IS後も「人権侵害」が横行するイラクの実態IS構成員だったというだけで処刑対象に|マネブ

マネブNEWS:〔2018.08.21〕日本郵船、汚れた名門ブランド…子会社で不適切整備 現在の記事数:285231件

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IS後も「人権侵害」が横行するイラクの実態IS構成員だったというだけで処刑対象に


3年間にわたるISの支配によってイラク社会は分断されてしまった(写真:Goran Tomasevic/ロイター)

イラクにおける「イスラム国」(IS)は最盛期には、イラク領土の40%と、何百万人ものイラク人の日常生活を支配していた。医師や教師、裁判官、料理人、弁護士を含む数万人のイラク人が、ISに奉仕するようになり、間違いなく、占領された都市の支配に貢献した。

イラク人がサダム・フセイン下でバース党に加わるように強制されたように、IS制圧地域の人々の多くは、仕事を維持するためにISに加わることを余儀なくされたと語っている。もちろん、中にはISの過激主義を支持している者もいたが。

IS構成員というだけで、処罰対象に

しかし、今のイラク法律によって(そして国連のさまざまな決議によって促されて)イラクはこれらすべての人を訴えようとしている。有罪判決を受けた者は、IS構成員というだけで終身刑または死刑の対象となる。だが、イラク国内の和解を進めようとするのであれば、こうした幅広い訴追は、大きな誤りである。

3年にわたってイラク(そしてシリア)で、想像を絶する苦しみや、死、そして破壊を無慈悲に(そして時に誇らしげに)引き起こしたIS犯罪者を法で裁こうとすることに対しては、イラクは世界中から共感を得ている。われわれが生きている21世紀は、捕らわれたヤズィーディー教の女性が奴隷として売られ、オレンジ色のつなぎを着たジャーナリストが巨大な剣で、ライブカメラでの前で斬首されるという現代版中世主義によって傷つけられた。

日々の横暴だけでなく、ISは支配下のイラク人に対し、ささいな罪での公開処刑から一般家庭を縛る宗教上の厳格な行動規範まで課し、IS討伐のため数千人のイラク兵士が死傷した。ISの戦闘員が捕らえたイラク兵を戦時国際法や、人としての品格にのっとって扱うことはもちろんなかった。

国際連合は、イラク裁判所の訴追を支援するため、IS犯罪の証拠を収集する特別調査チームを設置している。しかし、国際社会は、イラク兵士の手で依然大規模に行われている復讐を見過ごすことを選択した。何千人ものIS関係の女性や子どもを、とりあえず作ったキャンプや刑務所で恣意的に拘留しながら、IS容疑者をひどく拷問し、殴打し、処刑しているのである。

戦争の熱狂下におけるこうした自警主義は収まるだろうが、少なくとも1万人はいるIS容疑者の裁判、投獄、判決、執行は数年にわたって続き、さらに多くのイラク人の家族、部族、地域社会に新たな悲しみをもたらし続けることになる。

違法行為が横行している

人権保護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査によると、現在イラクが行っていることは、過去何十年間にわたってイラクの司法制度が汚されたのと同じような違反行為にまみれている。これは、たとえば以下のような行為だ。

・薄弱な証拠に基づく非人道的な条件下の勾留・自白を強要する厳しい拷問・囚人による弁護士や家族への面会不可、愛する人が生きているかどうかわからないことも多い・簡易法廷、中にはわずか15分しか開廷せず、すぐに死刑判決を下した例も

悲しいことに、これらの裁判には、イラクに対するISの犯罪について、司法的、あるいは歴史的説明をしたり、犠牲者に対する真の正義を立証するという利点すらない。容疑者の多くの告発理由は「ISの構成員」であるということだけだ。これはたった一言で簡単に立証されてしまうものであり、国際法の下での虐殺や、イラク刑法下のレイプ、殺人などの犯罪記録をすべて提出する必要もない。

裁判は、工場ラインの「先入れ先出し」のごとく行われており、蛮行の責任を最も負うべき人々の訴追を優先させる戦略はない。あるイラク人の上級判事は、「イスラム国の料理人はイスラム国戦士と同じく有罪だ」と主張している。

ISによる犯罪の被害者たちは、虐待について証言し、犯罪行為を行った者が法廷で裁かれるのをみて満足なのかもしれないが、これらの裁判にはかかわっていない。犠牲者と司法制度の間には大きな断絶が残ったままである。イラク裁判所がテロ対策法下で少なくとも7282人のIS容疑者を起訴し、92人を処刑したことをわれわれは知っている。

方針が劇的に変わらないかぎり、数千には届かないにしても、さらに何百の処刑が執行され、何十年にわたり、その数十倍もの数の人が裁判所や刑務所にあふれ返ることになる。

処罰とは違う方法で罪を償わせるべきだ

政治的な意図とは別として、イラクにとって現実的な選択肢の中で、この危険な状況を変えることはできる。イラクは、深刻な犯罪や暴力行為をしなかった何千人ものIS容疑者に対して、起訴に代わる策を見つけることができるし、見つけるべきなのだ。

イラクは現実を受け入れなくてはならない。それぞれがISに参加した理由は複雑だが、イラク人の多くはスンニ派孤立の長い歴史が原因だと考えているのだ。

こうした人々のイラクに対する裏切りへの次善策(間違いなく不完全ではあるが)は、ISがどのような犯罪を行ったかきちんと記録できるようにするのと同時に、容疑者が自らやったことを正直に語れる仕組みを作り、彼らとその家族が最終的に所属するコミュニティに奉仕するという形で罪を償わせることである。

これには先例もある。紛争が行われた他国の政府も、訴追に変わるような選択肢を、将来のために選んだ。イラク社会の壊滅的な状況を踏まえると、これは国を再び統合し、再建する最高のチャンスになるかもしれない。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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