29歳、有名私大卒の彼女がADHDで抱える苦悩薬は近視の人がメガネをかけるような感覚|マネブ

マネブNEWS:〔2018.04.21〕20日の債券市場見通し=方向感の出にくい展開か 現在の記事数:259821件

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29歳、有名私大卒の彼女がADHDで抱える苦悩薬は近視の人がメガネをかけるような感覚


高学歴の公務員と聞くと、一見生きづらさからはかけ離れていると思う人もいるかもしれないが……(写真:筆者撮影)独特なこだわりを持っていたりコミュニケーションに問題があったりするASD(自閉症スペクトラム障害/アスペルガー症候群)、多動で不注意の多いADHD(注意欠陥・多動性障害)、知的な遅れがないのに読み書きや計算が困難なLD(学習障害)、これらを発達障害と呼ぶ。今までは単なる「ちょっと変わった人」と思われてきた発達障害だが、前頭葉からの指令がうまくいかない、脳の特性であることが少しずつ認知され始めた。子どもの頃に親が気づいて病院を受診させるケースもあるが、最近では大人になって発達障害であることに気づく人も多い。そんな生きづらさを抱えた人を追う本連載。第4回は、高偏差値の有名私大を卒業し、現在は関東の某市役所で公務員として働く三浦沙織さん(29歳・仮名)に話を聞いた。三浦さんは、社会人2年目であった2012年にADHDの診断を受けた。高学歴の公務員と聞くと、一見生きづらさからはかけ離れているようなイメージを持つ人もいるかもしれないが、さまざまな苦難があったと語る。片付けられず忘れ物も多いが、成績は優秀この連載の一覧はこちら

小さい頃から片付けが苦手で、通知表には必ず「お片付けを頑張りましょう」と書かれていたという三浦さん。

「先生から毎日のように『片付けなさい』と怒られていて忘れ物も多く、典型的なダメな子でした。机の引き出しの中もぐちゃぐちゃです。実家に住んでいるので、ゴミ屋敷になる前に親がなんとかしてくれるのですが、もし一人暮らしをしていたら確実にゴミ屋敷にしちゃうタイプ。でも、成長するにつれて、自分ができないことに対して、帳尻を合わせるスキルが身に付いていったんです。

たとえば、夏休みの宿題は8月の終わりに一気に終わらせる、大学の講義はレポートや出席重視のものではなく、ペーパーテスト一発のものを選択し、就活の際もペーパーテスト重視の役所を選びました。私、過集中を発揮する部分があり、試験には強いんです」(三浦さん)

ADHDの子どもというと、授業中に座っていられずに教室内をうろつくイメージを持つ人も多いかもしれない。でも、ADHDには授業中に歩き回るような衝動的な言動を抑えられない「ジャイアン型」と、不注意が多くのんびりしている「のび太型」に分けられ、三浦さんはのび太型だと言う。

小さい頃から親や親戚に「置物のような子」と言われていたほどおとなしい子だった。勉強が得意で成績は良いものの、宿題は忘れるし授業中の居眠りも多い。宿題を真面目にやって授業態度も良い生徒の中には「なぜ三浦さんはあんなに授業態度が悪いのに通知表に5がつくんですか?」と教師に尋ねる者もいた。

「後で調べてわかったことなのですが、ADHDの人は睡眠障害のナルコレプシーと型が似ていて、眠ることにも集中できないので、眠りが浅いらしいんです。だから、昼間に眠くなって授業中に寝てしまい、傍目に見ると真面目に授業を受けてないように見えるんです」(三浦さん)

ネットで調べ、薬が承認された年に病院を受診

自分がADHDではないかと疑い始めたのは中学生の頃だった。ちょうど、「片付けられない女」をテーマにした書籍の発売が相次いだ時期。たまたまその本を読んだ母親から「あんた、これじゃないの?」と言われ、読んでみると自分と共通する点が多くあり、その原因はADHDの場合があると書かれていたのだ。

「それからはADHDについてネットで調べまくる日々が始まりました。当時、子ども用の薬はあったのですが、大人用の薬がなかったんです。以前は、リタリンという薬が大人用として処方されていたのですが、健常者が飲むと覚醒剤のような症状が出ることから、転売して悪用する事件が起こり、処方できなくなってしまいました。

薬がないのなら病院に行っても仕方ないと思いつつ、2ちゃんねるなどで評判の良い病院と薬の最新情報を収集。2012年、ようやく大人用の新たな薬が出たことを知り、精神科を受診しました。作業する能力と語彙の能力でIQ(知能指数)の乖離が15以上あると発達障害と言われているのですが、検査の結果、私の場合はその乖離が20ありました。

間違い探しや作業の順序立てを行う動作がとても遅く、動作だけのIQは80しかありませんでした。片付けられない原因の一つが、間違い探しができないよう、散らかっていることが目に入らないからだとわかりました」(三浦さん)

診断を受けた2012年は、社会人2年目だった。社会人1年目は仕事がつらく、体とメンタルを壊してしまい、一時は仕事を休んでいた三浦さん。とにかく仕事ができない。仕事を覚えるのに人一倍時間がかかった。マルチタスクも得意でない。お客さんから受け取るべき書類を忘れて謝罪をし、後日郵送で送ってもらうようなミスもあった。仕事の段取りを組むことが苦手で仕事が終わらない。結果、残業をすることになる。それでも納期を守れず、上司に怒られたこともあった。

「大学までは、抜けているところがあるけど成績は優秀な『不思議ちゃん』で通っていたのが、社会人になるとただの『困ったちゃん』になってしまったんです。勉強は答えが決まっていたり、調べたらわかることだったりするから楽だったけど、仕事はそうではない。個人情報を扱う仕事なので、それらを片付けられないのは困ります。

だから、個人情報関連の書類は鍵のかかる引き出しに保管するよう徹底していましたが、その他の事務仕事がまったくできない。ただ、先輩たちが本当に良い方ばかりで、こんな私にも声を荒らげずに守ってくれるような方々だったのが救いでした」(三浦さん)

ようやく落ち着いて仕事に取り組めるようになったリタリンに代わって登場したコンサータ(写真:筆者撮影)

診断後は病院から処方されたストラテラという薬を飲んだが、効果を実感できず、コンサータに変更。現在は落ち着いて仕事に取り組めるようになった。コンサータはリタリンに代わって登場した薬で、安易に処方できないよう医師の入念な診断を受けてから、指定の調剤薬局でないと出せない。

【2018年1月13日13時追記】記事初出時、「コンサータはリタリンの後発医薬品」とありましたが、誤りでしたので上記のように修正しました。

「薬は1日1回、朝飲みます。12時間効くもので、お昼に飲むと夜眠れなくなってしまうので、午後は飲まないようにしています。でも、10時間くらいで効果が薄れてくるので、残業をするとわかっている日は、朝飲んだ後、職場に就いて30分くらい経った9時頃、また飲みます。そうすると、多少残業したとしても効果が続くよう調整できるので。

これを飲んで初めて、片付けができるようになりました。これはここにしまうもの、これはいらないから捨てていいもの、という常人がやっている判断を25歳にしてやっとできたんです。『みんなはこれを普通のこととしてやっていたのか!』と衝撃を受けました。

一般の人でもわかるように例えるなら、近視のために初めてメガネをかけて、視界がクリアになった感覚です。あと、字がキレイになりました。おそらく、手先まで集中できるので、適切な筆圧で丁寧に字を書けるようになったのだと思います。小さい頃から字が汚くて親に怒られ、書道を習わされたのですが、それでもキレイな字が書けるようになりませんでした」(三浦さん)

「ここでも帳尻を合わせようと手書きをあきらめ、ローマ字を覚えてパソコンで速いタイピングをするという手を選びました。薬を飲めばできるようになるのは怖いとか、子どもに処方して管理をするのはどうなのかとか、副作用の心配をする人もいると思います。医師が過剰な処方をするのはもちろんよくないけど、仮に度が強すぎるメガネをかけて頭がクラクラしたとしても、それは度の強い眼鏡を勧めた医者が悪いのであってメガネは悪くない。

ADHDの薬だってそうです。薬を飲んで悪影響が出たとしたら、それは処方をした人の問題です。近視の人にメガネやコンタクト、レーシック手術といった対処法がいろいろ出てきたように、発達障害の薬も今後、その人に合うものが何種類か出てきたらいいなと思います。現在承認されている大人用のものは2種類しかないので」(三浦さん)

三浦さんはコンサータのおかげで今があると語るが、デメリットもある。薬を飲むと張り切って働きすぎてしまい、ぐったりと疲れてしまう日があるのだ。だから、仕事が休みの日は休薬日兼休息日を作るようにし、医者もそれを推奨している。

発達障害や精神疾患系の薬への偏見が強い

2017年11月22日配信の「23歳、『発達障害』の彼が抱える生きづらさ」に登場したADHDの横山さんも同じ話をしていたが、ADHDの薬は高い。一方、発達障害を含む精神疾患系の薬の経済的負担は、市区町村に申請すれば1割負担で済む自立支援医療という制度がある。役所勤めの三浦さんはこの制度を知っているはずなので、利用しないのか聞いてみた。

「職場の人にはADHDであることを言っていません。いくら守秘義務があるとはいえ、精神系の薬を処方されているということ自体、偏見が強いので申請をしていないです。役所の窓口には重度の精神障害の方もみえるので、やはりそういうイメージを強く持っている人もいます。

私は薬を飲んでいるけど、完全にケアレスミスがなくなったわけではありません。『ちょっと詰めが甘いけど一生懸命やっているよね。たまにハゲタカみたいになるけど』と上司に言われるので、少し変わったキャラの子と思われているのではないでしょうか」(三浦さん)

ハゲタカとはどういうことなのか聞いてみると、のび太型ではあるが時おりジャイアン型が出て、衝動的な言動をしてしまうことらしい。友人からは「規則を重視しすぎて組織の利益を考えられないことがあるよね」と言われるほど、間違いだと思うことははっきりと「ダメ」と言うタイプの三浦さん。

会議では、プロジェクト内で法令違反にあたる行為はないのかきつく追及したり、窓口を訪れたのにごまかして納税をしない人には泣き出すまで問い詰めたりと、ハゲタカモードを発動してしまうそうだ。トラブルにつながることもあるが、「三浦さんは間違ったことは言っていない」と上司は言ってくれる。でも、後で「もう少し丁寧な伝え方をすればよかった」と思うこともある。

近視の人がメガネをかけるような感覚と思ってほしい

また、この取材を続けていて最近興味を持ったのが、発達障害の方の恋愛や結婚についてだ。相手の気持ちを読み取るのが苦手なASDは特に恋愛に向いていないよう感じることもある。ADHDの三浦さんはどう受け止めているのだろうか。

「現在恋人はいませんが、もし、相手から家庭的な女性を求められたら壁を感じてしまいます。何しろマルチタスク能力を必要とする家事が苦手だし、片付けも薬を飲まないとできないので……。あと、発達障害は遺伝する可能性が高いです。

私が子どもを作りたくないいちばんの理由が、こんな遺伝子を残したくないという思いからなんです。私は薬が効いたけど、中には薬が効かない人もいるらしいんです。また、妊娠中に薬は飲めないと思います。産休に入れるのは2カ月前からですし、それまで薬ナシで仕事に行くというのは、近視の人が裸眼で歩くのと同じです。そうなると、絶対に妊娠したくないと思ってしまいます」(三浦さん)

今後も薬を飲み続けながら仕事に励むという三浦さん。ADHDの薬はメガネのようなものだと思ってほしいと、三浦さんは何度も念を押すように言った。薬がメガネのような感覚として受け入れられる日がより早く訪れれば、生きづらさから少し解放される人も増えることだろう。

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引用元:東洋経済オンライン

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