ月が経過すると、価格がおよそ500万円下がっていた。仲介業者に買うことを急かされたことに藤田さんは不信感を抱いた。しかし、500万円も価格が下がっているとなると予算内に収まるため、購入を考え直す。

藤田さんは再び仲介業者に連絡し、ホームインスペクションは入れずにこの物件を契約した。物件価格の3%+6万円(税別)といった仲介手数料について値引き交渉をしたものの「規定の手数料です」として一蹴された。しかし、担当者の態度は契約が終わると一変した。急に連絡が来なくなり、折り返しの電話も遅く、メールの返信も思い出したように返ってくるだけ。

不動産仲介手数料は物件価格の3%+6万円(税別)と高額で、6000万円の中古一戸建を買った藤田さんは仲介業者に186万円(税別)の仲介手数料を支払っている。しかし、住宅ローンの手続きはすべて自分で済ませ、仲介業者の対応・サービスはその対価にまったく見合っていないと藤田さんは感じた。

そして、引っ越しが終わるとすぐに建物の不具合が発生した。床下の配管から水漏れが生じているようだった。すぐに担当者に連絡をすると「契約上、売主に責任はない」とこれも一蹴される。築20年を経過しているため、建物について売主の責任を免除する「瑕疵担保免責」を条件として契約していた。

筆者が創業したさくら事務所に、藤田さんから相談が来たのはこの段階だ。建物をひととおり調べ、水漏れの箇所や修繕方法・費用などについてアドバイスしたほか、他に発見された建物の劣化事象や不具合についても説明した。しかし、こうしたアドバイスは契約前に受けてこそ効果を発揮するものだ。

ホームインスペクションは、確かに業者の言うとおり、特に引き合いの多い今回のような場合、それを拒否する売主も中にはいる。しかし藤田さんのケースでは、仲介業者は売主に交渉すらしていない。宅地建物取引業法が改正され、2018年4月には「インスペクションの説明義務化」がスタートする中、仲介業者のこうした対応は非常に不親切で、多額の手数料を支払っている藤田さんの側に立ったサービスを提供しているとはとてもいえない。こうした業者でも、上限の手数料を取ることが当たり前になれば、モラルハザードが起きるだろう。

物件選びの前に担当者選びをする流れを作るべき

しかし、こうした現実は不動産業界ではそう珍しいことではない。嫌な思いをしないためには、誠実で有能な担当者を探すしかないのだが、そもそも一般的に不動産探しの構造には大きな問題がある。ほとんどの人がまず物件選びから入り、問い合わせをすると事後的に、自動的に担当者から連絡がくる。そのため、顧客は担当者を選べないし、選ぼうという意識も持ちにくいのだ。

しかし筆者は、物件選びの前に担当者選びをする流れを定着させるべきだと考えている。複数の仲介業者に条件を伝え、その後のやり取りの中で対応が誠実か、相性が合うか、求めるスキルがあるかなどを見極める。信頼できる友人・知人などに紹介してもらってもいいだろう。

すでに担当者が決まっている場合でも、変更を申し出ることも可能だ。該当店舗の責任者などに相談するとよい。多くの人にとって、不動産購入は一生に一度と言っていい大きな買い物だ。遠慮、我慢する必要はない。会社としても、担当者と相性が合わないからといって無言で顧客に去られてしまうより、率直に意思を表明してもらったほうが実はありがたい。担当者は後になって上司に怒られるかもしれないが、それも今後の糧として成長してくれればいいだろう。

不動産取引のプロセスは非常に重要だ。ここに不満があると、後に何か問題が発生した際、入居後に後悔することになる。そもそも3%+6万円といった仲介手数料の規定は、それが「上限」と規定されているだけで、必ずしも満額である必要はなく、当事者同士が了承すれば1%でも2%でも構わない。

対応に不満があるなら値引き交渉できるし、そもそも良心的な業者であれば、その業務内容の多寡によって自ら手数料交渉を申し出るところもある。逆に、担当者の力量によって、よりよい条件で購入できたなど、3%+6万円といった上限の手数料を支払うに十分見合うケースもあるし、場合によってはそれを大きく上回ってもよいケースはたくさんある。

不動産仲介は、担当者の誰しもが同じ価値を出せる定型的な仕事ではなく、知識や人間性、交渉力などの総合的なスキルが結果に大きく影響する。受け取る報酬は、その価値に合わせて変動する形が、健全なあり方と言えるのではないだろうか。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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