シリア危機から7年、まだ終わらない悲しみ日本からは一体何ができるか|マネブ

マネブNEWS:〔2018.06.18〕有名プロ野球選手も多数常連の「聖地」居酒屋あぶさ 現在の記事数:261764件

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シリア危機から7年、まだ終わらない悲しみ日本からは一体何ができるか


AAR Japanでトルコでのシリア難民支援を担当する小田隆子氏(左)と、シリア・ダマスカス生まれのラガド・アドリー氏(右)に聞く、私たち日本人一人ひとりができること(写真:GARDEN Journalism)シリア危機から7年。長期化する紛争状態の中で、多くの一般市民が巻き込まれ、不安な生活を強いられています。2018年2月から続いているシリア首都ダマスカス近郊の反体制派支配地区・東グータでのシリアのアサド政府軍による攻撃では、3月8日時点で民間人の死者が900人を超えたとイギリスのNGO「シリア人権監視団」が発表しました。また、東グータの空爆では毒物も使われ、被害者が呼吸困難を訴えているとも報道されています。対立の構図が複雑化したシリア内戦は、7年経った今も解決の糸口を見いだせずにいます。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2018年3月1日時点で559万8685人が国外に退去しており、その内シリア難民の最大の引受国であるトルコでは354万0648人が難民登録をしていると報告されています。また、国内避難民も650万人に達しています。長期にわたるシリア難民への支援が求められる中、日本政府は2016年5月、2017年から5年間で最大150人のシリア難民を留学生として受け入れると発表。そのうち100人を担当するJICA(国際協力機構)は、UNHCRの協力のもと、2016年11月に募集を開始しました。募集しているのは、レバノンとヨルダンでUNHCRによって難民登録された、学士号を取得している22歳から39歳までのシリア難民の方です。2017年8月には、初年度の約20人が来日しました。留学生は配偶者や子どもを帯同することができ、この5年間で家族を含めると300人ほどのシリア難民の方が来日するのではないかと言われています。そんな中、私たち日本人一人ひとりができるアクションの形とは? GARDEN Journalismでは、国際NGO「AAR Japan[難民を助ける会]」と講談社クーリエ・ジャポンの共催で、シリア危機から8年目となる今、改めて難民支援について考えるシンポジウムを企画しました。AAR Japanからは、2017年6月から東京事務局で働くシリア人職員ラガド・アドリーさん、約30年トルコとかかわり現在はAAR Japanでトルコでのシリア難民支援を担当する小田隆子さんをお迎えします。4月10日に開催するシンポジウムを前に、アドリーさんと小田さんにインタビューしました。AAR Japanのトルコでのシリア難民支援活動について取材した記事はこちらからご覧ください。長期の紛争では子どもがいちばんの犠牲者に

堀:よろしくお願いします。

本記事はGARDEN Journalism(運営会社:株式会社GARDEN)の提供記事です

アドリー・小田(以下、アドリー):よろしくお願いします。

堀:アドリーさんには去年の6月にお話を伺った時には、これからいよいよAAR Japanさんで研修も受けて日本からシリアへの支援を始めますということでした(その際の記事はこちら)。今は具体的にどんな活動をされているのか教えてください。

アドリー:トルコでシリア難民を支援する事業を少しだけ担当していたり、シリアに関する講演をしたりしています。

故郷への想いは「言葉では説明できない」(写真:GARDEN Journalism)

堀:シリア内戦が激しくなって、今月(2018年3月)で7年が経過しましたね。今、市民の皆さんはどのような状況なのでしょうか?

アドリー:人によって、また住んでいる場所によっても全然違います。とても大変な生活をしている人もいれば、なんとかやってきている人もいます。たとえば、私が住んでいたダマスカスでは、仕事にも学校にも行けますので、国内の他の場所と比べたらマシだと言われます。しかし、別の攻撃の激しい場所では、食料がなかったりとか、家から出入りができなかったり、仕事にも行けなかったり、という人もいます。全国的に見ると、3校に1校以上が運営されておらず(※1)、病院だと運営されているのは50%だというデータも見ました(※2)。

(※1)Humanitarian Needs 2018によると、シリア国内の3校に1校以上が紛争によって被害を受けたり、破壊されたりと、もはや学校の機能を果たしていない。そのうえ、その他の多くの学校施設は国内避難民の避難場所として使われています。また、2015〜2016年度においてシリア国内に暮らす175万人の子どもたち(約3人に1人)が学校に通えていない状態にあります。

(※2)Humanitarian Needs 2018によると、シリア国内にある111の公共医療施設のうち、55施設(約50%)は通常どおり運営されているものの、25施設(約22%)は人員や設備の不足、建物が破壊されるなどして一部の機能を失い、31施設(約28%)はまったく運営することができていません。

学校に行けない世代が生まれてしまった

堀:故郷への想いはどのようなものがありますか?

アドリー:それは言葉では説明できないです。やっぱり、「終わってほしい」という気持ちばかりです。

堀:7年って長いですよね。7年間続くことのいちばんの問題はどんなところに感じますか?

アドリー:今学校に行けない世代が生まれてきました。大人にとって7年は短いかもしれませんが、子どもにとってはとても長い。たとえば、2011年に6歳だった子どもが、小学校も中学校も行けなくなって、文字が書けなくなってくるなど、長期の紛争では子どもがいちばんの犠牲者になっています。

AAR Japanがトルコ南東部で運営するコミュニティセンターで勉強するシリア難民の子どもたち(写真:AAR Japan[難民を助ける会])

堀:シリアに関しては日本での報道が少なくなってきたと感じるのですけど、ラガドさんはどのように感じていますか? また、注目が薄まってしまうと、実際にどういうリスクがあるでしょうか?

アドリー:やはり、もう少し伝わってほしいですね、毎日シリアで起きていることを。大事なニュースがあっても日本であまり報道されていないので。報道されないと関心も減り、支援も減ってきてしまいます。シリア危機は終わっているわけではありません。もう少し見て知って、ただただいろんな人にいろんなところで話してほしいです。「シリアでまだ続いてますよ」というくらいでいい。それが続いていくと、もう少し世界がシリアを見るようになり、支援も入ってくると思います。

堀:何をいちばん知ってほしいですか?

AAR Japanがトルコ南東部で運営するコミュニティセンターで行った音楽発表会で元気よく歌うシリア難民の子どもたち(写真:AAR Japan[難民を助ける会])

アドリー:「私たちのことを見てください」とか、「私たちが毎日どのような生活をしているのか見てください」とか、「何で見てくれないのか」というシリアからの動画がネットでよく上がっていて。単純な言い方なのですが、彼らのことを、彼らの気持ちを、知ってもらいたいです。

問題があまりにも多様になってきている

堀:小田さん、AAR Japanさんはシリア難民支援の活動をトルコでも続けていらっしゃいますが、支援の現状を教えてください。

小田:シリアからトルコに入ってくる難民は、一時は本当に大量の人が国境に押しかけてきて、怒涛のようにトルコに入ってきていたのですが、今は国境ゲートを閉めているということもありそんなに多くはありません。それでも越境してくる人たちもいます。また、まだ難民登録していなかった人たちがだんだん登録してきているので、登録済みの難民の数が増えているということはあります。最初に押し寄せてきた時は、着の身着のままで逃げてくるので、食料や住居などいろんな問題がありますが、それは一過的な問題にすぎません。しかし今、避難先のトルコで何年も住んでくると、ほかの問題が発生してきているんです。それは、最初に難民が押し寄せてきた時のひとかたまりの問題と違って、個人が抱えている問題。たとえば、「難民登録して労働許可を取りたい」という方もいれば、負傷していたりずっと病気を持だったりという健康的な問題を抱えている方も。また、子どもの教育も深刻です。アラビア語が全然できない子が増えてきています。それぞれの問題があまりにも多様になってきているので、私たちもひとかたまりの支援ではなく、一人ひとりのニーズに合った支援を考えています。

堀:細かな、一人ひとりのニーズに合った支援が必要になってきているということですが、具体的にはどういうケースがありますか?

小田:たとえば、医療やお薬の問題では、これまでは一様に車いすをお渡ししていました。しかし、足の不自由な方だけではなくて、視覚障害のある方、聴覚障害のある方。それに糖尿病、腎臓病などいろんな病気の方もいます。それぞれの医療機関に行くにしても医薬品にしても、まったく違いますので、そういうところのバックアップをしています。私たちのシリア人のスタッフが街に出て家庭訪問を行ってシリアの方の話を聞き、そこから汲み取って何ができるかを考えています。

シリア・ダマスカスの自宅で頭に砲撃を受け、その後遺症で左半身がマヒしてしまったオマルさん。現在は妻と一緒にトルコ南東部の街・シャンルウルファで暮らしています。AAR Japanから杖や歩行を補助するブーツを提供してもらい、リハビリを続けています。帰れないとわかっていても、シリアに戻り、ケガをする前の生活を取り戻したいと願っています(写真:AAR Japan[難民を助ける会])

堀:本来であれば、難民の皆さんも支援が落ち着いて、本国に戻れるようにサポートしていくことになると思うのですが、今は戻れるような状況ではないですよね。

小田:そうですね。トルコ政府も、トルコの中でどのように受け入れていくかと考えていますが、受け入れるといっても約350万人いると言われているシリア難民を全員受け入れるのは難しい。しかし、現実的にシリア国内の治安や状況が収まらないと安心して住める、帰れる国はできません。

故郷シリア・アレッポでの砲撃で右足を失ったレザーンちゃん(5歳)。同じ砲撃で当時2歳だった弟も失いました。現在は両親と妹と一緒にトルコ南東部の街・シャンルウルファで暮らしています。レザーンちゃんのように戦闘に巻き込まれ体が不自由になった人が多くいます(写真:AAR Japan[難民を助ける会])

シリア難民の方たちも先々を考えると本当に不安だと思います。しかし、トルコ国内でのシリアに対する関心も一時期に比べると低くなっています。それだけ、シリア難民とのトラブルも起きなくなってきているということもありますが。お腹がすいたらパンを分け与えてあげるというような、市民が手助けしてあげられる問題ではなくなってきているので、難民の人たちがいまだに大変な生活をしている、先々の不安を感じながら暮らしているということをもう一度再認識し、忘れないでいてほしいと思います。

日本からできることとは?

堀:日本からはいったい何ができるでしょうか? 国ができること、市民ができることを教えてください。

アドリー:市民としては、やはり知るということから始めてほしいです。自分が遠くて安全な場所にいても他の国のことを忘れるべきではないと思います。国際ニュースを見るともう少し理解することができると思うので、自分で調べて自分で見て知ったうえで、そこで一人ひとりがどんなことができるかを自分で判断して決めてほしいです。国としては、シリア人留学生の受け入れを、もう少し人数を増やし、その条件も広げてほしいです。優秀な人でもその条件に当てはまらないケースもたくさんあるので、今だからこそもう少し条件を易しくしたほうが来てくれる学生も増えると思います。

堀:実際に、条件に当てはまらないというのはどういった理由があるのでしょうか?

アドリー:たとえば、大学の卒業証書が必要なのですが、空爆などで家がなくなって、卒業証書をそこに置いていたためになくなってしまったとか。また、教授の推薦状が必要なのですが、教授が空爆で亡くなったり、その学生が難民になって相互に連絡が取れなくなったり。こういう単純な理由で受け入れられなくなっています。自分が進学に力を入れたくても、日本だけではなくどこの国もそのような理由で受け入れられなくなったり、もう大学に行けなくなったりしています。あと、今は大学を卒業したうえでこれからの進学先を考えている人向けの奨学金が多いのですが、大学に行きたい人向けには少ない気がします。大学で勉強したい人のほうが多いので彼らのことももう少し見てほしい。そして、シリア国内で大学に通っている人のために何か条件の広い奨学金があれば、それがいちばん望ましいです。たとえば、私のように日本語を勉強している人や日本に興味がある人たちがたくさんいるので、その人たちのために特別な奨学金やプログラムがあればと思います。

非常に優秀な若者たちが国の誇りだった

堀:友人のシリア人ジャーナリストが、シリアは教育水準が高く、非常に優秀な若者たちが国の誇りだったと話していました。しかし、7年間紛争状況が続いて子どもたちが教育を受けられなかったり、大学生が勉強して専門的なスキルを深めたりすることもかなわない。シリアの未来が心配ですね。

アドリー:はい。とても心配しています。

堀:今度、4月10日にイベントがありますが、どのようなことを期待したいですか?

アドリー:できるだけ多くの人に来てもらいたいです。私たちが伝えられる事実を聞いて、自分で考えてほしいなと思います。

GARDEN Journalismはクーリエ・ジャポンなどと「シリア危機から8度目の4月:堀潤と語る難民支援」と題したイベントを4月10日(火)に開催します。詳しくはこちら(写真:AAR Japan[難民を助ける会])GARDEN Journalismの関連記事日本で暮らすシリア人女性が語る祖国への思い児童労働も トラウマを抱えたシリア難民たちを支えるコミュニティセンターを知ってほしいシリア難民キャンプでいま必要な支援とは?
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引用元:東洋経済オンライン

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