チェ・ゲバラだったら、今をどう生き抜くか息子が語る没後50年経っても褪せない魅力|マネブ

マネブNEWS:〔2017.12.16〕15日の債券市場見通し=売り優勢で軟調地合い 現在の記事数:253001件

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チェ・ゲバラだったら、今をどう生き抜くか息子が語る没後50年経っても褪せない魅力


没後50年経っても、国籍や年齢を超えてチェが愛される理由とは(写真:Science Saure/アフロ)1959年7月25日。軍服を着たひげ面の男が広島・平和記念公園を訪れた。男の名はエルネスト・ラファエル・ゲバラ、通称チェ・ゲバラ。当時、キューバの工業大臣を務めていたゲバラは、急遽日程を変更して広島に向かったのである。原爆ドームを見学し、慰霊碑に献花を終えたゲバラはこう言ったという。「日本人は、米国にこんな残虐な目に遭わされて怒らないのか」。あれから58年。この世界は、ゲバラが理想とし、生涯を懸けた搾取のない誰もが公平に暮らせる場所とは言いがたい状況にある。相次ぐテロや移民問題、格差の拡大、大国による右傾化――。ゲバラが生きていたらどう感じていただろうか。2017年はゲバラが39歳という若さでこの世を去ってから50年目にあたる。その節目の年に、日本でもいくつかゲバラに触れられる機会がある。9日から東京・恵比寿で、写真家としても知られるゲバラの写真展「写真家 チェ・ゲバラが見た世界」が開催されているほか、10月には、ゲバラとともにボリビアで戦った、日系ボリビア人フレディ前村の生涯を描いた映画『エルネスト』が公開される。没後50年経ってもなお、年齢や性別、国籍を超えてゲバラが愛される理由は何なのか。来日したゲバラの長男で、「チェ・ゲバラ研究所」のコーディネーターを務めるカミーロ・ゲバラ氏に話を聞いた。チェは主役になることを望むような人ではない

――日本で写真展を開くことに特別な意味は。

写真展は要望があれば、世界中どこでもやっている。それぞれの写真は美術的、歴史的な価値があるだけでなく、すべてがチェの自伝のようなものだ。ただ、彼自身が今生きていたら、写真展をやろうとも思わないだろうし、将来やることも考えなかっただろう。

日本を訪れた際、撮影した原爆ドーム。この後、原爆病院も訪れている ©2017 Centro de Estudios Che Guevara

――やろうと思わない?

キューバで撮影した子ども ©2017 Centro de Estudios Che Guevara

チェは自分が主役になることを望むような人ではないから。彼は自らが果たさなければならない責任を全うする人間だが、自分が目立ったり、主役になりたいとは考えない人だ。それ以前に、彼は自分自身をアーティストだとは考えていなくて、単なる写真好きぐらいにしか思っていなかった。

彼が写真を撮っていたのは、被写体の美しさや歴史的価値を見いだしたからというのもあるだろうが、自分が年を取ったときに家族に「自分はこんなことをやっていたんだよ」「こんな所に行ったことがあるんだよ」と見せたいと思っていたのでは。そういう意味では、写真はストーリーを伝える手段としてすばらしい媒体だと思う。

――今回の写真展では240点以上が展示されている。お父さんが撮った写真を見てどう感じましたか。

Camilo Guevara March(カミーロ・ゲバラ・マルチ)/1962年生まれ。チェ・ゲバラの2人目の妻の長男。モスクワ法学部卒。弁護士資格を持つ。キューバで水産省で漁業関連の仕事に携わった後、母が所長を務める「チェ・ゲバラ研究所」のコーディネーターを担当。オルタナティブ・プロジェクト部門の責任者として、子どもたちへの普及活動を行うと同時に、チェの写真展開催等の責任者を務めている(撮影:尾形 文繁)

純粋に好きだと感じた。技巧的な何かに引かれたというよりは、彼の純粋さがそのまま伝わってくるような写真だということが興味深い。多くの人は被写体に対して純粋でありたいと考えると思うが、なかなかできない。しかし、チェはそれが自然にできるような人だった。

そして、それぞれの写真にはストーリーがあるし、それを撮っている彼のストーリーも移り変わっていることがわかる。いわゆる「自撮り」のような面白いものもあるし、彼がキューバの工業大臣だったときや、メキシコでフォトジャーナリストをしていた時代の写真もある。工業大臣時代には、アジアを歴訪し、日本にも来ている。

――キューバ人にとってチェ・ゲバラとはどんな存在なのでしょう。

多くの人は彼のファンだし、私も熱心なファンの1人だ。これは息子としてではなく、キューバ人として言っている。チェ・ゲバラという人物が成し遂げたこと、掲げた理想、そしてその行動における純粋さ。すべてがすばらしいと思うし、すべてが尊敬に値する。

私個人としては、父親というよりむしろ、精神的につながっている祖先のような感覚を持っている。自分の人生が大変なときに助けてくれる、自分の人生に必要な人物、それがチェだ。

チェは今でもキューバで「生きている」

キューバ人は今でもチェを尊敬し、彼のことを愛している。彼は亡くなってしまったけれど、彼はキューバで今でも「生きている」んだ。たとえば、キューバや世界で何か間違ったこと、何か大きなことが起きたとする。そんなときに人々は、「もしチェがいればこんなことは起きなかったのに」と考える。これはキューバ人の口癖だ。キューバ人の意識の中にいつでもチェはいる。

――経済改革を推し進めたり、米国との国交を再開したりと、近年キューバには変革の波が訪れています。

これは近年に限った問題ではない。キューバで起きた最大の変化はキューバ革命だ。これによってキューバ人は独立した主権国家を手にした。これは国家プロジェクトだった。

そしてこれまでキューバは、この国家プロジェクトの中でその時々に応じて違うシナリオがあった。私たちキューバ人はそれぞれのシナリオに合った役割を果たしてきた。ただ、シナリオが変わり、戦略が変わったとしてもわれわれが乗っているボートが進む方向は同じ。進化することによって、未来にはよりよい生活が待っている。

進化が起きている一方で、変わらないものもある。それはこの国の精神的な部分、キューバという国の根底を支えている連帯感や兄弟愛、社会的正義といった基本的なコンセプトだ。こうした感覚はキューバ人にはとても重要なもので、これなしにはキューバという国は成り立たない。

――キューバは経済改革によって変わりますか。

チェの2人目の妻、アレイダ・マルチの長男であるカミーロ氏には、姉と妹、弟がいる(撮影:尾形 文繁)

私は専門家ではないが、私たちが今住んでいるこの世界は非常に不公平だ。キューバのような発展途上国は主に原材料の供給国だが、その価格はどんどん下がり続けている。

一方、先進国では安い原材料を使って価格の高い製品を作り、それを売って経済成長を図っている。原材料の価格が5%、10%と下がる一方で、最終製品の価格が同じペースで上がっているとしたら、その差はどんどん開いていくことになる。つまり、発展途上国の人間はこれまでも少ないおカネでより高いものを買わないといけない状況になっている。まさに「商業化した世界」だ。こんな状況にはいつか終わりが来るとは思うが。

キューバ人は社会正義を信じている

――そうした不公平や不平等が進んでいる世の中にあって、キューバの人たちはつねに幸せそうにしているように見えます。不遇の時代を生き抜くコツは。

うーん、それにはうまく答えられないが、各国の社会にはその土台になるようなものがあると思う。たとえばキューバは、多くの民族、文化、宗教が混ざり合ってできている国だ。私たちはそれを「Ajiaco(アヒアコ)」という呼び方をする。アヒアコとは、ジャガイモ、鶏肉などの具材が混じり合ったスープのことだ。一つひとつの素材にはちゃんと味があるが、それが別の素材と混じったときにまた違う味わいになる。

それが今のキューバの姿であり、キューバの強みでもある。移民を受け入れてきたおかげで、とても自然にこういう状態になった。さらに、キューバの場合、そこへ人を中心とした社会政策が加わっている。

それが理由かどうかはわからないが、私たちキューバ人は社会的正義を信じ、それを守ろうとしている社会に住んでいる、あるいはそういう社会を維持しようと努力していることは確かだ。もちろん、すべてがバラ色ではない。キューバは間違いも起こしてきたし、欠点もある。

――先ほどキューバ人は、社会的正義や連帯感を大事しているという話が出ました。こうした価値観は今後も変わらないと。

モノが豊富にある先進国であれば、多くのモノを他国に提供することができるだろう。が、キューバが考える連帯感は、「余っているもの」を提供するのではなく、キューバが持っているもの、ひょっとしたらキューバにも足りていないものを提供することだ。たとえば、ある国が支援を必要としていた場合、キューバは医師や大学教授、時には技術者を積極的に派遣する。もちろん、もっと支援できたらと考えているが、キューバは自分たちができる支援をやっている。

キューバ自体も経済的な問題を抱えているが、それでもキューバはアフリカ諸国に医師を送っていて、アフリカの人たちにたいへん喜んでもらっている。アフリカの人たちだって、われわれと同じような状況の中で同じような問題を抱えている。われわれは利己主義になることなく生きている。

――世界を見渡すと、利己主義的な感覚を持つ人や国が増えているように感じます。今多くの国は貧しい国を援助するよりは、自国の利益を守ることに力を入れています。こんな状況にお父さんはガッカリするかもしれませんね。

チェは何かの状況にガッカリするようなタイプではない。彼だったらそういう状況を変えるために闘うだろう。

何かを正そうとするピュアな姿に共感する日系ボリビア人、フレディ前村氏の生涯を描いた『エルネスト』(監督:阪本順治) (c)2017 "ERNESTO" FILM PARTNERS

――10月には、日系ボリビア人で、チェと共に戦ったフレディ前村氏の生涯を描いた映画が公開されます。日本とキューバの共同製作ですが、こうした映画が今作られることをどう感じますか。

こういう映画ができたことは非常に喜ばしい。今回の主人公は、短くて激しい生涯を過ごしたが、その中でこの世の中のネガティブなものと向き合った。そして、彼は自分の意思を貫くために戦ったわけだ。彼は世の中を変えるために死をいとわなかった勇気ある人だ。彼の話は、世の中を変えるためには、革命を起こす勇気を持つことが必要だということを表している。

――映画の中でチェは、彼に大きな影響を与え、前村氏がゲリラ戦に参加するきっかけとなった人物として出てきます。ほんの短いかかわりであっても、なぜ多くの人を魅了したのでしょうか。

チェ自身はどんなときでも自分自身がまず行動し、お手本になった人。それが人々から尊敬を集めた理由だ。多くの人々が彼に魅了されるのは、彼が持っているイデオロギー、考え方、感受性の豊かさ、そして、貧困や搾取、不正などの問題に正面からぶつかって何とか正そうとするそのピュアな考え方に共感するからではないだろうか。

もちろんチェは催眠術師ではないので、むりやりに言うことを聞かせることはできない。もともと同じ興味を持っていた人が、彼と出会い、彼の考え方に共感した結果、一緒に行動したのだと思う。

マネマガ
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引用元:東洋経済オンライン

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