都内から続々移住、築50年郊外団地のヒミツ衰退する郊外は37㎡・1LDK物件から蘇る?|マネブ

マネブNEWS:〔2017.08.23〕22日の東京外国為替市場見通し=ドル・円、小動き 現在の記事数:246213件

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都内から続々移住、築50年郊外団地のヒミツ衰退する郊外は37㎡・1LDK物件から蘇る?


新宿から電車で約50分、小田急小田原線の座間駅前にある廃墟同然だった団地。ここをリノベーションして「ホシノタニ団地」として貸し出し、殺風景な駐車場を子どものための広場や菜園にしたところ、2人暮らしの夫婦をはじめとして都心から若者が引っ越してきたという(写真:ブルースタジオ)東京郊外の衰退が止まらない。かつて都心へ通勤するサラリーマン家庭のベッドタウンとして開発された都心から30~50km圏の郊外住宅地。現在、ここで人口減少が起きている。30~40代の“郊外2世”たちが、長い通勤時間を嫌い、よりよい子育て環境を求めて、当該地域から流出しているのだ。郊外は、このまま高齢化による人口純減で“墓場”になってしまうのか。郊外に再び若者を呼び戻すための策はあるのだろうか。郊外をよみがえらせるための1つのヒントになりそうなのが、建築家の大島芳彦氏が手掛ける、東京や神奈川の郊外住宅地の再生だ。郊外を若者たちからも「選ばれる街」にするための方法とは。『東京は郊外から消えていく!』『東京郊外の生存競争が始まった!』などの著書を持ち、郊外に詳しい三浦展氏が、大島氏に話を聞いた。成城から座間に転居?! 人気の「ホシノタニ団地」この連載の一覧はこちら

三浦:先日、大島さんの建築事務所、ブルースタジオが手掛けた座間(神奈川県座間市)の「ホシノタニ団地」に取材に行かせてもらいました。若い人がけっこう東京23区内から引っ越してきたとか。

大島:昭和40年代に建築され、老朽化した小田急電鉄の社宅をスケルトンにして耐震補強し、リノベーション。37㎡の1LDKで7万円台。1階ならば庭付きで9万5000円の賃貸住宅にしました。

かつて殺風景な駐車場だった所は、菜園や子どもが遊べる築山にして、ドックランもあります。ある棟の1階には子育て支援施設が入っていたり、金・土は夜10時まで空いている農家カフェもできました。

座間の駅前広場には、子育て世帯が遊べる空間を作った。ホシノタニ団地の1LDKに住む若いカップルに、この街で子育てがしたいと思ってもらうことが狙いだ(写真:ブルースタジオ)

おかげさまで、竣工から約3カ月後には満室になったんですよ。

郊外から都心へ人口が流出しているといわれますが、ホシノタニ団地の場合は、世田谷区など東京23区内から引っ越してきた人が、入居者全体の半分くらいはいました。

三浦:何がよかったんでしょう。

大島:座間駅は、急行は止まらず、知名度は低い。小田急電鉄さんによれば、都心から50分という位置にありながら、沿線の家賃相場は比較的安いと聞いています。これを今後、選ばれる街にするにはどうするかと考えたときに、「子どもたち」というコンセプトにフォーカスしようと思いました。

ホシノタニ団地の見取り図(図:ブルースタジオ)

やっぱり、(1室の広さが)37㎡だったことがよかったと思っているんです。この広さだと、家族では住めないけれど、2人暮らしのカップルにちょうどいい。しかも、駅前立地で7万〜9万円台。すると、共働き夫婦にとっては、なかなかいい条件のはず。

2人暮らしカップルは「ここで子育てしよう」

ここで2人暮らしを始めたカップルに何を気づいてほしいかというと、「この街にはこんなに子育てをしている人たちがいるんだ。こんなに子育てに適した街なんだ」ということ。団地の前には子どもたちが遊べる広場があって、子育て支援施設があったり、菜園があったりもするから、周辺地域の子育中の人がそこに集まってくる。しかも、たとえば世田谷区から移住してきた人からしたら、家賃は半分くらいになっているはずで、経済的にも暮らしやすい。自然も豊かだし。となると、ここで子育てをしようというイメージが湧きやすいんです。

大島芳彦(おおしま よしひこ)/1970年東京都生まれ。1998年石本建築事務所入社。2000年よりブルースタジオにてリノベーションをテーマに建築設計、コンサルティングを展開。大規模都市型コンバージョンや大規模団地再生プロジェクトなどを手掛ける一方で、エンドユーザー向けに物件探しから始める個人邸リノベーションサービスも多数展開。近年では地域再生のコンサルティング、講演活動で全国各地に足を運ぶ(撮影:梅谷秀司)

いざ子どもを持てば、人というのは、自分が子育てを始めた場所に愛着を持つもの。ママ友もできるし。でも、子どもが大きくなってくると37㎡の部屋は手狭になってきます。そうなればここを出て周辺にたくさんある空き家をリノベして移り住んでくれればいい。

要するに、ホシノタニ団地がこの街へのトライアルステイ的な装置になって、地域住人の世代の循環を生んでくれることを期待しているということです。

三浦:企業でいえば、インキュベーションだよね。

郊外の物件は、ホシノタニ団地以外にもいくつか手掛けてますね。先日、東久留米の築30年の集合住宅をリノベした賃貸物件前で野菜市場が開かれると知って、僕もお邪魔しました。あと、小田急江ノ島線の鵠沼(神奈川県藤沢市)でも、地域の社会課題をテーマにした物件をやられているんでしたっけ。

大島:はい。リーマンショックの前までは、お客さんのほとんどが外資系ファンドで、3A地区(麻布・赤坂・青山)を中心に仕事をしていましたが、最近はもう郊外専門のようになっちゃって。

今は環八(環状八号線)どころか16号線よりも外側の物件を手掛けることが多くなってきています。現在も、ホシノタニ団地をきっかけとして、小田急沿線の郊外を見直していきましょう、という話をしています。

大島:なぜ郊外ばかり手掛けているのかというと、都心より郊外のほうが、人間らしい暮らしをデザインできる余地があるから、仕事をやっていて楽しいんですね。都心だと、いまだに新築というだけで工夫しなくても物件が流通してしまう傾向がありますから。

もっとも、やはりそこの地主さんなどが、ある程度長期的な目線で「自分たちの街をどうにかしなきゃいけない。今動かないと選ばれない街になってしまう」と危機意識を持ち始めていて、今重い腰を上げて何かアクションを起こそうとしているという状況に駆り立てられる部分もあります。

さらに、郊外を沿線に抱える鉄道会社や、郊外の団地を開発してきたUR(都市再生機構)さんたちも問題意識を共有している。ここ1年半くらいは、彼らと足並みをそろえて、共に集って語り合い、どうプロジェクトに落とし込んでいくかを考えています。

郊外再生といっても、建物というハードウエアの再生というよりは、街全体の再生を考えていかなきゃいけない時代が来ているんです。

標語は「脱ベッドタウン」

三浦: 郊外の再生ということを考えたとき、核となるコンセプトはなんでしょう。

大島:とにかく「脱ベッドタウン」を標語として掲げています。これまでの郊外の機能であった、通勤する人が寝に帰る場所という機能を見直すべきだと。おこがましいかもしれませんが、三浦さんが郊外再生の道として脱ベッドタウンとおっしゃったのとまさに同じタイミングで(笑)。

そのためには、生活圏内で仕事ができるようにしなきゃいけない。若い世代にとって、1日24時間のうちでは仕事に費やす時間が圧倒的に長いわけです。それを自分たちの街の中でできるようになれば、周辺にさらに新たなビジネス(商い)が生まれる可能性も生じる。まずはその環境を整えることが大事だと思います。

三浦:ベッドタウンとしての郊外が成り立たなくなったのは、やっぱり女性が働くことが前提になってきたのが大きいですね。

「女性が働くことが前提になってことで、都心周辺の住宅地にベッドタウン的機能が移った」と三浦氏(撮影:梅谷秀司)

家事や子育てしながら働くとなると、郊外から出勤するのはつらいので、東京都心の近くに居を構え、武蔵小杉のタワマンが人気になる。私が行った住みたい街調査によれば、武蔵小杉は正社員人気ナンバーワンなんです(武蔵小杉が「住みたい街」と答える人の共通点)。ここをベッドタウンとは呼ばないけれど、縦に伸びただけで、機能としては一緒です。豊洲も月島もそうですね。

大島:そうですね。女性が働くということを考えた際に、僕は多摩ニュータウン近辺の、都心まで1時間を切るエリアでとても面白いことができそうだと思う。あのあたりの開発が始まったのは1960年代以降なので、高齢化が進んでいるところも多い。でも、いまだに宅地開発、マンション開発が少しずつ進んでいて、核家族世帯が流入する傾向も維持している。

ここを買う人の世帯年収って、千葉や茨城方面と比べると格段に高いんです。住んでいるお母さんたちも、共働きでハイキャリアの人が多い。そこから約1時間という都心までの距離は、毎朝通勤するのはツラいが、自分のペースで仕事ができる人にとっては理想的な環境とも言えます。可能性を秘めながらくすぶっている人たちにとって、同じ感覚を共有する仲間と共に、起業できる環境のニーズは潜在的に多いはず。

大島:実はこのエリア、定年退職をした人の中からは、すでに起業する人が出てきているんです。1960年代から開発されている宅地団地は、団塊の世代から、さらにその上の世代がまだお元気。しかも、販売当時は高級分譲地ですから、働かれていたのは一流企業です。いままでに形成した資産や退職金も含めて、おカネももっていらっしゃるんですね。

だから、定年後に「自分のスキルを活かしてワインのインポートビジネスをしています」とか「生ハムを売っています」という人がいます。

三浦:そういうビジネスは、家を改造してお店を作ってやってるの?

大島:たいてい自分の家の書斎なんかで、パソコンとネットを駆使してやってるんですよ。残念なのは、それらのアクティビティーが街に起きている現象として認知しにくいということ。

若い人の中にはもちろん、これに近い起業を郊外住宅地、自宅でする人も多い。そう考えると、郊外では若い起業家たちだけでなくて、主婦や高齢者もあわせて、お互いのスキル、ノウハウを共有しながら世代をまたいで「コワーキング」するという、郊外住宅地だからこそあり得るワークスタイルに期待が高まる。郊外には、都心の青山、渋谷、丸の内のコワーキングスペースで起業しなくちゃいけない、という決まりはないですよね。

価値観を共有できる人間と共にビジネスチャンスを広げたい、というそもそものコワーキングニーズを考えれば、郊外住宅地のど真ん中に仕事場を含む暮らしの拠点を持つという価値観は共有意識が芽生えやすいはずです。たとえば、お母さん同士が自分たちの生活に対する問題意識から生まれるビジネスを作ろうとする場合、郊外住宅地でビジネスと暮らしの両立をはかるのに最適でしょう。ムリして渋谷まで出勤するより、健全ですよね。

仕事の仕方が多様化している現在、仕事をする場を郊外の宅地に移植することは可能なんじゃないかと僕は思います。

三浦:千葉県の流山市では、もうそういう流れが起きています。30代のママさんが、地元で起業したり、起業家支援のイベントをやっています。さらに、コワーキングスペースをつくって、そこに化粧品情報サイト「@cosme」をやっているIT企業を誘致したんです。アットコスメのサイトデザインとか編集作業を流山でやっちゃう。家の近くだから、子どもが熱を出したら、家に寝かせて、また戻ってきて仕事をするとか、そんな働き方ができるわけです。

住めて働ける街は、各停駅前にあった

大島:それは面白いですね。ちなみに、郊外に仕事場を、と考えたとき、僕は急行停車駅より、各駅停車のほうがやりやすいと思っています。

三浦:なぜですか?

大島:各駅停車の駅前のほうが、住宅に近いですから。駅前の商業地が極端に小さいです。毎日駅前まで自転車で通勤して、お昼ご飯は家に食べに帰って、晩ご飯前にもいったん家に帰って、ドレスアップして街の演奏会に行く、なんてすてきな生活もできるだろうし。

そして、必要に応じて都心でクライアントとの打ち合わせがあるときなど、その都度都心に出向く。こういう働き方は、マジョリティにはならないかもしれない。けれども、その地域の暮らし方の旗振り役として働き方を変えていくきっかけになるはず。郊外で仕事をするというのはこういうことです、と。

三浦:今のお話を聞いていると、大島さんは必ずしも建物のリノベをしなくていいってこと?

大島:そう。僕が考えているリノベっていうのは街のリノベなので、建物の再生をしなくてもいいんです。

大島:リフォームとリノベーションの違いって何かっていうと、リフォームっていうのはハードウエアを交換することなんですね。もう一度フォームを変えるっていうことだからリフォーム。だけど、リノベーションって、もう一度革新、刷新するということで、使い方を変えるのがリノベなんです。

三浦:じゃあ、いわゆる設計、施工の仕事はなくても、コンサルティングの仕事でいいということですか?

大島:そうですね。建築ではなく、たとえばランドスケープ(景観)の再生や特定のエリアの地域価値再生を依頼されることが最近増えています。たとえば、某鉄道会社から依頼されているあるニュータウンの駅前再編の仕事として、駅前で仕事ができるようにしましょう、と取り組んでいるのが、オフィスビルを作ろうというわけではなく、公園だったりする。公園にWi-Fiを飛ばして、木陰で働ければ、その方が郊外の仕事の仕方らしいでしょ。

その街には、1980年代から00年くらいまでは、街の中心として商業施設があって、朝、人がウワーッと出勤していって、夜バーッと帰ってくる。そんな駅だったのに、今は人が全然いない。駅前の商店はシャッター街。そのままにしておくくらいなら、マンションを建てて売ってしまえ、となるのですが、そうなると街の商業的な賑わいは半永久的に止まってしまい、実は高齢化の問題が先送りされただけ。かといって、かつての商業の賑わいを再生させるのも現実的には難しい。となると、必要なのは仕事ができる場をつくるということなんです。

『東京郊外の生存競争が始まった!』(光文社新書)。上の図をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

三浦:そういうアイデアの元ネタとか着想のヒントになった街があるんでしょうか。欧米、特にアメリカの住宅地は公園がうまく活用されていますよね。

大島:ええ。アメリカでは公園が積極的に活用されていて、特にニューヨークなんかの都市や近郊においては、公園は仕事をする場所としてメジャーです。

たとえば、マンハッタンのミッドタウンには、Bryant Park(ブライアントパーク)という、ニューヨーク公共図書館の前に広がる緑豊かな公園があります。あそこの回廊型の林の木陰では、多くの人がパソコンを打ったり、打ち合わせをしていたりとか、仕事をしている人を多くみかけます。

三浦:日本の会社は、フリーアドレス制は増えてきたけど、都心のオフィスの机の上で仕事する、という固定観念がある。ただ、簡単な仕事は機械がやってくれる時代で、クリエーティビティが必要になってくる中、いろんな場所でいろんな働き方があることが、創造性にも影響してくるんじゃないですかね。

郊外が脱ベッドタウンしたら、面白い街になる

三浦:『週刊東洋経済』(2017年7月15日号)の書評に、私の本(『東京郊外の生存競争が始まった!』)が載っていたんだけど、「楽観的な郊外展望」って一言で書いてあった(笑)。楽観しているつもりはないんだけどね。

都心はマンションと同質的なビルばっかりになって、チェーン店のお店が並んで、個人経営のものすごくおいしい焼き鳥屋さんがあるとか、際立った個性が入り込む余地がなくなってきているような気がする。

だからこそ、郊外で働いて、郊外でお店をやって、郊外が脱ベッドタウン化していったら、面白い都市になる可能性があると思う。10年後、あるいは20年後のことかもしれないけれど。

大島:楽観していい郊外、つまり可能性に満ちあふれた郊外ってありますよ。僕も、多摩ニュータウンあたりからその西側、厚木のほうや横浜市北部のあたりまでは、自由な発想で、イチから街の存在意義そのものをリノベしたら、ものすごく個性的な街が生まれるはずだと思っています。その軸は、働ける街だけじゃなく、アミューズメントに長けた街や、赤提灯が住宅街全体に点在する居酒屋団地だとか……。

どうやって衰退を食い止めるかじゃなくて、もう一度どうやって「選ばれる街」になるかという、街そのものの存在意義を問い直すべき時代だと思いますよね。

(構成:東洋経済オンライン編集部 印南志帆)

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引用元:東洋経済オンライン

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