幼児教育「無償化」より大事なのはその内容だヘックマンは無料にせよとは言っていない|マネブ

マネブNEWS:〔2017.10.17〕16日の債券市場見通し=堅調スタートも上値に重さ 現在の記事数:249446件

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幼児教育「無償化」より大事なのはその内容だヘックマンは無料にせよとは言っていない


幼児教育を無償化することよりも大事なこととは?(写真:IYO / PIXTA)安倍晋三首相は、「人づくり革命」の一環として、幼児教育の無償化を進めるとしている。具体的には、2020年度までに3~5歳まで、すべての子供たちの幼稚園や保育園の費用を無償化するとのことだ。幼児教育の重要性を示す論拠として定番となっているジェームズ・ヘックマン教授の『幼児教育の経済学』では、小学校以降の教育よりも、就学前の教育のほうが、教育効果が非常に高く、「投資効率」がよいことが示された。では、幼児教育を無償化することも政策として適切なのだろうか?実は、ヘックマンは幼児教育の重要性を主張しているが、政府が推進しようとしているような無償化ではなく、所得に応じたスライド制の負担を提言している。対象者の範囲や子供の親へのケアなど、幅広く目配りしているのも特徴だ。ここでは、ヘックマン自身が描く幼児教育の具体的な方向性について、本書の内容を一部編集のうえ掲載する。大人になってからでなく幼少時に集中分配せよ『幼児教育の経済学』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

貧困に対処し社会的流動性を促進するために、所得の再分配を求める声は多い。

だが、最新の研究は、再分配はある時点では確実に社会の不公平を減じるものの、それ自体が長期的な社会的流動性や社会的包容力(訳注:社会的に弱い立場にある人々を排除・孤立させるのではなく、共に支え合って生活していこうという考え方)を向上させはしないと主張している。

事前分配──恵まれない子供の幼少期の生活を改善すること──は社会的包容力を育成すると同時に、経済効率や労働力の生産性を高めるうえで、単純な再配分よりもはるかに効果的である。事前分配政策は公平であり、経済的に効率がいい。

アメリカではスキルの問題が増大している。これは社会的分極化を生み、機会や成果の不平等を大きくする。

アメリカの若者が大学を卒業する割合は上昇しているが、同時に、高校を中退する割合も上昇している。スキルの問題がもたらすもう1つの結果は、経済生産性の鈍化だ。現在の子供向けの社会政策は認知能力(訳注:IQや学力テストなどで測られる能力のこと)の向上に集中している。だが、人生で成功するには学力以上のものが必要だ。

不平等の拡大や生産性の伸び悩みの主要原因は、公立学校の欠陥でも大学の学費の高さでもない。幼少期の不利な状況を救済するために設計された現在の改善戦略──職業訓練プログラム、高校の学級定員の削減など──は少なくとも現状では、そして単独では効果的でない。

非認知的スキル(訳注:やる気、忍耐力、協調性といった社会的・情動的スキル)の向上を目的とした思春期における改善策は、幼い頃の逆境によるダメージをある程度は修復できる。だが、思春期の恵まれない子供を対象にしたプログラムは公平性と効率のトレードオフに直面する。

一方、幼少期の恵まれない子供を対象にしたプログラムではそれを避けられる。幼い頃の望ましくない環境からくる不公平な非有利性を軽減することによって、公共の福祉をよりよく促進できる。

持つ者と持たざる者とのあいだの、認知的スキルおよび非認知的スキルの格差は、ごく幼い頃に発生し、年少期の逆境に根源をたどれる部分があり、現在ではそうした環境で育つ子供の割合が増えつつある。子供がどれほどの逆境に置かれているかは世帯所得や両親の学歴といった昔ながらの物差しではなく、子育ての質によって測られる。

ただし、それらの昔ながらの物差しは、子育ての質と相関関係にあるのだ。相関関係を因果関係と混同しないことが重要だ。単に貧困家庭にカネを与えるだけでは、世代間の社会的流動性を促進できない。貴重なのはカネではなく、愛情と子育ての力なのだ。

すなわち、社会政策は適応性のある幼少期を対象にすべきだ。家族の大切さを尊重し、文化的感受性を発揮し、社会の多様性を認識しつつ、子育ての質や幼少期の環境を高めることによって成果が導かれる。つまり、効果的な戦略は、選択肢のある高品質なプログラムの提供を必要としている。

どのようなプログラムが効果的か

幼少期の教育プログラムを実施し、アメリカ社会において恵まれない環境に育つ子供たちの諸問題に取り組むには、さまざまな実際的な政策課題がある。ここでは、いくつかの重要性が高い大きな問題について簡単にふれよう。

1 対象の範囲をどのように決めるべきか? 

幼少期の教育プログラムに対する利益が最も大きいのは、親からの十分な教育投資を受けられない貧しい子供だ。貧しさを測るために適切なのは、家庭の貧困度や両親の教育程度とは限らない。

入手可能な証拠は、子育ての質が重要な希少資源だと示唆している。そこで、対象をより正確に定めるために、危険の多い家庭環境を判断する物差しが必要である。

2 どんなプログラムを使うか? 

幼少期を対象とするプログラムが最も期待が持てると思われる。アベセダリアンプロジェクトとペリー就学前プロジェクトは大きな成果を示した。家庭訪問で子育てを支援する「看護師・家族パートナーシップ」に関する分析も、同様に示唆に富んでいる。

家庭訪問を含むプログラムは両親の生活に影響を与え、家庭環境の永続的な変化をもたらし、それが介入が終わった後も子供を助ける。認知能力だけに集中するのではなく、子供の性格や意欲を形成するプログラムが最も効果的と思われる。

費用は収入に応じたスライド制にすべき

3 プログラムの提供者は? 

恵まれない子供の認知的スキルや社会・情動的スキルの向上を目的とした幼少期のプログラムを計画するには、幼少期の家庭生活や文化的多様性を尊重することが重要だ。こうしたプログラムで肝要なのは、両親が援助に値するかどうかを評価することではなく、子供を助けることである。

幼少期のプログラムの目的は、あらゆる社会や宗教や人種の恵まれない子供のために、生産的なスキルや特性の基盤を育てることにある。

社会集団や社会奉仕家たちなどの民間セクターを参加させることは、公的資源を増加させ、コミュニティの支持を生み、多種多様な視点から検討することを保証する。民間と行政との共同作業が、効果的かつ文化の違いに配慮するプログラムを育成する。

4 費用は誰が負担するべきか? 

非難を避けるためにプログラムを全国一律にすることができるだろう。全国規模のプログラムははるかに費用がかかるし、公的プログラムが家族の個人的な投資に取って代わることによる死荷重(訳注:完全競争市場に政府が介入すると、得られたはずの余剰が失われる)の可能性をもたらす。これらの問題に対する1つの解決法は、プログラムは全国一律とするが、家族の収入に応じてスライド制の負担額を設定することだ。

5 幼少期の環境を豊かにするという恩恵を受けられずに思春期に達した恵まれない子供のためには、どんな方針が効果的か?

幼い頃に介入を開始すればいっそう効果的だが、思春期に達した子供に対して効果的な戦略もある。認知的スキルは幼少期に確立され、10代になってから子供のIQや問題解決能力を高めるのははるかに難しいことが、数々の証拠から示されている。

だが、社会的スキルや性格的スキルは別問題だ。これらのスキルは20代の初めまで発展可能だが、学習を向上させることから、幼少期に形成しておくのが最善策だ。思春期の子供に対する戦略は、メンターによる指導や職場での教育を通じて、意欲や性格的スキルや社会的スキルを強化するべきだ。

(翻訳:古草 秀子)

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引用元:東洋経済オンライン

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