世界のエリートが本の「多読」をしないワケ「使い倒す」を意識したほうが効果的|マネブ

マネブNEWS:〔2017.10.23〕ドイツの小学生が「デモの手順」を学ぶ理由まず役所 現在の記事数:249803件

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世界のエリートが本の「多読」をしないワケ「使い倒す」を意識したほうが効果的


アメリカの学生と日本の学生に違いがあるとしたら、それは「読書量」ではなく…(写真:Sergiy Tryapitsyn / PIXTA)世界中から優秀な人物が集まり、しのぎを削る最高峰ビジネススクール、ハーバード。その学生は、古今東西、大量の本を読みあさっている、そんな「読書家」というイメージがあるのではないでしょうか。しかし、元・サンリオの常務で、現在はLINEの社外取締役やスタンフォードの客員研究員を務める鳩山玲人氏の見方は異なります。日本と海外の学び方の違いを元に、自身も実践する「必ず結果につなげる」本の読み方を紹介します。「日本の学生は本を読まない」は本当か?

ネット上のコラムで、日本とアメリカの大学生を比べた実態調査を見掛けました。

「日本の大学生は4年間で100冊しか本を読まないが、アメリカの大学生は400冊読む。ハーバード大学やエール大学では1000冊は読む」といった趣旨のものです。

調査の真偽はわかりませんが、私の実感は少し違います。ハーバードでもスタンフォードでも、ビジネススクールの学生に関しては、日本人も外国人も、どちらも、さほど本を読んでいません。

私は、ハーバード・ビジネス・スクール(以下、HBS)に2年間留学し、現在はスタンフォード客員研究員を務める立場となりましたが、その印象は変わりません。彼らはほとんど本を読まない。より正確にいうならば、本を読むことを目的とせず、本をどう使うか、つまり実践に重きを置いているのです。

HBSの授業の特徴は、ケースメソッド、つまり事例研究にあります。ケースメソッドとは、実際に起きた経営事例を課題にして、ディスカッションを行う手法です。企業で起こった事例(=ケース)を基に、経営管理・労務管理などの具体的な解決策を導き出します。

ケースメソッドでは、ケースが書かれた資料を教材として使用します。資料には実際に起きた事例と、その事例を構成する事実情報が、15〜25ページにわたって書かれています。ですが、それ以上の分析、解釈、授業で学ぶべき事項(知識や理論など)はいっさい、記されていません。学生は、事前に資料を読み込み、ケースを分析・検討し、具体的な解決策を準備したうえで、対話中心の授業に臨みます。

教授による講義も、基本的にはありません。課題図書や教科書もありません。国籍も職業も異なる1クラス90人が馬蹄形の教室に座って、HBS教授陣のファシリテーション(進行)により、ディスカッションが進んでいきます。

ケースの対象も、課題も多岐にわたります。リーダーシップ、マネジメント、戦略、マーケティング、会計、ファイナンス、倫理、組織など、2年間で500以上のケースを読むことになります。扱うケースの量も、膨大です。1日に3〜5つのケースを扱うため、多いときは、1日で100ページ以上の資料(ケース)を読んでディスカッションに備えることになります。

このようにケース資料をたくさん読む彼らですが、理論や方法論などが書かれた本を読むことはあまり重視しません。

読むべきケース資料が多く、時間がないせいもありますが、彼らは知識のインプットにはさほど重きを置きません。本を読めば、理論や方法論を知識として得ることはできるでしょう。ですが、その知識を実際に使って、実践の場を増やさなければ、課題を解決することはできないからです。

アメリカの学生と日本の学生に違いがあるとしたら、それは「読書量」ではありません。「本の使い方」にあります。

目の前に10冊の本を置くだけで結果は変わる

ハーバード・ビジネス・スクールで衝撃を受けた私は、読書のやり方を大きく変えました。読書を、課題解決に焦点を絞ったのです。結果、私は独自の本の読み方にたどり着きました。

それが「10冊読書術」です。

私は、手元に置く本はいつも「10冊」に絞っています。そのうえで、デスクの上など普段から目につきやすい場所に置きます。

そして優先度や興味の度合いに応じて、10冊の中から、今日読む本を決めています。1日に10冊すべてに目を通しているわけではなくて、1冊のときもあれば、3冊のときもあります。私は主に、移動中と入浴中に本を読んでいます。一方で、10冊以外の「再読する可能性が高い本」と、「興味があって買ったものの、今の自分には合っていない本」は書棚にしまっています。

今の自分に必要な10冊はどのようなものかというと……

● 直面する課題を解決するために読む必要がある本● テーマに興味があって、「実践してみたい」と思っている本● 将来の自分にとって有益だと思える本

です。では、どうして、本を10冊に絞るのでしょうか?

本を「ToDoリスト」のように使う『世界のエリートは10冊しか本を読まない』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

本を10冊に絞ることで、「今、自分がやらなければいけないことは何か」「自分は今、何に興味・関心を持っているのか」が明確になります。10冊をデスクの上に置くことで、毎日、毎時間、その本のタイトルを目にすることになります。すると、そのたびに「今、自分が何をすべきか」を再認識することができるのです。「今、自分がやらなければいけないこと」や「興味のあること」が5つしかないのなら、もちろん5冊でもかまいません。

私は日々のスケジュール管理のため、タスクリストを書き出していますが、目の前の10冊は、タスクリストの代わりにも使うことができます。その意味で、10冊の本とは、「今の自分にとって、最も多くのリソースを割くべきことは何か」を明確に意識づける役割を持っているのです。

10冊の本には、積極的に取り組むべき課題が反映されていますから、それを目にすることで、本当に大切なことに時間を使えているかどうかを日々チェックすることができます。

私は、『The First 90 Days』という本をデスクの上に置いていたことがあります。

この本は、リーダーシップと交渉術を研究しているマイケル・ワトキンスというHBSの准教授が書いた1冊で、「90日間でリーダーがすべきこと」について体系的に述べられています。

ですが、正直にいうと、『The First 90 Days』にどのようなノウハウが書かれてあったのか、細かいところまではあまり覚えていません。ノウハウは覚えていなくても、私はこの本を「リマインダー」の役割として使っていたことがあったのです。『The First 90 Days』では、リーダーの役割について、このように指摘しています。

「新任の管理職が成功を収めるためには、最初の90日間で何をするかが重要である。この時期に小さな成功を積み上げておくと、長期的な成功につながる」

この本をデスクに置いておくだけで、たとえ本を開かなくても、「最初の90日間が大事である」という大切なメッセージを思い出すことができます。

このことを意識するだけで、勝負となる最初の90日間の使い方が変わります。

私がサンリオの米国法人COOに迎えられたのは、アメリカにおける物販事業をテコ入れするためでした。しかし当時のサンリオは、転換社債の返済や負債が重くのしかかっていたのです。物販をテコ入れすると同時に、全体戦略や、転換社債や負債の返済計画が必要ではないかと考えた私は、頼まれてもいないのにすぐに全社の事業戦略にも着手、入社4カ月後にはヨーロッパのライセンスを扱う別会社を立ち上げる準備を整えました。

ハローキティのライセンス事業が軌道に乗ったのは、「頼まれてもいないのにすぐに」実践したことも大きな要因だったと思います。その背景には『The First 90 Days』という本をデスクに置き、最初の90日間の使い方を意識し続けたことがあったのです。

今の私が選んだ10冊の本とは?

では、私の「今の10冊」を紹介しましょう。サンリオ時代とは違って、現在の私は、ビジネスの課題に直面する機会が前よりも少なくなっています。したがって、直接的なビジネスのための読書というよりも、「さまざまな知見を吸収するため」「これからの自分の土台をつくるため」をテーマに本を読んでいます。ビジネスと直接関係がない本を読んでいるのも、「未来につなげる」という自分の課題を解決するためです。

1 『中高6年間の世界史が10時間でざっと学べる』 (宮崎正勝・著/KADOKAWA)世界各国の現状や政治的トピックを理解するには、即時的なニュースだけでなく、その国の歴史的背景に目を向けておく必要があります。2 『歴史を変えた6つの飲物│ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラが語るもうひとつの世界史』 (トム・スタンデージ・著/新井崇嗣・訳/楽工社)文明の誕生から現代までの人類の歴史を、「ビール、ワイン、蒸留酒、コーヒー、紅茶、コーラ」という6つの飲み物を軸にひもといています。3 『地球の歩き方 上海』 (ダイヤモンド・ビッグ社)4 『弱者の戦略』 (稲垣栄洋・著/新潮社)動植物の世界では、一見弱そうな生物にも周到な戦略があって、群れる、メスを装う、他者に化けるなど、あらゆる方法を駆使しています。では、私にはどんな戦略が取れるのか。「植物のように寄りかかるのか。それとも、動物のように自分の力を発揮するのか」「企業が生き残るためには、ニッチを求める必要があるのではないか」など、自分(自社)を成長させるためのヒントとして、とらえることができます。5 『Prescription for Success : The Life and Values of Ewing Marion Kauffman』(Anne Morgan・著/Andrews Mcmeel Pub)私は、Kauffman Fellowsの22期生としてベンチャーキャピタリストとしての修業を始めました。そこで、Kauffman Fellows Program の創始者であるEwing Marion Kauffmanの伝記を、1冊に選びました。6 『あしたのジョー』 (高森朝雄・原作/ちばてつや・画/講談社)7 『ハーバードの自分を知る技術 悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ』(ロバート・スティーヴン・カプラン・著/福井久美子・訳/CCCメディアハウス)8 『島耕作』 シリーズ (弘兼憲史/講談社)9 『日本一楽しい漢字ドリル うんこ漢字ドリル』 (小学1〜6年生) (文響社)10 『シリコンバレー 最強の仕組み』 (デボラ・ペリー・ピシオーニ・著/伊佐山元・序文/桃井緑美子・翻訳/日経BP社)アップル、グーグル、フェイスブック、ツイッター、テスラモーターズなど、誰もが知っているシリコンバレーの企業のイノベーションの秘密を10の視点から解明した1冊です。
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引用元:東洋経済オンライン

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